南九州の郷土料理「がね」を通販

神谷裕司2021年12月9日 9時30分

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「至福のがね」を手にする茭口弘文さん=2021年11月、宮崎県都城市栄町

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宮崎県都城市栄町の居酒屋「ろばた焼 明石」が、南九州郷土料理「がね」の通信販売に取り組んでいる。コロナ禍で帰省できない南九州出身者に届けたいと、9月下旬から始めた。

 がねは、細く切ったサツマイモに野菜を加えてかき揚げにした料理で、砂糖をころもにまぜるのが特徴。県内では都城市や小林市などで家庭料理として親しまれ、地域や家庭によって様々な作り方がある。揚がった形状が「蟹(かに)」(南九州方言=がね)に似ていることから、この名前が付いたといわれている。

 「明石」は、オーナーの茭口修身(こもぐちおさみ)さん(66)が1990年に開業した。16~17年前、都城市内でがねを初めて食べたという県外の女性客が来店。「おいしかった」と話しているのを聞き、修身さんは「うちでも出そう」と考えてメニューに加えたという。

 甘みが強い品種のサツマイモに加えてニラとニンジンを使い、小麦粉と米粉をまぜて、ころもにする。外側はサクサク、中はモチモチとした食感が楽しめる。

 通販を考えたのは、店の2代目で次男の弘文さん(34)。都城東高校の調理科を卒業後、大阪の料亭で3年ほど修業し、22歳のころから「明石」に入った。JR都城駅の近くにあり、地元客に加え、ホテルの宿泊客らの来店も多かった。

 だが、コロナ禍で状況は一変。客足は鈍り、時短営業の影響もあって売り上げは落ち込んだ。店のあり方を模索する日々が続いた。

 そんななか、ある常連客の男性から「本当は娘に会いたいが、娘には帰省を控えるように言っている」と聞き、「がねを出す居酒屋は少ない。通信販売をすれば、帰省できない人たちのためにもなるのでは」と思ったという。

 昨年12月には国の補助金も得て冷凍機を購入した。揚げたてを急速冷凍することで、通販でも食感と風味を損なわないようにした。電子レンジで温めても自然解凍でも、どちらでもおいしく食べられるという。

 通販用は「至福のがね」と名付けた。弘文さんは「全国にいる南九州の方々に、地元の味を思い出してほしい。また、ひとりでも多くの人に、南九州の素晴らしい郷土料理を知ってほしい」と話している。

 1袋3個入り。店で買えば1袋税込み398円。通販では5袋で税込み3300円(一部地域を除き冷凍送料無料)。通販サイトは「オイモール がね」で検索。問い合わせは同店(0986・25・8504)へ。(神谷裕司)

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