なぜ? 鹿児島県外からの産廃搬入禁止条例 制定から12年たっても施行されず

2022/02/17 08:30

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県外からの産業廃棄物搬入が原則禁じられているエコパークかごしま=16日、薩摩川内市川永野町

 鹿児島県が2010年に定めた県外からの産業廃棄物搬入を原則禁じた条例が12年近くたった今も施行されていない。10年以上施行されない県条例は他になく、専門家は「制定した以上速やかに施行すべきだ。不要なら廃止か改正すればよく、これだけ長く放置しているのは行政の責任放棄」と指摘している。
 条例は15年1月に開業した公共関与型の産業廃棄物管理型最終処分場「エコパークかごしま」(薩摩川内市)の整備を見据え、10年6月に県議会で可決、制定した。県外産廃の搬入を大規模災害時などに限定し、違反者には30万円以下の罰金を科す内容。
 県外産廃が無制限に増えればエコパークの処理体制に支障が出る恐れがあることや、当時不法投棄が全国で問題になり、県外からの搬入に不安が高まっているとして条例化。実効性を持たすため罰則を設けた。
 県廃棄物・リサイクル対策課は施行しない理由にエコパーク建設に賛成した地元4自治会と11年1月、県外産廃搬入を原則禁じる協定を結んだことを挙げる。この年には管理票のない廃棄物の受け入れを禁じた改正廃物処理法が施行され、不法投棄を防ぐ態勢が強化されたことも理由とした。条例廃止や改正について同課は「庁内で議論自体がない。必要に応じて検討したい」と説明する。
 エコパークへの搬入車両を監視している反対住民は、県外ナンバー車の出入りを目撃しており、県外産廃が持ち込まれていないかいぶかる。運営する県環境整備公社は出入りを認めた上で「県外ナンバー車を所有する県内事業者もいる。産廃は管理票で確認でき、県外搬入はない」と話す。
 条例制定前月の10年5月には湧水町にエコパークと同じ管理型最終処分場を計画していた宮崎県の民間業者が鹿児島県に設置許可を再申請した。県外産廃の搬入を計画していたこの業者の再申請を県は1年半以上放置。国が速やかな審査を命じた経緯があり、「参入阻止も狙って罰則付き条例を作ったのではないか」との見方もくすぶる。
 上智大法学部の北村喜宣教授(行政法・環境法)は「制定した条例を施行しないこと自体、おかしな話で全国でも珍しい。当時の知事が決めた未施行を、その後就任した知事が追認しているというほかなく、責任放棄だ」と指摘する。
 操業15年間で60万トンを見込むエコパークの今年1月までの7年間の搬入は24万トン。搬入量が安定せず、公社が県から借り入れた約59億円の返済のめどは立っていない。

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