私的整理による経営再建へ どうなる山形屋(後編)

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毎週火曜日の「今、鹿児島で」。
このコーナーでは先週からシリーズで苦境に陥る老舗百貨店山形屋についてお伝えしています。
いよいよ先週から経営再建計画がスタートしたわけですが、実は鹿児島に限らず、百貨店業界は全国的にも厳しい状況に置かれています。
地域にとって百貨店とはどんな存在なのか?
2024年、唯一の百貨店が閉店した島根県の実情を通して、山形屋が生き残るために必要なことを考えます。
負債総額360億円。
苦境に陥った山形屋の経営再建計画は5月28日に取引先金融機関17社の合意の元、進み始めました。
実は、百貨店の苦境は何も山形屋に限ったものではありません。
日本百貨店協会によりますと、加盟する百貨店の数は、ピークの1999年には全国に311店ありましたが、その後、地方を中心に閉店が相次ぎ、5月10日時点では167店と、ピーク時の半分ほどに。
県内でも2009年に三越鹿児島店が業績悪化を理由に閉店しています。
こちらの地図では、百貨店が一つしかない県が示されています。
鹿児島、宮崎など16県。
そして、百貨店が存在しない県もあります。
山形と徳島、島根の3県で、ここに7月、岐阜も追加される見込みです。
そのうちの1つ、島根を訪ねました。
永尾武弥記者
「JR松江駅前にあるのが一畑百貨店です。2024年1月の閉店以降、建物は残されたままになっています」
島根唯一の百貨店だった一畑百貨店。
地元の鉄道会社が1958年に開業し、ピーク時の2002年には、約108億円を売り上げましたが、2023年は43億円にとどまり、9期連続の赤字に。
業績悪化の理由に挙げられるのは、大型商業施設の出店やインターネット通販の台頭など、実は山形屋と似ています。
若者の取り込みを狙ったテナントの誘致が不調に終わり、親会社が閉店を決めました。
一畑百貨店・川内孝治社長
「単一の地方百貨店ではテナント出店いただけない。これが現状であった」
閉店から約4カ月。
町の人にとって一畑百貨店はどんな存在だったのでしょうか?
松江市民
「人に贈るものとかお歳暮、そういうものを買っていた。島根県には百貨店がないのはやっぱりさみしい。近くに代わるお店がそんなにない。やっぱり一畑百貨店は大きな存在だったんだと思います」
地元百貨店の閉店の影響は利用者だけにとどまりません。
1809年に創業した菓子店、桂月堂は一畑百貨店の開業当時からテナントとして出店し、贈答用の商品などを販売していました。
一畑百貨店の売り場を担当者は当時をこう振り返ります。
御菓子司桂月堂・安達和代さん
「『夕礼をします』と言われて集まったら『閉店のことがこのあと報道されます』と。ショックで涙が出ました。定年するまで過ごしたいと思っていたのに。それが残念で、残念で。泣いて帰りました」
桂月堂の中でも売り上げが多かったという百貨店内の店舗。
その減少分をカバーするための対応が続いているようです。
御菓子司桂月堂11代目代表・小西伸明さん
「一畑百貨店のテナントは、支店の中でもトップ3に入る売り上げもありましたし、県外に営業に出たりして、県外の百貨店などで仕事を取っていく。そういう所に今まで以上に注力してやっています」
松江駅前のビルにある学生服のメーカーです。
一畑百貨店で、松江市内の約30校の学生服を販売してきましたが、閉店の知らせを受けて、百貨店の目の前にあるこの場所で直営店を構えることにしました。
山陰菅公学生服・中田典己営業部長
「一番は学校、消費者の方に不安を与えないようにしなければならない。2023年並みのお客様にご来店頂けるのか正直不安でしたが、予想以上のお客様に足を運んで頂き、何とか認知してもらえたのかなと」
駅前の一等地から姿を消した百貨店。
跡地の利用はまだ決まっておらず、行政にとっても課題は山積みです。
松江市まちづくり部都市政策課・陶山知政課長
「もともと松江駅周辺という部分で賑わいの再生を目指しておりました。一畑百貨店が撤退するという形になり、ある意味、核になる施設がなくなる。経済界と官民連携で、きちんと役割を決め、再生に向かって取り組むべきだと思っている」
地域の大きな影響を及ぼす百貨店の閉店。
山形屋が生き残るために求められることはどういったことなのか?
百貨店と地域経済の関係に詳しい神戸国際大学の中村智彦教授は、「スピーディーな経営判断と決断にある」と話します。
神戸国際大学・中村智彦教授
「まずは遊休施設の売却とか規模の縮小、赤字関係子会社の整理などが進む。いずれは雇用の削減にも手をつけざるを得ない。一部の不動産や資産の切り売りもせざるを得ない。新しい魅力を持った百貨店にしていくために、どうするのかということになってくる」
山形屋の再建計画で柱の1つに挙げられるのがグループ会社の統廃合です。
鹿児島県内の店舗で言うと、川内山形屋、国分山形屋は鹿児島市の山形屋に合併されるものの、閉鎖はしない方針で、従業員の早期退職やリストラなども予定されていません。
そのほかに挙げられるのが、アプリなどデジタル技術を導入した、新規顧客の獲得です。
従来の形を残しつつ、時代のニーズに合わせるというこの計画案。
しかし、県内経済の事情を知る関係者からは厳しい指摘も。
「計画案としては甘い。顧客目線が足りず、売り上げを伸ばすにはどうすればいいのかという視点が乏しい」
消費者からはこんな声も聞かれました。
山形屋前の買い物客
「店内を見てまわるのは好きなんですが、座るところやちょっとした休憩場所が少ない」
「物価も高いし、気軽に来られる所ではない。駐車場とか考えると」
「もうちょっとプチプラ(低価格)のものがあれば、若い子たちや高校生世代とかも天文館に来るのかな」
鹿児島から百貨店の明かりを消さないために。
本格的に始まる経営再建がどのように進むのか、注目されます。

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