二転三転して解決した「花崗岩の謎」…なんと「生まれの違う」兄弟いとこが多すぎた「衝撃の事実」

image
古くから硬くて丈夫な石として、石材などに利用されてきた「花崗岩」を取り上げます。前回は、鹿児島県の屋久島がひとつの花崗岩岩体でできていることや、世界の巨大花崗岩「バソリス」をご紹介しました。

花崗岩がどうしてできたのか。以前の記事でご紹介した「火成論」で説明がつくものの、ここまでの大きさのものとなると、それだけでは説明のつかない「花崗岩の謎」が、地質学者の間で問題となっていました。

引き続き『三つの石で地球がわかる』などの著書がある、藤岡 換太郎さんの解説でお送りしましょう。

【書影】三つの石で地球がわかる

*本稿は、ブルーバックス『三つの石で地球がわかる』の内容を再構成してお送りします。

マグマからだけでは、とても足りない!

花崗岩も玄武岩と同じく火成岩であり、系譜としては同じ橄欖岩を親にもつ、玄武岩の弟といった位置にある岩石であることが説明されましたが、さらに大きな謎が立ちはだかってきました。それは、これだけの「バソリス(巨大な花崗岩)」をつくるほど大量の花崗岩が、いったいどこでできたのか、というものでした。

マントルが融解してできた玄武岩質マグマが結晶分化作用を繰り返し、最終的に生成される花崗岩質マグマの量は、玄武岩質マグマの100分の1にすぎません。非常に効率が悪いのです。これではとても、地上にある大量の花崗岩をまかなうことはできません。原料がまったく足りないのです。

【写真】静岡県東伊豆の城ヶ崎海岸。玄武岩質溶岩からだけでは、花崗岩は賄なえない
柱状節理を見せる玄武岩質溶岩による静岡県東伊豆の城ヶ崎海岸。玄武岩質溶岩からだけでは、花崗岩は賄なえないようだ(柱状節理については、前回記事参照) photo by gettyimages

解決の切り札となるか?「変成論」

ここで登場したのが、花崗岩は必ずしも火成岩のみにあらず、という花崗岩の「変成論」でした。岩石はそのでき方によって火成岩や堆積岩などに分類されますが、「変成岩」も分類名の一つです。地下深くでかかる高圧や、マグマとの接触による高温によって岩石が変成作用を起こしてできたもので、私も学生時代にこの「変成論」を研究していました。

花崗岩の変成論とは、地下深くにある堆積岩などが高温高圧によって変成すると、やがて溶けだして花崗岩質マグマになるという考え方で、花崗岩ができるもう一つの道筋があることを主張するものでした。

変成論が是か非かは論争を呼び、なかなか決着をみませんでしたが、1985年、米国のタットルとボーエンの実験によって、地殻の下部に相当する高温高圧の条件下で、水が十分にあれば、堆積岩が溶けて花崗岩質マグマができることが示されたのです。

これにより変成論の正しさが認められ、花崗岩は火成岩のものもあれば変成岩のものもあることがわかりました。以後、火成岩である花崗岩をIタイプ(火成岩の英語 Igneous の頭文字)、堆積岩紀源の変成岩である花崗岩をSタイプ(堆積岩の英語 Sedimentary の頭文字)と呼んでいます。

原料の仕入れ先が二つになり、大量の花崗岩についての説明が可能になって一件落着と思いきや、そうはいきませんでした。バソリスなどの花崗岩の組成を調べたところ、ほとんどはSタイプのそれではなく、Iタイプの組成であることがわかったのです。

花崗岩問題、ついに解決か!?

マントルから上がってきた玄武岩質マグマでもなければ、変成岩でもない。いったい、どうすればこれだけ大量の花崗岩ができるのか。悩みぬいたあげく岩石学者たちがたどりついたのが、最初に大陸地殻をつくっていた岩石が大量に溶けて、花崗岩質マグマとなり、花崗岩からなる新しい大陸地殻がつくられたのではないか、という考えでした。

大陸地殻のそもそものはじまりは、「島弧」の集合体であったと考えられます。島弧とは海底での火山活動によって噴き出したマグマが海上に顔を出し、固まった陸地が弓形に並ぶ列島のことで、小さな島弧どうしが次々に衝突して合体することで、やがては大きな大陸地殻を形成していったのです。

たとえば北米大陸は、五大湖の周辺にある35億年前の古い地殻を取り巻くようにたくさんの地殻が寄せ集めになっていて、まるで「United Plates of America」(アメリカ合地殻国)だと冗談をいう人もいます。

【写真】五大湖のひとつヒューロン湖のジョージアン湾
五大湖のひとつヒューロン湖のジョージアン湾。五大湖周辺には、古い地殻を取り巻くようにたくさんの地殻が集まっている photo by gettyimages

島弧はおもに、安山岩でできています。したがって大陸地殻もそもそもは、安山岩であったと考えられました。そして実験では、安山岩質マグマを溶かして結晶分化させると、玄武岩質マグマよりはるかに効率よく花崗岩質マグマをつくれることがわかったのです。花崗岩のルーツを大陸地殻に求める考えが、有力視されるようになってきました。

ところが、またしても壁に突き当たります。最初の大陸地殻の最下部までの深さは、20〜30kmほどと考えられています。この程度の深さでは、地下の温度が十分に高くなっていないため、岩石が大規模に溶けることはないのです。学者たちはさぞ頭を抱えたのではないでしょうか。

カギは「プレートテクトニクス」にあった!

やがて、ひとつの朗報がもたらされます。この深さでも、水が十分に存在している場合には、岩石は溶けることが実験によってわかったのです。しかし、大陸地殻の下部に水などあるのでしょうか?

この問題を劇的に解決したのが、あのウェゲナーの大陸移動説をきっかけとして1960年代に確立されたばかりの、プレートテクトニクスでした。

海を移動してきた海洋プレートは、大陸プレートがあるところまでくると、その下に沈み込みます。そして、マントル深くまで落ちていくと、抱え込んでいた大量の水をそこで吐き出すのです。その水が地殻下部にもたらされたら、一挙に大規模な地殻の融解を起こすことが可能です。

また、海洋プレートと大陸プレートが、衝突してせめぎあう場合もありえます。このときは衝突によって生じる熱によって地下の温度が上がり、やはり地殻が溶けます。

【写真】西伊豆松崎の海岸から望む富士山。衝突型の著名スポットかもしれない
西伊豆松崎の海岸から望む富士山。プレートが衝突してせめぎあう場所といえば、日本アラ伊豆半島から富士山にかけてのエリアが有名だ photo by gettyimages

こうしてついに花崗岩問題は解決し、地表に大量の花崗岩が存在する理由が明らかになりました。安山岩からなる最初の大陸地殻を原料として、花崗岩からなる大陸地殻が形成されていたことがつきとめられたのです。

地球ならではの石

この過程で、花崗岩には玄武岩質マグマからできるもの、変成作用でできるもの、そして安山岩の地殻を原料とするものと、さまざまなタイプがあることがわかりました。こうなると、玄武岩の弟分もいれば、赤の他人や、いとこのようなのもいて、わけがわかりませんね。

地殻を原料とする花崗岩は、プレートの沈み込み(水の作用)でできるものを「前線型」、プレートの衝突(熱の作用)でできるものを「衝突型」ともいいます。前線型とは、プレートの沈み込むところではプレートの縁に沿って火山フロントという、いわば火山の前線ができることからきています。

西南日本の石垣島、奄美大島、屋久島、宮崎県の大崩山(おおくえやま)、尾鈴山、四国の石山、南アルプスの地蔵ヶ岳や甲斐駒ヶ岳にかけて、前線型の花崗岩体が並んでいます。これはフィリピン海プレートの沈み込みによるものと考えられます。

【写真】前線型の花崗岩体からなる甲斐駒ヶ岳
前線型の花崗岩体からなる甲斐駒ヶ岳 photo by getttyimages

衝突型では、500万年前に丹沢島が、また60万〜100万年前に伊豆島弧が、本州に衝突してそれぞれ現在の丹沢山地と伊豆半島になったときに、花崗岩体ができています。世界の衝突型の代表例は、インド亜大陸の衝突でできたヒマラヤ山脈の花崗岩体です。

花崗岩は大陸のダイナミックな運動で形成される魅力的な石です。そして、水がなければ多くはつくられないことから、地球ならではの石ともいえます。

安山岩とはどういう石か

これまでの話で、重要な役者として登場した安山岩について、少しご紹介しておきましょう。

南米のアンデス山脈に多く産出される「アンデサイト」という石があります。実はこれが安山岩です。「安山岩」という名前は、「アンデス山脈」からとったアンデサイトの和名なのです。最初は東京大学の小藤文次郎によって「富士岩」と命名されましたが、のちに地質調査所が安山岩と改名しました。安山岩は玄武岩質マグマから結晶分化してできる火成岩です。デイサイトや流紋岩よりも早く分化します。また、マントルの部分溶融によってもできます。

日本には安山岩が多く産出します。会津磐梯山をつくる石がそうですし、箱根や根
府川で採れる「小松石」や「根府川石」という石もそうです。香川県などでみられる、叩くとカンカンと音がする非常に稠ちゆ密うみつな「さぬき岐岩がん」(別名かんかん石)も安山岩です。

【写真】安山岩安山岩

安山岩の特徴として重要なことは、島弧がおもにこの石でできているということです。そのため、大陸地殻の組成は安山岩の組成とよく似ています。米国の女性岩石学者ロベルタ・ラドニクが1995年に大陸の平均化学組成を調べて、そのことがわかりました。

すでに述べたように、この安山岩による最初の地殻が溶融して花崗岩からなる大陸地殻ができたわけですが、そのプロセスにはまだわからないことがあります。

現在、これについて研究しているのが、海洋研究開発機構(JAMSTEC)田村芳彦たちが取り組んでいる「TAIRIKUプロジェクト」です。

彼らのターゲットには小笠原諸島に突如、出現した西之島新島も含まれています。この島は安山岩でできていることから、将来、これが花崗岩に変わっていくのかどうか注視することで、大陸地殻が形成される過程をつきとめようとしているのです。

参考記事:ブルーバックス・ウェブでは、もちろん田村芳彦氏の興味深い記事も公開中です。

  • 「地球の大陸は海から生まれた?」 西之島の噴火から迫る、40億年前の「大陸の起源」
  • 小笠原・西之島と“大噴火”のトンガ沖火山に共通点? 研究者が語る「火山を比べる研究」が大切なワケ

  • 三つの石で地球がわかる――岩石がひもとくこの星のなりたち

    【書影】三つの石で地球がわかる

    本書の詳しい内容はこちら

    実は複雑に見える石の世界は、たった三つの石の名前を覚えるだけで、驚くほどすっきりと頭に入ってくる。そしてこの地球の意外ななりたちまで理解できてしまうのだ。 では、その三つの石とは? 日本一やさしい石の入門書で知る地球の姿。

    コメント