香り系焼酎、火山灰プレート…ものづくり支えて100年の技術、ヒット商品のベースに 鹿児島県工業技術センター

酵母の研究を進める研究員=20日、霧島市の鹿児島県工業技術センター

 酵母の研究を進める研究員=20日、霧島市の鹿児島県工業技術センター

ストーンワークスと共同開発した緑化基盤を使った鹿児島市電の軌道敷=鹿児島市新屋敷町

 ストーンワークスと共同開発した緑化基盤を使った鹿児島市電の軌道敷=鹿児島市新屋敷町

 鹿児島県工業技術センター(鹿児島県霧島市)は今年で創立100周年を迎えた。大島紬やシラス、焼酎、木材など地域資源の有効活用を目指し、時代のニーズに合わせた研究開発を進め県内のものづくり産業を支えてきた。近年では人工知能(AI)などの先端技術を使った生産性向上に向けた研究にも力を入れている。
 同センターの前身は1923(大正12)年、鹿児島市高麗町にできた県工業試験場。県内で盛んだった大島紬の品質向上などを目指し、製造技術の試験研究を主に担った。29(昭和4)年に同市原良町、59(同34)年に同市武町を経て、87(同62)年に現在の霧島市隼人町小田へ移転。2010(平成22)年には奄美市にあった大島紬部を統合した。
 現在は企画支援、食品・化学、生産技術、地域資源の4部とシラス研究開発室の体制で、32人の研究員が所属する。地元企業と協力して商品開発などに取り組み、多数の特許を取得してきた。
 設立当初に中心となった本場大島紬製造の技術支援では、総蚊絣(そうかがすり)模様や抜染法、刷込染色法などの新しいデザインや技法を開発。緻密で色鮮やかな模様を実現して高級化に貢献した。
 シラスの工業利用では、軽石を使った軽量ブロックの製造技術を2002年に確立。共同開発したストーンワークス(大崎町)の緑化基盤は鹿児島市電の芝生の軌道敷に採用されている。11年からはガラス質や軽石、砂を分離する手法を開発。それぞれJIS認証を受けコンクリートへの利用拡大を図っている。
 身近なヒット商品の基となった技術も開発している。近年では香り系焼酎の原料となる酵母「鹿児島香り酵母1号」が国分酒造の「フラミンゴオレンジ」などに使われている。火山灰を焼き固める技術は、煙が少なく家でもアウトドアでもバーベキューを楽しめる火山灰プレート「HAI」(岐阜県・見谷陶器)につながった。
 安藤浩毅副所長は「県内では自前で高額な機械の導入や技術開発に割ける施設や予算、人員を持っている企業は少ない。センターが企業や業界のニーズをすくい上げ、技術開発を手伝えれば」と説明する。製造業の省力化や生産性向上のための技術開発、構造用集成材の強度試験や半導体部品の測定なども受託している。
 毎年開く研究成果発表会には多くの地元企業が参加し、研究成果の有効活用を模索。本年度からは県庁18階のコワーキングスペースを活用した一般向けの成果報告会も開いている。尾前宏所長は「先人の研究や地元企業との連携の積み重ねのおかげで今の成果がある。今後も新たな技術や商品の開発などに積極的に取り組んでいきたい」と話した。

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