【焼酎の原料はこんなにも多彩!】原料ごとの味わいの違いや特徴を知ってお気に入りを見つけてみては?

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焼酎の原料は、芋や麦、米など多種多様。味わいを決定づけるのはおもに主原料ですが、麹の原料や水によっても風味や香りは変わってきます。今回は、焼酎の個性を左右する原料(材料)に着目し、原料の種類や、原料ごとの味わいの傾向を紹介します。

  • 更新日:2022.03.09

焼酎の原料とは?

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焼酎は「単式蒸溜焼酎(乙類焼酎)」と「連続式蒸溜焼酎(甲類焼酎)」に大別されますが、昔ながらの単式蒸溜機で一度だけ蒸溜を行う単式蒸溜焼酎は、連続式蒸溜機で繰り返し蒸溜される連続式蒸溜焼酎に比べて、原料由来の個性が残りやすいといわれています。
酒税法で認められた原料と製法で造られた単式蒸溜焼酎を、「本格焼酎」といいます。
ここではおもに、本格焼酎の原料に触れていきます。
焼酎の原料というと、芋焼酎の芋や麦焼酎の麦、米焼酎の米などの主原料を思い浮かべますが、国税庁が定める「本格焼酎」の定義によると、麹の原料や水も原料に含まれます。以下で詳しくみていきましょう。

主原料

焼酎の主原料は、焼酎の種類によって異なります。芋焼酎の芋(サツマイモ)、麦焼酎の麦(大麦)、米焼酎の米、黒糖焼酎の黒糖、そば焼酎のそば(そばの実)などがその一例です。本格焼酎の場合、焼酎の種類からその主原料を推測できるのでわかりやすいですよね。
ほかにも、国税庁が認める主原料にはさまざまな物品があり、栗焼酎や酒粕焼酎(粕取り焼酎)、しそ焼酎、にんじん焼酎など、幅広い商品が流通しています。
ちなみに、雑味のないクリアな味わいが持ち味の連続式蒸溜焼酎は、蒸溜段階で原料由来の個性が取り除かれてしまうため、多くの場合は低価格で調達できる糖蜜が主原料として使われます。糖蜜とは、サトウキビの搾りかすのこと。砂糖を精製したあとの副産物で、「廃糖蜜」や「モラセス」とも呼ばれています。

焼酎の成分の7〜8割を占める水もまた、味わいを左右する重要な要素です。水といってもその種類はさまざまで、含まれるミネラル成分やその含有量によって焼酎の個性は変わります。
蔵元の多くは良質な水に恵まれた土地に蔵を構えますが、なかには水源まで水を調達に行ったり、水を求めて移転したりという例もあるようです。

麹(こうじ)

焼酎の主原料のデンプンをアルコールの元になる糖分に変えるのが、麹の役割です。原料となる米や麦などに、白麹や黒麹、黄麹といった種麹菌を繁殖させて麹を造る工程を「製麹(せい きく)」といいます。
米に種麹菌を繁殖させたものを米麹、麦に種麹菌を繁殖させたものを「麦麹」と呼びます。
米麹は米焼酎だけでなく、芋焼酎や麦焼酎、黒糖焼酎などにも使われます。麦麹はおもに麦焼酎の原料に用いられますが、麦麹を使用した芋焼酎なども存在します。
また近年では、水分が多く雑菌が繁殖しやすいことからこれまであまり使われてこなかった芋麹の改良が進み、芋100%の芋焼酎にも注目が集まっています。

おもな主原料と味わいの違い

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焼酎の代表的な主原料と、味わいの傾向を紹介します。

焼酎のなかでも銘柄数が多いのが芋を主原料とした芋焼酎です。芋といってもさまざまな種類がありますが、芋焼酎の場合はサツマイモ。多くは黄金千貫(コガネセンガン)に代表される焼酎醸造用のサツマイモが使われます。
おもに芋と米麹から造られる芋焼酎の特徴は、なんといっても芋由来の甘い香味とやさしい味わい。主原料の個性が強いぶん、芋の品種や種麹の種類、蒸溜方法などの製法によって引き出される風味や香りの幅が広く、芋の強烈な個性を残したものから、スッキリ軽快なもの、フルーティーな香りや甘味を引き出しつつ飲みやすさを追求したものまで、バリエーションの豊富さでは群を抜いています。
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第二次焼酎ブームで話題を集めたのが、大麦を主原料にした麦焼酎。大麦と米麹から造られる「壱岐焼酎」と、麦麹を使用した麦100%の「大分麦焼酎」が人気の双璧をなしています。
産地呼称焼酎でもある「壱岐焼酎」は、麦特有の香ばしさと米由来の甘味が特徴。一方、「いいちこ」や「大分むぎ焼酎 二階堂」に代表される「大分麦焼酎」は麦特有の香りとキレのよさが特徴で、すっきりとした飲みやすさから、焼酎初心者にもおすすめとされています。
なかには麦独特の香味を追求した銘柄もあり、「麦チョコ系」と呼ばれる個性派麦焼酎は多くの愛好家に支持されています。
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米と米麹から造られる米焼酎は、芋焼酎や麦焼酎と並んで愛飲される本格焼酎。熊本県人吉球磨地方の「球磨焼酎」が有名ですが、九州以外でも 日本酒で有名な蔵元が手掛ける銘柄にも注目が集まっています。
米焼酎の魅力は、米独特の甘味や香り、旨味、丸味にあります。米を主食とする日本人の味覚に合った焼酎といわれ、とりわけ食中酒としてその万能性を発揮。刺身や焼き魚、肉料理といった白ごはんのおかずに最適な料理はもちろん、野菜料理や豆腐料理のようにさっぱりとした料理とも絶妙なフードペアリングをたのしめます。
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泡盛と米焼酎の違いは?

米を原料とする焼酎の仲間に、沖縄の名産品「泡盛(琉球泡盛)」があります。
米焼酎が米と米麹から造られるのに対して、泡盛は黒麹菌と米(おもにタイ米)で造った米麹のみを原料に使用。他の焼酎とは違い、仕込みを1回だけおこなう全麹仕込みという独特の発酵過程でできた醪を単式蒸留機で蒸溜し、香味成分が豊かで濃厚な味わいがたのしめます。
3年以上貯蔵・熟成させた泡盛は「古酒(クース)」と呼ばれ、よりまろやかな味わいで親しまれています。
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その他の原料と味わいの違い

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焼酎の主原料は、芋や麦、米以外にもたくさんあります。ここでは、焼酎の多彩な選択肢をみていきましょう。

黒糖

焼酎の原料のなかでもとりわけ甘いイメージがある黒糖を主原料に造られるのが、鹿児島県奄美群島の特産品である黒糖焼酎です。
黒糖の原料はサトウキビであることから、サトウキビの廃糖蜜または搾り汁から造られるラム酒とたびたび比較されますが、黒糖焼酎は純黒糖と米麹を原料に使用。原料由来の甘い香りとまろやかな風味にくわえて、ラム酒にはない米由来の芳醇な味わいがたのしめます。
黒糖焼酎の人気の秘密は、コクを感じさせつつもすっきりとした甘味にありますが、甘い風味をカロリー&糖類ゼロでたのしめることも飲み手のハートをくすぐる魅力のひとつ。最近の研究では、黒糖焼酎に長寿を促進させる成分が含まれている可能性があるとされ、「健康長寿の酒」としても注目を浴びています。
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そば

日本そばの原料として知られるそばの実から造られるのが、そば焼酎。発祥地の宮崎県や日本有数のそば処である長野県が有名ですが、エリアを問わず各地で製造されています。特長は、そばのほのかな香りとクセのない飲みやすさ。そばと同様に幅広い料理と引き立て合うことから、食中酒としても人気です。
一般に、米麹で造るそば焼酎は自然な甘味とやさしい口当たりが、麦麹で造るそば焼酎は麦の香ばしさと飲みやすさが特徴といわれています。そば独特の香味やコクを満喫したい人は、そば麹を使った100%そば焼酎を選ぶとよいでしょう。
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その他の原料

芋や麦、米、黒糖、そば以外の人気の原料もみていきましょう。
【栗】
半沢直樹が愛飲したことで話題を集めたのが、栗を主原料に造る栗焼酎。栗ならではのまろやかで濃厚な甘味と香りが特徴で、芋焼酎ほどのクセはなく、麦焼酎ほど無難でもないといわれる、バランスのとれた味わいが魅力の焼酎です。株式会社無手無冠(むてむか)が手掛ける「ダバダ火振」が有名。
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【酒粕】
日本酒の醪(もろみ)を搾ったあとに残る搾りかすを酒粕といいますが、これを蒸溜したものを「酒粕焼酎」または「粕取り焼酎」と呼びます。粕取り焼酎には、酒粕にもみ殻を混ぜてせいろ式の蒸し器で蒸溜する「正調粕取り焼酎」と、酒粕に水と酵母をくわえて再発酵 させてから蒸溜する「吟醸粕取り焼酎」の2つの製法があり、前者は濃縮された米や酵母の味わいが、後者は日本酒のような吟醸香とすっきりとした味わいが魅力です。
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【じゃがいも】
さつまいもから造られる焼酎を芋焼酎といいますが、同じ芋類のじゃがいもを主原料にした焼酎は、「じゃがいも焼酎」と呼ばれています。
九州・薩摩地方を主産地とする芋焼酎に対して、じゃがいも焼酎は北海道で誕生。のちに全国各地のじゃがいも産地へと広まりました。
その特徴は、じゃがいもらしい素朴な味わい。米麹のものと麦麹を使用したもので風味や香りは異なりますが、比較的飲みやすい銘柄が多く、食事との相性にも定評があります。
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【シソ(紫蘇・しそ)】
シソを原料の一部に用いたしそ焼酎は、さわやかな風味と飲みやすさで揺るぎない人気を誇っています。甲類乙類混和焼酎「鍛高譚(たんたかたん)」は一飲の価値があります。
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【ごま】
料理やお菓子の材料に、薬味にと幅広い用途に使われるごま。焼酎の主原料に用いれば、香り高いごま焼酎が完成します。ごま焼酎を飲むなら、紅乙女酒造の「胡麻祥酎 紅乙女」が代表的です。
【にんじん】
緑黄色野菜の代表格ともいうべきにんじん(人参)を主原料に造った、にんじん焼酎なるものも存在します。特徴は意外にもフルーティーな香りとさわやかな甘味にあり。
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本格焼酎の原料は法律により規定されている

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焼酎は穀類や芋類で造った麹と原料を醗酵させ、蒸溜して造られます。とくに本格焼酎は、麹の原料として必ず穀類か芋類を使わなければならず、大麦や米などの穀類、サツマイモなどの芋類のほか、原料として使用できる素材も酒税法で決められています。
あしたば、あずき、あまちゃづる、アロエ、ウーロン茶、梅の種、えのきたけ、おたねにんじん、かぼちゃ、牛乳、ぎんなん、くず粉、くまざさ、くり、グリーンピース、こならの実、ごま、こんぶ、サフラン、サボテン、しいたけ、しそ、大根、脱脂粉乳、たまねぎ、つのまた、つるつる、とちのきの実、トマト、なつめやしの実、にんじん、ねぎ、のり、ピーマン、ひしの実、ひまわりの種、ふきのとう、べにばな、ホエイパウダー、ほていあおい、またたび、抹茶、まてばしいの実、ゆりね、よもぎ、落花生、緑茶、れんこん、わかめ
※国税庁HPより
これらの規定以外の材料を使った場合は、1回の蒸留ごとに醪を入れ替える単式蒸溜機で造られているとしても、「本格焼酎」と呼ぶことはできません。
ちなみに、黒糖焼酎の原料「黒糖」は、酒税法で認められた素材に該当しません。黒糖焼酎は過去の島の経済的問題もあり、奄美群島区でだけで造ることが許された焼酎なのです。奄美群島以外の土地で黒糖を原料に蒸溜酒を造ると、焼酎ではなくスピリッツ扱いとなります。
焼酎の原料はじつに多彩。広い視野で違いを知ると、素材の選択肢の多さや味わいのバリエーションの豊富さに驚かされますが、これもまた焼酎の醍醐味。機会があったら飲み比べて、お気に入りを探してみてください。

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