「おおきに」は絶滅危惧語? 「なぜ鹿児島に浸透」記事に反響続々 離島に根強い伝承、そもそも「関西の若者は使わない」説

鹿児島県内で「おおきに」が使われていることを紹介した南日本新聞(9月20日付)の紙面

 鹿児島県内で「おおきに」が使われていることを紹介した南日本新聞(9月20日付)の紙面

 京都発祥の関西弁「おおきに」が鹿児島県本土で使われていると紹介した20日付の記事に対し、読者から多くの感想が寄せられた。「使うのは本土だけではない」-。離島からも声が届いた。種子島では今も身近な言葉として幅広い世代に浸透しているという。奄美で親しまれている大型スーパーの店舗名の由来になっているという説も浮上。真相を探ると…。
 「施設内では利用者の間で『おおきに』が飛び交っている」。西之表市の介護施設を運営する大木謙信さん(40)は、高齢の利用者が「おおきに」と声をかける光景を頻繁に目にする。
 島民によると、40代以上は「ありがとう」より「おおきに」と口にする人が多いという。中には「同世代の友人に使うこともある」と語る30代もいた。60代以上が中心だった本土と比べ、若年層にも浸透していた。
 西之表市役所で市史編さんなどを担当する荒河翼さん(33)は「中世以降、島主の種子島氏や僧侶らが京都に上り交流する中で広まったのかもしれない」と推測する。
 記事を掲載したウェブニュースには「大型スーパー『ビッグツー』(龍郷町)の名前は、『おおきに』(大きい2)が由来」という書き込みも。同店の松浦能久店長(55)に尋ねると、「奄美で『おおきに』を使う人は少ないが、観光客からよく聞かれる。どこからうわさが生まれるのか」と首をかしげた。
 ビッグは英語で勝利を意味する「victory(ビクトリー)」にちなんでいる。客を支える2番手の存在でありたいという思いから「ツー」を付けたという。
 さらに南、徳之島ではどうか。徳之島町商工会事務局長の向井久貴さん(62)は「おおきにを聞いたことはほとんどない」と語る。ただ関西で使われる「ほかす」(捨てる)を口にする人は多いという。集団就職で兵庫や大阪に向かった人が多いことが影響しているらしい。時を経ても言葉が人を通し伝播(でんぱ)することがうかがえる。
 一方、「関西でも若い世代は使わなくなった」と“本家の衰退”を伝える声が聞かれた。
 大阪市出身で元小学校教員の非常勤講師山田周さん(50)=長島町蔵之元=は「大阪でも50代以下は親しい間柄で使うくらい。商売をする人の言葉にもなりつつある」と説明。「時代の波にのまれながらも『おおきに』が鹿児島の各地に残っているのはうれしい」と話した。

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