いま世界中で「ペットボトル飲料」を飲まない医師が続出している「衝撃の理由」

目に見えない微細なプラスチックが死に至る病を引き起こしている――このほど発表された論文が、現代医学を大きく進歩させるかもしれない。ペットボトル飲料と脳卒中、その関連性を解き明かす。

死亡リスクが約4.5倍に

「もうペットボトル飲料は飲みません!」

ハーバード大学出身の内科医サウラブ・セティ氏が高らかに宣言する動画が、ネット上で話題を呼んでいる。奇天烈な主張と思うかもしれないが、最先端の研究に通じた医師たちの間では新たな「常識」になりつつあるようだ。

今年の1月から3月にかけて、アメリカで2本の衝撃的な研究論文が立て続けに発表された。

(1)〈ペットボトル飲料には大量のマイクロプラスチック(以下MP)が含まれている〉

(2)〈MPが体内にあると、脳卒中や心筋梗塞を引き起こしやすい〉

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この両者を組み合わせてペットボトル飲料と脳卒中の関連性を疑い、冒頭のセティ氏のように飲むのをやめる医師が続出している。そうでなくとも、これらの研究結果に衝撃を受けた医師は多い。済生会熊本病院の橋本洋一郎氏もその一人だ。

「タバコを吸うと脳梗塞のリスクが1.9倍、くも膜下出血は2.9倍になると言われています。それでも十分ハイリスクですが、MPやナノプラスチック(MPよりさらに微細なプラスチック。以下NP)が体内にあると、脳卒中や心筋梗塞の死亡リスクが約4.5倍にまで跳ね上がるという。ここまで危険性が高いとは、まったくの想定外でした。

しかも(2)の論文が投稿された『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』は、臨床医学の分野で三本指に入るほど権威ある雑誌で、よほどしっかりした論文でなければ掲載してもらえない。医学的に見ても、隙がない研究と言えるでしょう」

現代社会では当たり前のものとなったペットボトルが、どのようにして疾患リスクを高めるのか―医学界を騒然とさせた2本の論文を紐解きながら解説していこう。

脳卒中と心筋梗塞のリスク大

まずはMPと脳卒中の関連を示した(2)の論文について、イタリアのカンパニア大学の内科医で、著者の一人であるジュゼッペ・パオリッソ氏が説明する。

「頸動脈内の脂肪などが硬化して大きなプラーク(塊)ができると、手術で切除するのが一般的です。この切除片を調べたところ、約60%からMPやNPが発見されました。しかも術後約3年間の経過を観察したところ、MPが含まれていた患者は脳卒中や心筋梗塞のリスクが高かったのです。

一般的にプラークが剥がれて血流に乗り、細い血管を詰まらせると脳卒中や心筋梗塞が起こる。MPやNPは硬くなった動脈にくっつきやすいため、プラークがより大きく、剥がれやすくなるのだと思われます」

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5mm以下にまで小さくなったプラスチックの破片をMP、1mmの100万分の1~100分の1程度の大きさのものをNPと呼ぶ。目に見えないサイズのプラスチックの欠片が食品の中に紛れ込み、あるいは空気中に漂いながら、さまざまな経路で人間の体内へと侵入し、重篤な疾患を引き起こしているのだ。

血流に乗って肺や肝臓へ

しかしコロンビア大学が発表した(1)の論文の著者の一人で、同大准教授のベイザン・ヤン氏は、「数あるMPの侵入ルートの中でも、ペットボトル飲料がもっともリスクが高い」と断言する。

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「私たちの研究によって、ペットボトル飲料1Lあたりに平均24万個のMPとNPが含まれているとわかりました。同じ量の海水に含まれるのは約1万個と言われるので、衝撃的な数字です。

ペットボトルが熱や紫外線を浴びると、化学反応を起こしてMPやNPが中身に染み出していく。加えてキャップを開け閉めするだけでも、本体とこすれて破片が混入すると考えられます」

「週刊現代」2024年6月22日号より

このようにしてMPやNPは、脳卒中や心筋梗塞など死に至る病の原因となりうる。しかしリスクを上昇させるのは、それらの疾患だけではない。続編記事『ペットボトル飲料が脳卒中、がん、肝硬変などのリスクを高める? その「驚きのメカニズム」』では、それ以外のリスクについても紹介していく。

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