【実は日本が世界一】年間6トンの金山!佐渡より産出する鹿児島「菱刈鉱山」

Posted by: 坂本正敬掲載日: Oct 20th, 2021.

日本が意外な分野で世界一を誇る話題を紹介するTABIZINEの連載。
今回のテーマは、五輪でも選手の手に渡った金(ゴールド)。
「中国の東1500カイリの海中の島で黄金に富むジパング(ジャパン)」の金が世界一(トップクラス)という話を紹介します。

東京五輪金メダル

(C) fifg / Shutterstock.com

世界トップクラスの金山が鹿児島に存在している

鹿児島県桜島

日本でもいまだに金は採れると思いますか? 
もちろん○○の川底に砂金が転がっているとかの話は聞きますが、少なくとも佐渡の金山のイメージがあるように、金については日本=過去の国といった印象があるのではないでしょうか。

金の産出国として世界シェアを獲得している国は現に中国です。
次いでオーストラリアやロシアが多くアメリカも多いです。
単一の鉱山で見ても、インドネシアにあるグラスベルグ鉱山が金の産出量で世界一を誇るようです。

こうなると、日本では金に関して明るいニュースを聞けない印象をいよいよ強く持ってしまいますが、金の世界で一番、少なくとも世界トップレベルを誇る場所が日本にもあります。

鹿児島県北部の伊佐市にある菱刈鉱山です。
年間で合計6トンの金を産出する菱刈鉱山の鉱石(1トン当たり)に含まれた金の量は「世界一」との話。
言い換えれば、金の含有量が世界一高い鉱脈(鉱石)を持つ鉱山が鹿児島には存在しているのです。

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金量の多い鉱脈を持つ菱刈鉱山

鹿児島県伊佐市の水田

伊佐市の水田

ちょっと意味がわからないという人は、金の鉱脈ができる仕組みをおさらいすると、理解しやすいかもしれません。
『マグマの地球科学』(鎌田浩毅・著/中央公論新社)の説明を簡単にまとめてみます。

まずマグマによって熱せられた地下水に金が溶け出し、その地下水が岩石の割れ目に侵入して地表に上がる途中で冷やされ、岩石の割れ目をふさぐように板状に金の含まれた鉱脈ができるそうです。
その鉱脈を削り出して、手のひらの大きさに砕き、製錬(鉱石から金を分離・抽出する)して純金の状態にします。

鉱石1トンから平均して約5グラムしか普通の鉱山では金が採れないところ、菱刈鉱山では平均して約20グラム以上が採れると、採掘を手掛ける住友金属鉱山の公式ホームページにも記載されています。

鹿児島県のホームページには、

<鉱石1トン中の金量は約40グラムで,現在操業中の金鉱山では,世界一の金品位と言われています>(鹿児島県の公式ホームページより引用)

とまで書かれています。

グラム数に違いがありますが、将来的な安定経営のために、さらには鉱山技術の継承と人材育成のために、超高品位の鉱脈の存在を表層近くに確認しながらも、意図してその一部を菱刈鉱山では残しているとの報道もあります。

鹿児島県が記載する「約40グラム」という記述は、温存された超高品位の鉱脈を指しているはずで、これだけ金量の多い鉱脈を持つ現役鉱山と考えると菱刈鉱山が世界一(クラス)になるようです。

菱刈鉱山の発見は1981年(昭和56年)

金山

※写真はイメージです

とはいえ、鹿児島県や宮崎県、熊本県に暮らす人でないと、菱刈だとか伊佐市だとかいわれても場所がピンとこないでしょう。

大まかなロケーションをいえば、国立公園に指定される霧島山の北西側です。
鹿児島の地形では、桜島を抱える錦江湾があって、その湾岸に鹿児島のまちがあります。
そこから宮崎県のえびのや熊本県の人吉に向かって北上するルートに、九州自動車道やJRえびの高原線が走っています。
その自動車道や鉄路が鹿児島と宮崎の県境を越える直前に伊佐市があります。この辺りは県境が入り組んでいて、伊佐市の北側にある国見山地を越えた先は熊本県の人吉です。

歴史が好きな人は、これらの地名にピンとくるかもしれません。まさに1877年(明治10年)に西郷隆盛を担ぎ旧薩摩藩(鹿児島県)の侍たちが明治新政府に戦いを挑んだ西南戦争の舞台となったエリアです。
鹿児島軍が歩いたルートであり、政府軍と戦闘が行われた激戦地でもあります。

『ブリタニカ国際大百科事典』には菱刈鉱山の発見が1981年(昭和56年)だと書かれています。
西南戦争のおよそ100年後ですね。

実際よりも100年ちょっと前、江戸時代の終わりから明治初年くらいに菱刈鉱山が薩摩藩の手によって発見されて、良質な金が余るほど見つかっていたとしたら、鹿児島軍の西南戦争における軍資金のとぼしさ(少なくとも戦費の圧倒的な格差)も解消されていたでしょう。
装備も一新されたはずですし、戦略も大きく変わってきたに違いありません。
そんな夢想をしてしまうくらい、菱刈鉱山には地表近くに良質な金が存在しているらしいのです。

あの佐渡の金山と比べても埋蔵量は圧倒的に多く、40年近く掘り続けてきた現在から見ても、少なくともあと20年近くは安定して金を供給できるくらい鉱脈が残っていると財経新聞が報じています。

軍資金に不足を感じる鹿児島軍の行軍のほぼ道筋に、それだけの金山が眠っていたと思うと、ちょっとした歴史の皮肉と残酷さを感じてしまいました。

新型コロナウイルス感染症が終息したら鹿児島まで出かけて、西南戦争の激戦の跡を訪ねる旅もいいかもしれません。
その際に菱刈鉱山の近さを肌で感じると、また違った日本史の展開が想像できて、旅先で特別な感慨にひたれるかもしれません。

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