鹿児島で進む軍事・防衛強化 安全保障の専門家はどう見る?[

02/08 19:48

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鹿屋基地への無人機配備の検討、そして馬毛島で計画されている訓練移転と、鹿児島で今、アメリカ軍を含めた軍事・防衛をめぐる動きが活発化しています。なぜなのか?そして課題は?安全保障の問題に詳しい2人の専門家に聞きました。
(小原研究員)「日本の南西諸島、九州は(日米にとって)非常に重要な地域」
(山本准教授)「鹿児島県を中心に台湾有事に備える動きは一層活発になるだろう」
元海上自衛官で中国の軍事動向に詳しい東京の笹川平和財団・小原凡司上席研究員と、安全保障論などが専門の琉球大学・山本章子准教授です。
鹿児島で活発化する軍事・防衛を巡る動き。背景を読み解く鍵が、先月、日米で安全保障を協議する最高レベルの会合、「2+2」でとりまとめられた共同発表にあるといいます。それは、発表で強調された「中国の軍事的活動」への懸念です。
(小原研究員)「(中国にとって)尖閣諸島、台湾は必ず統一しないといけない問題。そのために軍事力を使用することも選択肢に含まれる。これに対し、日本・アメリカは懸念を示している」
(山本准教授)「中国がアメリカに対し軍事的に劣っていたのが、アジア・太平洋で中国の軍事力がアメリカを上回る可能性への焦りが大きい」
「中国の脅威」と「台湾での有事」への対応として、2+2の発表には「日米の施設の共同使用の増加」が盛り込まれました。いわば自衛隊と米軍の「一体化」とも言えます。
では、なぜ鹿児島なのか?その鍵となる言葉も2+2の発表にありました。鹿児島を含む九州から台湾にかけての「南西諸島」です。
(山本准教授)「鹿児島(南西諸島)は、中国から太平洋へ出る上で重要ルート。台湾有事が起きた時、中国軍を迎え撃つ軍事体制を(南西諸島で)とることが日米間で重視されている」
(小原研究員)「(馬毛島・鹿屋への配備は)南西諸島を含めた地域への自衛隊の体制強化と、日米の協力の増加にもとづく動き。中国にこうした能力がある、計画を実施していると示すことで、中国が軍事行動を起こすことに対し、非常に強い抑止力を持つ」
馬毛島と鹿屋での軍事・防衛力強化について、小原研究員は「合理的であり、中国への抑止力が高まる」と評価します。一方、山本准教授は「外交的なアプローチも重要」と強調します。
(山本准教授)「軍事的な抑止力は重要だが、馬毛島・鹿屋でなければならない理由はない。(有事に備えた)日中の対話チャンネル構築をなおざりにし、米軍との軍事的協力関係だけ深めるのは安全保障政策として欠けている」
軍事・防衛拠点として馬毛島と鹿屋が注目される中、住民からは不安の声も。
(鹿屋市民)「何も起こらないとは限らない、心配」
(種子島住民)「心配ですけどね。我々はいいが、子どもたちがかわいそう」
(種子島住民)「実際、有事が起きるか分からない。起きたとしても日本だけで守れるのか」
2人の専門家はともに、「ただちに台湾で有事となる可能性は低い」とみていますが、万が一に備えた住民の避難体制づくりの必要性を指摘します。
(小原研究員)「中国の台湾への武力侵攻の可能性は低い。日米の抑止が効いているから。軍事的な衝突が起きた場合の避難計画も日本政府は考えるべき」
(山本准教授)「(日米中で)公海上で偶発的な衝突が起きて有事に発展する危険はある。有事が起きた時、国民をどう保護するか法律上の整備が全くできていない。国民を脅威から守るというあり方から、非常に外れている」
鹿児島で進む軍事・防衛の強化。国民の命をどう守るのか、課題を残したまま進められようとしています。

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