1度は途絶えた鹿児島の伝統「薩摩糸びな」たった1人で守る81歳女性

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こちらは江戸時代から作られたとされ、県の伝統的工芸品にも指定されている鹿児島のひな人形・薩摩糸びなです。戦後に一度は途絶えた伝統を守っていこうと取り組む81歳の女性が鹿児島市にいます。
真っすぐに伸びる麻糸の髪の毛、そしてきらびやかな着物が特徴の薩摩糸びな。つくっているのは新山禮子さん、81歳。ただ一人の薩摩糸びな作家です。(※新山禮子さんの禮の字はネに豊)
糸びなはよくみると顔がありません。全国的にも珍しい顔のないおひなさまです。
(新山さん)「着物や顔じゃなくて、一番これを言いたかったのじゃないかな。これがメイン、この麻が」
麻は、昔から大相撲の化粧まわしやしめ縄など、神事と関連する場面でも使われてきました。
(新山さん)「この麻というのが貴重で、お人形に使うことで、子どもが元気で丈夫な子供に育ちますようにと、そこから来ている」
薩摩糸びなは、かつては初節句を迎えた女の子が健康に育つようにと親せきなどから贈られていましたが、戦時中に作り手がいなくなり一度、途絶えました。
それを50年ほど前に復活させたのが、日本人形師だった新山さんの母・小澤壽美子さんでした。壽美子さんは県から依頼を受け、かつて姉がもらっていた糸びなを思い出しながら、独学で復元させたといいます。
(新山さん)「この糸びなを復元してくれたから、これは守っていかないといけないなと」
新山さんはそんな母・壽美子さんの元で修行を積み、10年前に壽美子さんが94歳で亡くなってからは、ただ1人の作家として糸びなを作り続けています。
(新山さん)「赤を一ミリ隠していくの、こう隠して。細かいでしょ~」
糸びなはシンプルなつくりに見えますが、麻糸は重ならないようまっすぐ伸ばされ、襟もとは幾重にも和紙を重ねるなど繊細なつくりです。
布や和紙の裁断から着物のがらの絵付けまで、すべて新山さんが1人で手作業で行っています。ほぼ毎日、作業をしていますが、1日5時間ほどの作業中はずっと正座です。
(新山さん)「いつまでできるんかなというのも、でてきますよね。80代になってきたら1年1年が大事なんだなと」
母から引き継いだ糸びな作りの技を今後、どうしていくのか?神奈川に住む娘が前向きだということですが…。
(新山さん)「断定はできない。いつどうなるかわからないわけだろうから、あまり押し付けてもね。今はもう誰も作ってくれる人がいない。何人も何十人・何百人になるかもだけど、講習会をして糸びなを広めていきながら、作る人を増やしたいけど…」
新山さんは日々の作業のかたわら、糸びなづくりのワークショップや講習会を年に4回ほど開いています。
(参加者・親子)「(Q.糸びなは知っていた)知らなかった。ちょっと難しかった」「自分の薩摩糸びなができてすごくうれしいです、ひな人形のお隣に飾れたらいいなとお守りがわりに」
(参加者)「奥の深いのがとても素敵だと思うように。顔はないけど、イメージとしていろんな表情が見えてくる」
一度は途絶えたものの、母が復活させた伝統の薩摩糸びな。新山さんは自分ができる範囲で守っていきたいと、きょうも作り続けています。
Q.1人で守ることにプレッシャーは?
(新山さん)「ううん、楽しんでいるから。自分のできる範囲で仕事を続けたいと思っているところです」

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