農業産出額全国2位でも手取りは最下位…鹿児島の農家はなぜもうからない? 「稼ぐ力」アップへ県は重点予算

契約栽培に力を入れるカマタ農園のキャベツ畑=指宿市

 契約栽培に力を入れるカマタ農園のキャベツ畑=指宿市

 鹿児島県の農林水産業は、2022年の農業産出額が北海道に次ぐ全国2位を誇り、輸出額も過去最高を更新した。ただ、手取りに相当する生産農業所得が産出額に占める割合は全国最下位。売り上げに対する利益の少なさが長年の課題だ。就任当初から「稼ぐ力」の向上を掲げる塩田康一知事は、24年度も重点施策として“もうからない農業”からの脱却を図る。
 26日の県議会代表質問で農政施策の方向性を問われた知事は「引き続き担い手の確保・育成を図りつつ、販売量の増加、販売単価の向上、生産コストの低減に向けた取り組みを進める」と答弁した。24年度当初と23年度補正予算案を合わせ関連事業に計132億7000万円を充てる。
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 新規で盛り込んだ一つが加工・業務用園芸産地確立事業。契約栽培で安定的な収入を確保して効率的に生産できるよう、専用品種の導入や技術の習得を支援する。
 カット野菜用のキャベツなどを契約栽培するカマタ農園(指宿市)の鎌田嗣海社長(46)は「事前に決まった価格で栽培するので経営の見通しが立つ。見た目が重視され手作業で丁寧に扱う青果用と違い、機械化も進んでいる」と話す。
 青果用が中心だった15年前の就農当初は相場に左右され、経営は安定しなかった。徐々に契約栽培を増やし、従業員も雇えるようになった。今は売り上げの6、7割を占める。今春から規格外野菜を活用した加工場も稼働予定だ。「農業はもうからないと言うけどやり方次第」と力を込める。
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 県内の22年の農業産出額は5114億円と過去最高。一方で所得率は29.2%と最下位に沈んだ。産出額の6割超を占める畜産の利益率の低さが一因とされる。中でも和牛は頭数、産出額ともに全国一、22年の全国和牛能力共進会で「連覇」を果たす実績がありながら消費者の知名度が低い。
 これまでもPRに多額の予算を割いてきたが、最も市場が大きいはずの首都圏向けの出荷が少なかった。24年度は予算を倍増して首都圏向けを強化し、販売量の増加と単価向上を目指す。
 具体的にはシェフらを対象にした産地視察やホテル、レストランでのフェア開催に加え、新たに新宿駅など30を超える主要駅でプロモーションを実施する。
 鹿児島は大産地ゆえに銘柄牛が多く、神戸ビーフや宮崎牛のような統一感のあるPRに欠けていた。「和牛=鹿児島」の定着へ、銘柄に関係なく使えるポスターやのぼりを作ってアピールする。

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