温泉がレジオネラ菌の巣に…感染で入院続出、肺炎での死亡も 治療遅れで致死率60~70%

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 温泉施設を利用した後、発熱や倦怠感を訴え肺炎で入院したケースが相次いだ。3月30日に鹿児島県薩摩川内市の温泉施設でレジオネラ菌に感染した70代男性の体調は回復したものの、3月18~20日に神戸市の温泉施設を利用した70代の男性2人のうち1人が亡くなっている。
 いずれのケースも浴槽などから基準値を上回るレジオネラ菌が検出されている。温泉で養生するはずが、思いがけず死に至ってしまうとは何とも恐ろしい。国内外の温泉を年間300以上巡る温泉専門家の北出恭子氏によると、レジオネラ菌が飛散した空気中の微細な水滴(エアロゾル)を口から吸入することで感染するという。
「レジオネラ菌は土、川、沼など自然界に広く生息しています。入浴に適した40度前後はレジオネラ菌が最も好む温度です。不特定多数の人が入浴する浴槽水に含まれるアカや髪の毛などが栄養素となり、ぬるぬるとした膜(バイオフィルム)が温床となり増殖します」

 レジオネラ菌への感染は温泉施設の衛生管理状態によるところが大きいという。
「温泉水をろ過して循環させる方式の場合、浴槽のお湯は塩素剤で殺菌されていますが、それだけではレジオネラ菌対策として不十分です。レジオネラ菌が定着しやすいのは配管、貯湯槽、ろ過器などです。循環ろ過式、かけ流し方式、これら2つを併用したもの、いずれの場合でも、感染を起こさないためには、定期的な水質検査の実施、徹底した清掃や消毒といった衛生管理が重要です。入浴中に感染してしまった場合、こうした作業がきちんと行われていなかったことが原因として考えられます」(北出恭子氏)
 レジオネラ菌の感染による肺炎は平均4~5日の潜伏期間を経て、発熱や倦怠感を伴い発病しやすいといわれている。腎不全や多臓器不全を起こして死亡するケースもある。受診や有効な抗生剤による治療が遅れた場合、致死率は60~70%になるという。
 利用者の対策としては、入浴の際はしっかりと掛け湯をし、事前に体を洗い、髪を束ねるなど一人一人がマナーを守ることが有効とのこと。
 美肌やリラックス効果が高い温泉だが、目に見えない菌によって命が奪われる危険性があることを知っておく必要がある。

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