馬毛島自衛隊基地計画は「終わった問題」 地元との協議、防衛省ペースで着々進む

自衛隊基地建設が始まった馬毛島。画面奥は種子島本島=西之表市の馬毛島(本社チャーター機から撮影)

 自衛隊基地建設が始まった馬毛島。画面奥は種子島本島=西之表市の馬毛島(本社チャーター機から撮影)

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 西之表市と防衛省はどんな協議をしてきたのか? 一覧表で振り返る

 鹿児島県西之表市馬毛島の米軍空母艦載機陸上離着陸訓練(FCLP)移転を伴う自衛隊基地整備は着工から4カ月がたち、工事の規模が浮かび上がってきた。12日にあった市と防衛省との4カ月ぶりの協議で、工事関係者が来年2月、最大6000人に上ることが判明。対応を本格化させたい地元に対し、国は腰の重さが透け、温度差を感じさせている。
 両者の協議は市民の安心安全確保を主な目的に、市の求めに防衛省が応じる形で昨年2月末に始まった。これまでも、航空機騒音など生活に関わる情報が一定程度明らかになった。
 計12回を数える協議の開催時期と内容には偏りが見られる。開催は、基地運用による影響などを予測した環境影響評価(アセスメント)の公表前が中心。協議では防衛省がアセスの概要を事前に知らせるケースが目立った。
 市が強く懸念する種子島上空の飛行回避については、2度の協議で議題に上がったものの、ルートの順守と米軍への申し入れにとどまったままだ。市側は「引き続き協議する」としたが、進展はない。むしろ市が馬毛島の学校跡地売却や市道の廃止を求められて応じるなど、協議は防衛省ペースで進む。
 着工以降、市には工事に関する市民からの問い合わせが増えているという。不安の高まりと受け取れる。一方、今月12日の協議は着工後初めてで、前回からの間隔は4カ月とこれまでで最も開いた。地元では基地整備に伴う米軍再編交付金の活用が始まり、漁協から漁業補償の同意を得た防衛省内では、「終わった問題」との雰囲気が漂っているという指摘もある。
 協議後の会見で、同省参事官は事前に生活への影響を予測したかを問われ、「われわれの工事だけによって起きているかというと、受注者との話で確証は得られていない」とした。同省の関心は、いかに滑走路を早く整備し、米軍に示したスケジュール通りにFCLPを始められるかに移っているように見える。
 同日の協議では、工事関係者の最大数に至るまでの推移予測も示された。工事による住民生活への影響をいかに抑えるかを検討する基礎材料になるため、市が再三求めていた。市役所内では「ようやく出たか」といった声も聞かれた。
 同省の見通しでは、種子島に滞在する工事関係者が4月の約810人から、年内に2.5倍の約2000人に増える。市郊外に暮らす40代の自営業女性は「基地ができるなら仕方ない」との立場。とはいえ「衝撃の数字。果たして受け入れきれるのか」と吐露する。
 スーパーでは、作業服の男性たちがカップ麺や酒などを箱買いする姿をよく見かけるという。「しけでたびたびフェリーが運休する。台風シーズンには食料があるのか。一人暮らしだから治安も心配だ」
■賛否超え対応求める声
 物流は、ごみ処理は-。防衛省が示した工事関係者数の見通しを巡り、西之表市議会からも基地整備に対する賛否を超え、市民生活の影響を最小限にとどめるよう、市や国に早急な対応を求める声が上がる。
 19日の馬毛島対策特別委員会で、市は防衛省との協議内容を報告。委員から「当初より2000人増えるとなれば、またいろいろな問題が出てくる」「市議会の意見が(防衛省との)協議に反映される仕組みになっていない」といった指摘が出た。
 前回協議から4カ月開いたことに、市は「事務レベルで何度も協議していた。途中経過を出したかったが、相手方もいて出せなかった」と釈明した。
 12日の協議後、同省の参事官は市議会への説明について「正式に文書が届いたら検討する」とした。特別委は、直接説明や工事の進捗(しんちょく)状況を視察する機会を求め、近く同省に要望書を提出する。

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