【焼酎のアルコール度数の幅広さに着目】度数による味の違いや味わい方を知って、焼酎をよりたのしもう

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焼酎の度数(アルコール度数)は20度や25度が主流ですが、12度程度と低めのものから40度前後のものまで幅広く流通しています。今回は、一般的なアルコール度数や上限、焼酎の度数が高くなる理由、度数による味の違いや味わい方などについて紹介します。

  • 更新日:2021.12.25

焼酎の一般的なアルコール度数は20度と25度

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まずは焼酎のアルコール度数について見ていきましょう。

焼酎のアルコール度数は20度と25度が一般的

焼酎の度数は12度程度の低いものから、45度近いものまで種類も豊富に流通しています。なかでも一般的といわれるのが、20度と25度のもの。宮崎や大分などでは20度が、その他のエリアでは25度が多いなど、地域差はありますが、20度と25度の2バージョンで展開する銘柄もあるほど飲み手の支持を集めています。
日本の酒税法には「連続式蒸溜焼酎(甲類焼酎)は36度未満」「単式蒸溜焼酎(乙類焼酎)は45度以下」と上限が定義されていますが、20度や25度という度数はどのようにして定着したのでしょうか。理由は意外なところにありました。

焼酎の度数に20度が多い理由

焼酎の度数で20度が一般的なのは、理由があります。
昭和28年(1953年)に改正された現在の酒税法では、蒸溜酒類の1キロリットルあたりの税額は、21度未満が20万円。20度を1度超えるごとに税額は1万円が加算されます。この税率の基準内でもっとも効率よく売ろうと考えた結果、20度に落ち着いたというわけです。
20度の焼酎が生まれた背景には、密造の歴史があります。国が税収を強化するため、自家醸造を禁止したのは明治32年(1899年)のこと。確実に酒税を確保するため、酒税免許の取得条件を厳格化したり、税務署が密造を取り締まったりと対策を講じましたが、農村など自家醸造が習慣化していた地域の人々は、違法と知りつつもお酒の密造を続けました。昭和に入ると、焼酎の製造は25度以上のものに限定されます。アルコール度数が高いほど、高い税収が見込めるからです。
密造酒の製造量は戦時中こそ減少したものの、戦後は増加の一途をたどり、ついには密造集団まで出現。密造酒の生産量が正規ルートで出荷される酒の量を上回ったため、国は対策に乗り出すべく酒税法を改正。これによって、税率の低い21度未満の焼酎が造られるようになったといいます。
密造業者がとくに多かったのが宮崎県。密造酒対策に、酒造免許を持つ焼酎蔵が積極的に20度の焼酎を造った結果、この地に20度の焼酎が定着。その魅力が認められ、全国へ浸透していきました。

焼酎の度数に25度が多い理由

焼酎の度数に25度が多い理由には諸説ありますが、なかでも有力なのが、昭和15年(1940年)制定の旧酒税法に端を発しているという説です。先述した「21度未満」を基準とした税率基準が、旧酒税法では「26度未満」が基準となっていました。そのため、26度に近い25度という度数が定着したと考えられています。
これとは別に、明治時代、密造焼酎対策に改正された酒税法がもとになっているという説もあります。当時は30度以上の焼酎に累進課税が義務づけられていたため、この度数を超えないように加水を行い、ほどよい味わいに仕上げていたのだとか。そうして行き着いたのが25度程度で、当時の製法が今に受け継がれたのではないかといわれています。

焼酎のアルコール度数はどう決まる?

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焼酎は一般的に、もろみを蒸溜して貯蔵・熟成させた原酒を必要に応じてブレンドし、割り水を加えて造られますが、この割り水の工程でどれだけ水を加えるかによって度数が決まります。
蒸溜したての原酒はアルコール度数が高く、強い香りやクセがあります。荒削りであっても、原料由来の強烈な個性や凝縮された旨味を好む焼酎通は多く、あえてブレンドや加水を行わずにそのまま販売されることもありますが、通常は飲みやすくなるよう水を加えて度数や味わいを整えます。
これをさらに、好みに応じてストレートやロック、水割りやお湯割りにしてたのしむわけですが、そのまま飲むことを想定し、12度程度に度数を調整するケースもあります。

焼酎のアルコール度数はなぜ高い?

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焼酎の度数はなぜ高くなるのでしょうか。理由は、焼酎の製法にありました。

焼酎の原酒のアルコール度数は約40度!

焼酎の度数は幅が広く、ワインと同程度のものからウイスキーやブランデーに近いものまでさまざまですが、厚生労働省が「節度ある適度な飲酒」の量を算出するにあたり、換算の目安として提示した度数は35度。ほかのお酒に比べると、比較的高いことがわかります。
<厚生労働省が提示するアルコール度数の目安>
◇ビール:5%
◇ワイン:12%
◇清酒:15%
◇焼酎(35度):35%
◇ウイスキー・ブランデー:43%
焼酎よりも度数が低いビールやワイン、清酒は、原料となる果実や穀物を発酵させ、ろ過などを経て造られる醸造酒。アルコールを生み出す酵母がアルコールに弱く、アルコール生成量が増えると大半が死滅してしまうため、焼酎のように度数を上げることはできません。
一方、焼酎のような蒸溜酒は、醸造酒(発酵液)を熱し、沸点の差を利用して水より先にアルコールを気化させ、これを冷やして純度の高いアルコールを抽出する蒸溜工程を経ているため、醸造酒とは比較にならないほどの度数に仕上げることができます。
加水やブレンドを行う前の蒸溜したての原酒は、麦焼酎や米焼酎で43〜45度、芋焼酎で37〜40度といわれています。連続式蒸溜で造られる甲類焼酎にいたっては、90〜95度程度とかなりの度数に仕上がります。
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原酒のブレンドと割り水

焼酎のほかにも、ウイスキーやブランデー、ウォッカ、ジン、ラム酒、テキーラなどアルコール度数の高い蒸溜酒にはさまざまな種類があり、これらは基本的に複数の原酒をブレンドして味わいを調えし、割り水してアルコール度数を調整したのちに出荷されます。
焼酎の場合、造りたての原酒に熟成させた原酒をブレンドするのが一般的です。
また割り水には、多くの場合プレーンな蒸溜水が使われますが、焼酎では伏流水や地下水、湧水、温泉水などの良質な天然水が用いられます。この割り水こそが、焼酎の味わいや口あたりを左右する重要な要素です。蔵元によっては、こだわりの水を求めて蔵を移転したり、地下水を引いたり、数キロ先へ汲みに出かけたりといったケースもあるほど。
なお、焼酎は加水後すぐに出荷されるのではなく、しばらく貯蔵してから市場に送り出されます。貯蔵期間は2日から1か月程度とさまざまですが、この間に原酒と割り水がよくなじみ、角がとれて飲みやすくなるといわれています。

焼酎の度数の違いに応じた味わい方を知ろう!

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同じ銘柄の焼酎が違う度数で販売されている場合、アルコールによる刺激や強さ、口当たりの違いはあっても、基本的な味わいに違いはありません。それは、同じ原酒を、同じ割り材で調整しているからです。
味に違いがないなら、家庭で飲む水割りやお湯割りには、度数が高いほうがコスパがよいと考える人もいるかもしれません。しかし、25度の焼酎を水で割って20度にしたものと、もともと20度の焼酎では、同じ味わいにはならないでしょう。なぜなら、20度の焼酎は、蔵元がこだわり抜いた良質な水で割り水することで度数を調整し、一定期間寝かせて仕上げているからです。
使用する水や氷にもよりますが、一般に、同一銘柄の度数の異なる焼酎を水で割って同じ度数で飲む場合、あとから加える水の量が少ないほうがまろやかに感じられる傾向があるといわれています。そのため、25度の焼酎を氷水で割って20度の水割りにしたものと、20度のロックを飲み比べれば、後者のほうが、口当たりがまろやかに感じられるはずです。
仕込み水で割った味にはかなわないかもしれませんが、焼酎をあらかじめ水で割り、一晩寝かせる「前割り」という飲み方なら、加水量が多くてもまろやかな味わいがたのしめます。アルコール特有のツンとしたにおいも和ぐので、こちらも試してみてはいかがでしょう。
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焼酎は、製造法や原料だけでなく度数にも注目することで、そのたのしみ方がさらに深まります。銘柄によっては、20度や25度以外にもさまざまな度数の焼酎を造っているので、飲み方に合わせていろいろ試してみてくださいね。

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