アーモンド産地化へ”固い”志 鹿児島・湧水町 定植4年目、喜びの初収穫

鹿児島県湧水町で収穫されたアーモンド(同町で)

鹿児島県湧水町で収穫されたアーモンド(同町で)

 国産需要の高さなどを背景に、アーモンドの産地化に向けた取り組みが広がっている。鹿児島県湧水町では、日本一のアーモンド産地を目指し、2022年に生産組合が立ち上がった。ビタミンEなど栄養価が高い上に、耕作放棄地の活用や農家所得の向上、新たな地域おこしなどに期待がかかる。国内に登録農薬がないことを逆手に取り、有機栽培に挑戦。栽培面積は約5ヘクタールに広がった。(三宅映未、小林千哲)
■有機栽培に挑戦
 国内ではまだ産地が少ないアーモンド。町での栽培の始まりは13年。桜に似た美しい花を観光に活用しようとした。だが栽培ノウハウがなく、苗木はうまく育たなかった。18年、新たな特産品として花に加えて実を活用できないかと、農家を軸とした本格的な栽培に着手した。
 苗木は福岡県のJAにじから購入し、町が独自に補助する仕組みを創設。22年は町内各地で22人が栽培した。
 農家は有機栽培のノウハウを学ぶため近縁種の桃を参考に月1回、町が講習会を開く。4、5月に実をつけ8月に収穫期を迎えるが、苗木を大きくするため収穫は定植4年目から。22年に初収穫を迎えた。

3月ごろになると桜に似たきれいな花を咲かせる(鹿児島県湧水町提供)

3月ごろになると桜に似たきれいな花を咲かせる(鹿児島県湧水町提供)

■特産品開発に期待
 町内産のアーモンドは、市販品より薄く平らな形をしている。明治時代に米国から持ち込まれて代々、栽培されてきたもの。ただ品種は“不明”。このため鹿児島大学と連携し栄養成分などを分析しながら、主流の「ノンパレル」を接ぎ木して品種を更新していくことも検討している。
 地元の期待は高い。町内の飲食店ではスープやトッピングにアーモンドを使ったラーメンを販売。町では22年、アーモンド推進室を置き、特産品開発や6次化を支援する。
 22年10月に霧島市で開かれた第12回全国和牛能力共進会の会場で、町産アーモンドの殻割り体験を実施。食用化を念頭に生産組合の関係者がアーモンドを使った菓子を製造・販売し注目を集めた。
 町の重田隆治主査は「農家手取り向上に少しでも役立つよう、食用以外も含めて実用化を進めたい」と語る。


埼玉・秩父市でも取り組み
 埼玉県でも産地化の動きが見られる。秩父市の農家が中心となり15年に「埼玉アーモンド研究会」を設立。会員は約50人で、うち20人ほどが計60アールで栽培する。
 アーモンドは農園を併設したキャンプ場「秩父ファームステイ」が買い取り、殻割り体験に使う。西武鉄道などと連携して集客を図り、22年産は2500粒を買い取った。事務局は「殻割り体験は子どもに人気だ。量が増え、洋菓子店を営む会員とも連携できればいい」と期待する。

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