「山林」を買って家を建てることはできる?手順と山林購入時に確認しておきたいこと

土地の種類は不動産登記上の「地目」で確認することができ、地目は23種類にも及びます。地目が「山林」となっている場合、一般の住宅用地と比べると扱いにくい点が多く、売買取引や住宅建築を考える際にデメリットになることがあります。

本記事では、土地の地目が山林だった場合のデメリットや、山林に家を建てたい場合の方法と手順、山林を購入する場合の確認ポイントについて解説していきます。

家の売却を考えて、この記事を読んでいる方は、不動産一括査定がおすすめです。下のフォームを入力すれば、 複数の会社の査定結果を比較 できるので、 高く・早く 売れる可能性が高まります。

1. 地目が「山林」の土地とは?

はてな
まずは地目が「山林」の土地とはどのようなものか、基本的なところを見ていきましょう。

地目とは?

地目はその土地の用途を示すもので、不動産登記簿をチェックすると現状の地目がどうなっているのか確認できます。

地目は全部で23種類あり、代表的なものでは「宅地」がイメージしやすいでしょう。文字通り住宅を建てるための用途に用いる土地ということですね。

「田」「畑」「学校用地」「公園」「牧場」などイメージしやすいものだけでなく、文字ではイメージしにくい地目もたくさんあります。

地目を全て覚える必要はありませんが、知っておきたいのは登記簿上の地目と実際の土地の利用状況(現況)は合致しない場合もあるということです。実際の土地の用途を変更した後、それを登記簿上に反映する手続きをとらないと登記上の地目と実際の利用状況に違いが出ます。

こうした例は結構多く見られるので、所有する土地の地目がどうなっているのか、一度確認してみることをおすすめします。

地目が山林の土地はどんな土地?

では地目が「山林」の土地は本来どのような土地なのでしょうか。

山林も比較的イメージしやすいと思いますが、法律に照らしてその定義を見ると「耕作の方法によらないで竹木の生育する土地」となっています。簡単に言うと人の手をかけずとも勝手に木々が育つ土地と言ったところです。

土地を耕したり、肥料をまくといった手間をかけずとも木々が育つような土地が山林というわけです。必然的に、市街地から離れて土壌の状態が良い土地が合致してくることになります。

不動産の売却を考えている方は、不動産一括査定がおすすめです。下のフォームを入力すれば、 複数の会社の査定結果を比較できるので、 高く・早く売れる可能性が高まります。

2. 山林の土地のメリット

メリット
山林はデメリットが強調されることが多いですがメリットもあります。
まずはメリット面を簡単に押さえてみましょう。

土地価格が安い

購入する側に立つと、山林は一般的な宅地と比べると非常に安価なため費用的に購入しやすいメリットがあります。価格が安い理由はいくつかありますが、全般的に需要が少ないということが大きく関係します。

宅地は一般的に購入を考える人が多く需要が多いため、取り合いになることで価格が上昇します。山林は購入を考える人が少ないので、価格上昇要因が働きません。

逆に、使い道が限定される山林は手放したいと考える人が多く、供給過多となりがちな部分も大きく影響します。需要と供給のバランスがかなり悪いことが指摘されていて、需要<供給となることで購入する側としては安く買えるわけです。

広い

個別の物件にもよりますが、一般的に山林は広大な土地となります。同じ広さの宅地を買おうとすると億単位の金額となるような土地も、山林ならば数十万円~数百万円で収まることもあります。

自身でキャンプや自然を楽しむためだけでなく、広くキャンプ愛好家などに開放してキャンプ場を営むといった利用も検討できます。

地盤が固い

水辺が近いところは地盤が弱い可能性があるので注意が必要ですが、水辺から離れていて地盤が固いところでは地震などの災害リスクを低減できます。

家を建てる場合、地盤を強化するために高額な工事が必要になる事がありますが、山林で地盤が固い場合はそのような工事が不要になります。

固定資産税が安い

山林は宅地に比べると固定資産税が安いというメリットもあります。具体的な税額は個別に確認が必要ですが、かなり広い土地でも固定資産税は相当安く抑えられます。

これは山林が宅地よりも使い勝手が悪いため、土地の評価額が小さく見積もられるためです。同じ理屈で、相続が起きた際の相続税評価額もかなり安くなるので、相続税の負担がさほどかからないメリットもあります。

3. 山林の土地のデメリット

デメリット
一方で山林には以下のようなデメリットもあります。

災害のリスクがある

山林の地盤は全てが強固で雨風や地震に強いわけではありません。地盤沈下や土砂崩れなどの災害リスクは、しっかり整地された市街地の宅地よりも基本的には高いという認識が必要です。

もし山林に家を建てた場合は周辺の整地をしたとしても、山からの土砂崩れが発生するリスクなどはなお残ります。特に近くに川が流れているエリアの場合、地盤が軟弱な可能性が高いので注意が必要です。

川のあるエリアは眺望がよいためキャンプ愛好家に人気がありますが、家を建てる想定の場合は注意しましょう。

木の伐採や整地が必要になる

キャンプ場に利用するなどで山林をそのままの形で活用する場合は整地や木々の伐採が不要なこともありますが、家を建てたいなど利用用途によっては整地や邪魔な木々の伐採が必要です。

手間や時間が多くかかり、業者を入れればかなりの費用がかかります。

市街地へのアクセスが悪い

田舎暮らしや山暮らしには人口の多いエリアでは味わえない楽しみがありますが、結局のところ人間は衣食住のサービス、あるいは医療といった各種社会資源を利用しないと生きていけません。

山林は市街地から離れているので、食料の買い出しや通院といった際に市街地に行くまでの道のりが遠くなります。もし自家用車が壊れてしまった場合、タクシーはかなり高額になるでしょうし、バスなどの公共交通機関が十分に確保されるか分かりません。

公共交通機関は現状で通っていたとしても、今後運用が縮小されて廃便となる可能性があります。

実際、郊外や山里付近では路線が廃止になるニュースがよく聞かれます。市街地でも採算が取れない地域が出て廃便となることもあるので、山林では交通の便が基本的に悪いと考えてください。

売却しにくい

一旦山林を所有してしまうと、いざ売ろうとしても買い手が付かないリスクが宅地よりもかなり高いと考えましょう。山林は購入を考える人が少なく、逆に売りたいと考える人が多いので供給過多の状況が続いています。

キャンプブーム、アウトドアブームで多少の需要増も見られるものの、全体としては買い手が付きにくい状況は変わっていません。買い手が付かず売れ残れば、要らない山林を生涯所有し続け、税金や管理費を負担し続けなければなならず、何かあった時の所有者責任も問われます。

こうしたリスクを考えて、山林に興味があっても購入をためらうという悪循環も見られます。

不動産の売却を考えている方は、不動産一括査定がおすすめです。下のフォームを入力すれば、 複数の会社の査定結果を比較できるので、 高く・早く売れる可能性が高まります。

4. 地目が山林の土地に家を建てる方法・流れ

ここからは、地目が山林の土地に家を建てる方法や流れを見ていきます。

規制の有無を確認する

最初に対象土地の山林に家を建てるにあたり、支障となる規制がないかどうか調べます。

まず、山林が国土保全のための「保安林」に指定されている場合は、家を建てることができません。保安林に指定されているかどうかは、その地域を管轄する林業事務所などで調べることができます。

また、市街地から離れた市街化調整区域にある土地は勝手に家を建てることができず、自治体の許可を取る必要があります。すでに建っている家屋のリノベーションなども許可が必要なことがあるので、市区町村の担当部局に相談してください。

担当部局は自治体によって様々ですので、代表電話にかけて担当部署を聞きましょう。

対象の土地が農地法の適用を受ける場合はかなり注意が必要で、この場合も勝手に家を建てられません。農地法の適用を受ける場合でも、手続きを取ることで家を建てられるケースもありますが、状況によっては難しいこともあります。

対象の土地が農地法の制限を受けるかどうか、地元自治体に設置されている農業委員会に確認してください。

造成工事や地盤の改良工事を検討する

家を建てるための法律上の制限をクリアできるようであれば、対象エリアの地盤を施工会社等にチェックしてもらい、必要に応じて地盤の改良工事や造成工事を施します。

かかる費用は土地の状況によってかなり開きがでるので、施工会社との間で十分な相談と詰めが必要です。

地目変更登記を行う

土地の造成が済み現状として地目が宅地になったら、その時点から1ヶ月以内に法務局で地目変更の登記を行います。勘違いされやすいですが、地目の変更登記は事前に行うことができません。

現状で山林の状態のまま宅地に地目変更登記をするのではなく、現況が宅地に変わったら、その変更を登記に反映させるために手続きを取ることになります。地目の変更登記は必要が生じてから1ヶ月以内に手続きをしないと10万円以下の過料に処せられることになっています。

造成工事が終わったら1ヶ月以内に登記手続きを取りましょう。

地目変更登記では登録免許税はかかりませんが、土地の調査のための不動産登記簿取得に数百円かかります。
手続きを専門家に依頼する場合には専門家報酬として別途数万円程度かかります。

また地目変更登記では以下のような書類が必要になります。

  • 登記申請書
  • 対象土地の場所が分かる案内図
  • 現在の土地の状況が映った写真
  • 土地の位置を確認するための公図
  • 土地家屋調査士などの専門家に依頼する場合は必要書類の用意も任せられますが、自分で行う場合は法務局に相談の上でケースごとに必要な書類を確認してください。

    地目変更登記と並行して家を建てる

    地目変更登記の手続きが可能になったら、登記手続きと並行して家の建築に着手できます。

    ここら辺は施工会社がタイミングを見計らうので施主は特に気にする必要はありませんが、流れとしてはこのようなタイミングになることを知っておきましょう。

    5. 地目が山林の土地を購入するときのポイント

    ポイント
    では地目が山林となっている土地を購入する場合、どのような点に注意すべきか見ていきます。

    時間に余裕を持つ

    山林の購入を考える場合はできるだけ時間に余裕を持って進めるようにすることが大切です。

    理由は下で見るように地質や地盤の調査が必要なことや、一度購入してしまうと手放せなくなるリスクがあることから、購入そのものに慎重な検討が求められるからです。出口戦略も考える必要があり、将来手放したくなった時に買い手が付きそうかどうかという検討も行いましょう。

    地質、地盤を確認する

    山林購入を考える場合は地質や地盤の確認が必要です。購入後の用途に耐え得る状況なのか確認しましょう。

    特に家を建てることを予定している場合、チェックせずに購入してしまうと後で地質調査や地盤の改良工事に莫大な費用がかかってしまう可能性があります。自身が考える用途を想定し、それに見合う土地を探しましょう。

    地質や地盤の確認は売り主本人や仲介に入る不動産会社に聞き取りをしたり、資料をチェックすしたりすることである程度の情報を得られます。必要に応じて専門の調査会社を入れて確認すると安心ですが、その費用についてはどちらが負担するか、折半するかなどの交渉することになるでしょう。

    売り主の売却の意思が強い場合、調査費用を持ってくれる可能性もあります。

    インフラが整備されているか

    キャンプ場
    キャンプ場を運営することを想定している場合、その構想にもよりますがトイレなどの水道設備が必要になる事もあるでしょう。家を建てる場合は水道だけでなく電気やガスなどのインフラも必要です。そうしたインフラが整備されているか確認してください。

    すでに家が建っている場合はある程度のインフラ設備が期待できます。

    法律上の制限の有無

    山林は上で見てきたように利用に制限が出ることが多いので、特に家を建てる場合は法律上の制限が出ないかどうか確認が必要です。

    他にも、例えば崖が近くにあると太陽光パネルの設置が難しくなるようなこともあるので、家の建築について全体像を踏まえた上で、その工程上で支障が出ないか吟味が必要です。

    6. 山林購入に住宅ローンは使える?

    直接の目的が「山林を買うこと」となると住宅ローンは使えません。住宅ローンは住宅を購入するためのものだからです。
    逆に言えば、家を建てる前提として山林を購入する場合には住宅ローンを利用できることがあります。

    ただし、一般的には山林に家を建てる際に住宅ローンを利用するのは難しいことが多いです。というのも、山林は不動産としての担保力が小さいため、ローンを振り出す金融機関としては融資に慎重になるからです。

    建物にも担保価値を設定することはできますが、土地と比べると担保力は低くなりますし、肝心の土地が山林だと総合的に担保力を低く見積もるしかなくなります。そのため、山林に家を建てるということで相談された場合、一律に融資を断る金融機関もあります。

    ただしすべての金融機関が必ず断るとは限りませんので、相談する価値はあります。もし利用可能だった場合は検討を進めることができますが、ローン契約に地目変更登記の義務が課されることが多いので注意が必要です。

    ローンを利用できる場合、申し込み時点では地目が山林でも構いませんが、土地を整備するなどして地目の現況が変わったら速やかに宅地に地目変更をすることが契約上で義務づけられることがあります。

    地目変更登記を忘れた場合、契約解除や違約金などの問題が発生する恐れがあるので注意しましょう。

    まとめ

    本章では地目が山林である場合のデメリットや、山林に家を建てたい場合の方法と手順、山林を購入する場合の確認ポイントなどについて見てきました。

    山林は一般的な宅地と違い様々な規制を受けることがあり、家を建てる際に制約がでる可能性があることは押さえておきましょう。家を建てることができる場合でも、土地を整備した後は登記簿上で地目を宅地に変更する地目変更登記を忘れずに行ってください。

    新たに山林の購入を考える場合は地質や地盤のチェックを行うことと、法律上の制約が出ないかどうかの調査も必ず行うようにしてください。

    コメント