発売から1年経ってわかることもある! 期待以上だったクルマと裏切られたクルマ

2021年5月22日 / コラム


 新車がデビューすると、いろいろなメディアが取り上げ、いわゆる新車インプレッションを展開する。発売前に期待値が上がるのは当然のことだが、発売当初は高揚していることもあり気が付かなかったことが、しばらく立ってわかることもある。

 2020年から2021年にかけて、魅力的なクルマが大量に発売された当たり年だったが、発売からしばらく立って今、冷静にこれらの新車を見るとどうなのだろうか?

 そのなかから、期待以上のクルマと、期待を裏切られたクルマを取り上げてみたい。
文/渡辺陽一郎

■期待以上だった車種/トヨタ ハリアー

トヨタ ハリアーは上級の大型SUVであるが、内外装とも価格以上の上質感を備えている

●2021年1~4月の1ヵ月平均販登録台数:8681台
●発売時点の月販目標(月販計画)台数:3100台

 新型車が登場すると、個人的に「この程度は売れるだろう」という予測を立てる。メーカーも同じで、大半の新型車が「月販目標台数」を発表している。

 月販目標台数は文字通り1ヵ月に何台売るかという目標値だが、発売から生産を終えるまでの平均値になる。仮に月販目標が3000台で、6年間製造する計画であれば、国内で21万6000台を販売して採算が取れるように開発されている。

 クルマの売れ行きは発売から時間が経過すると下がるため、発売当初は月販目標を上まわる必要がある。それが予想に反して売れないと、なかなか採算が取れず、車種によっては10年くらい生産を続ける。設計の古い車種のすべてが想定外の不人気車とはいえないが、長期間にわたって売り続ける車種は少なくない。

 そこで発売から1年以内に登場した車種について、人気や売れ行きが期待以上だった車種と、期待を裏切った車種を取り上げたい。

 まずは期待以上だったハリアー。ハリアーは上級のLサイズSUVで、売れ筋価格帯は350万~500万円に達する。それなのに2021年には1ヵ月平均で8681台も登録され、コンパクトカーのノートなどと同等だ。月販目標は3100台だから、最近の売れ行きは3倍近くに達する。

 ハリアーが好調に売れる理由は3つある。1つ目は商品力が高いこと。内外装は上質で、乗り心地も快適。クーペSUVのスタイルだから後席が犠牲になっていると思われたがヘッドクリアランスも充分な広さを確保しており期待以上だった。ハイブリッドもノイズも小さく、加速は滑らかだ。

 2つ目の理由は従来型も堅調に売れていたこと。ハリアーは上級SUVの定番車種だから、新型に乗り替えるユーザーも多い。

 3つ目の理由は2020年5月からトヨタの全店が全車を扱う体制になり、現行ハリアーはその翌月に発売されたこと。

 従来はトヨペット店(全国に約900店舗)のみが扱ったが、現行ハリアーは発売時点からトヨタの全店(約4600店舗)が売ったから登録台数がさらに伸びた。

 全店が全車を扱う体制に移行した結果、トヨタの人気車は一層売れて、不人気車はますます落ち込んでいる。そのために最近は、小型/普通車販売ランキングの上位に入るトヨタ車が従来以上に増えた。

■期待以上だった車種/トヨタ ライズ

コンパクトSUVのライズは2019年11月に発売。ボディサイズは全長3995mm×全幅1695mm×全高1620mm

●2021年1~4月の1ヵ月の平均登録台数:8743台
●発売時点の月販目標(月販計画)台数:4100台

 ライズはコンパクトなSUVで、2019年11月に発売された。2020年1~6月には、小型/普通車の車名別登録台数で1位になった。

 同年8月には同じくコンパクトSUVのヤリスクロスがトヨタから発売され、ライズはユーザーを少なからず奪われたが、売れ行きは今でも堅調だ。2021年1~4月の登録台数はヤリスクロスに近い。月販目標の2倍以上を販売している。

 好調に売れる理由は3つある。1つ目は今では貴重な5ナンバーサイズのSUVであること。運転感覚はコンパクトカーに近く、ヤリスクロスと比べても扱いやすい。

 2つ目はフロントマスクなどが野性味を伴う悪路向けのSUVを連想させること。最近はハリアーやヤリスクロスのような都会的なSUVが増えて、前輪駆動車でもRAV4のように野性的な車種が注目されている。一種の原点回帰で、ライズもそこに含まれる。

 3つ目は割安な価格だ。ライズの価格(2WD)はGが189万5000円、Zは206万円に収まる。ヤリスクロスはノーマルエンジンのGが202万円、Zは221万円だから、ライズは13万~15万円安い。

■期待以上だった車種/トヨタ ヤリス

トヨタ ヤリス。高い燃費性能と充実の安全装備を持つ

●2021年1~4月の1ヵ月の平均登録台数:1万955台(ヤリスのみ)
●発売時点の月販目標(月販計画)台数:7800台

 コンパクトカーの主力車種で、ライバル車のフィットやノートに比べて登録台数が多い。好調に売れる理由は3つある。1つ目はユーザーの関心が高い燃費と安全装備を充実させたことだ。

 ハイブリッドXのWLTCモード燃費は36km/Lだから、日本で購入可能な乗用車では最も優れた数値を達成した。衝突被害軽減ブレーキも先進的で、自車が右左折する時は、直進車両や横断歩道上の歩行者にも反応する。

 2つ目は幅広いグレード構成。エンジンは直列3気筒の1Lと1.5L、1.5Lベースのハイブリッドを用意する。1LのX・Bパッケージは衝突被害軽減ブレーキなどの安全装備を省いたから、まったく推奨できないが、価格は139万5000円と安い。

 また1LのGは装備が充実して、価格は1.5LのGよりも14万3000円安い。販売店では「走行距離の短いお客様は、法人でなくても1Lエンジン車を選ぶことがある」という。さまざまなユーザーに対応できるグレード構成も好調に売れる秘訣だ。

 3つ目は、ヤリスはヴィッツの後継車だから乗り替える需要も多いこと。ヴィッツはネッツ店(全国に約1500店舗)のみの取り扱いだったが、今は前述の通り全店で買えるから、さらに登録台数が増えた。

■期待以上だった車種/トヨタ ヤリスクロス

2020年8月に登場したヤリスクロス。ボディサイズは全長4180mm×全幅1765mm×全高1590mm

●2021年1~4月の1ヵ月の平均登録台数:9945台(ヤリスクロスのみ)
●発売時点の月販目標(月販計画)台数:4100台

 ヤリスとエンジンやプラットフォームを共通化したコンパクトSUVで、売れ行きは好調だ。SUVの最多販売車種になる。

 好調に売れる理由は2つある。1つ目は商品力が高いこと。ボディはコンパクトで運転しやすいが、フロントマスクには存在感があって立派に見える。インパネなどのデザインはヤリスとほぼ同じだが、後席の足元空間はヤリスクロスが少し広い。ヤリスの後席が狭いという欠点を多少なりとも解消した。

 2つ目の理由は割安な価格だ。ほかのコンパクトSUVは、基本部分を共通化したコンパクトカーに比べて35~40万円高いが、ヤリスクロスは装備の違いを補正すると、ヤリスとの価格差を実質18万円程度に抑えた。

 背景には、ヤリスクロスの価格を高めると、サイズがひとまわり大きなC-HRに近付く問題もあった。ヒエラルキーを考えると、C-HRよりも安価に抑える必要があり、ヤリスクロスは割安感を強めた。

■期待以上だった車種/スズキ ソリオ

ズキ ソリオ。スライドドアとシートアレンジでミニバン並みの優れた使い勝手を持つ

●2021年1~4月の1ヵ月の平均登録台数:5396台
●発売時点の月販目標(月販計画)台数:4000台

 登録台数自体は特に多くないが、スズキが軽自動車中心のメーカーであることも考えると売れ行きは好調で月販目標も上まわる。

 人気の理由は、全長を3790mm、全幅は小型車の中でも特に狭い1645mmに抑えて運転しやすく、全高は1745mmに達するから車内は広いこと。スライドドアと多彩なシートアレンジで、2列シート車ながら使い勝手はミニバン並みに優れている。

 主力グレードにはマイルドハイブリッドを搭載して、WLTCモード燃費も19.6km/Lと良好だ。運転支援機能も選べる。

■期待以上だった車種/日産 ノート

日産 ノート。動力性能と走行安定性の向上が好印象だった

●2021年1~4月の1ヵ月の平均登録台数:8460台
●発売時点の月販目標(月販計画)台数:8000台

 ヤリスに比べて登録台数は少ないが、現行ノートはハイブリッドのe-POWERのみを搭載して、ノーマルエンジンは用意されない。そこを考えると売れ行きは堅調だ。

 e-POWERは従来以上に動力性能に余裕が感じられ、加速も滑らかだ。ドライバーによって好みは分かれるものの、アクセルペダルだけで速度を幅広く調節できる。プラットフォームの刷新によって走行安定性も向上した。内装の質も高まり、優れたコンパクトカーに仕上げた。

 また今の日産には好調に売れる車種が少ないため、新型車のノートに日産車ユーザーの需要が集中した事情もある。

■期待を裏切られたクルマ/ホンダ フィット

デザイン面でも従来型のシャープなイメージからやわらかで親しみやすい意匠に一新された新型フィット

●2021年1~4月の1ヵ月の平均登録台数:6065台
●発売時点の月販目標(月販計画)台数:1万台

 続いて大きな期待していたのに、期待を裏切られた部分が目立つクルマを取り上げたい。

 フィットの2020年2月の発売時点で公表された販売計画は1ヵ月当たり1万台だから、翌年1~4月の1ヵ月平均が6065台に留まるのは辛い。

 フィットは全長が4mを下まわり、全高も立体駐車場を使いやすい高さに抑えながら、燃料タンクを前席の下に搭載したから後席と荷室には十分な広さがある。視界も良く、優れた機能を備えるのに売れ行きは伸び悩む。理由は2つある。

 1つ目は、現行型になってフロントマスクやインパネのデザインが大幅に変更され、見慣れない印象になったこと。2本スポークのステアリングなどは、今のクルマでは珍しい。

 2つ目の理由は、1ヵ月平均の届け出台数が2万台近いN-BOXに需要を奪われていること。フィットのNAエンジン車の価格は、N-BOXの上級グレードと重複するから、互いに競争関係に陥った。2021年1~4月に国内で販売されたホンダ車の内、57%が軽自動車だったから、フィットも影響を受けている。

 それにフィットがヤリスに大きく水を開けられた要員の1つに燃費があるだろう。ヤリスとフィットのハイブリッド車同士を比較してみると、ヤリスHVの36.0km/Lに比べ、フィットe:HEVは29.4km/Lと6.9km/Lと大きく水を開けられているのだ。

■燃費のよい乗用車ベスト10(普通・小型自動車部門)


1位:トヨタ ヤリス/36.0km/L
2位:トヨタ プリウス/32.1km/L
3位:トヨタ ヤリスクロス/30.8km/L
4位:トヨタ カローラスポーツ/30.0km/L
5位:トヨタ アクア/29.8km/L
6位:日産 ノート/29.5km/L
7位:ホンダ フィット/29.4km/L
8位:トヨタ カローラ/29.0km/L
8位:トヨタ カローラツーリング/29.0km/L
10位:ホンダ インサイト/28.4km/L
※WLTCモード燃費

■期待を裏切られたクルマ/日産 キックス

日産 キックス。SUVルックでありながら2WDというのは痛い

●2021年1~4月の1ヵ月の平均登録台数:4065台
●発売時点の月販目標(月販計画)台数:公表していない

 登録台数は1ヵ月平均で4000台を超えたが、ヤリスクロスやライズに比べると半分以下だ。販売が伸び悩む一番の理由は、グレード構成と価格にある。

 輸入車でもあるから、選択肢を抑えるために、割安なノーマルエンジンは用意されない。e-POWERのみになり、駆動方式も2WDに限られる。

 運転支援機能のプロパイロットなどは標準装着したから、価格が最も安いXでも275万9900円になる。これでは売りにくい。

■期待を裏切られたクルマ/ホンダ N-ONE

フルモデルチェンジされた新型N-ONE。先代モデルの外板パネルを継承したため見た目はほぼ変わらないが、樹脂部分は新デザインとなる

●2021年1~4月の1ヵ月の平均届け出台数:2511台
●発売時点の月販目標(月販計画)台数:2000台

 2020年11月に発売された設計の新しい軽自動車だが、2021年の1ヵ月平均届け出台数はN-BOXの約13%に留まる。

 売れない理由は2つある。1つ目は、新型にフルモデルチェンジしたとは思えないことだ。

 開発段階では別の外観も検討したが「外観を変えるとN360をモチーフにしたN-ONEらしさが薄れる」「コストダウンも図りたい」という理由で、外装の樹脂部分以外は先代型から流用した。そのためにプラットフォームまでN-BOXと同じタイプへ一新したのに、マイナーチェンジのように見えてしまう。

 2つ目の理由は割高な価格だ。N-WGNと同等の装備を持ったグレード同士で比べると、N-ONEは16万円以上高い。RSの価格は199万9800円に達する。

■期待を裏切られたクルマ/マツダ MX-30

マツダ MX-30。EV仕様を設定するなど意欲的だが魅力が伝わりにくい

●2021年1~3月の1ヵ月の平均登録台数:803台
●発売時点の月販目標(月販計画)台数:1000台

 比較的コンパクトなSUVで基本部分はCX-30と共通だが、内外装を穏やかなデザインに仕上げた。マイルドハイブリッドと、電気自動車の仕様がある。

 従来のスポーティなマツダ車とは異なる路線を開拓すべく企画されたが、観音開きのドアを採用したこともあり、商品の特徴や魅力が分かりにくい。

 貴重なチャレンジなのに、MX-30は埋もれた。リラックス感覚で開発される背の高いコンパクトカーなど、これから登場するMX-30路線の新型車に期待したい。

■期待を裏切られたクルマ/ホンダ アコード

運転すると上質感を実感できるホンダ アコード。リアウインドウを寝かせたモッタリした外観がネックか

●2021年1~3月の1ヵ月の平均登録台数:278台
●発売時点の月販目標(月販計画)台数:300台

 海外向けのLサイズセダンで、国内市場のことは考えていない。しかも現行型は、北米の登場から2年半も経過して国内で発売された。その間、国内では安全性の劣る旧型を売っていた。

 また今のホンダの国内販売は、軽自動車比率が50%を大幅に上まわり、そこにフィットとフリードを加えると、国内で売られるホンダ車の70~80%に達する。

 今のホンダのブランドイメージは、小さな安いクルマのメーカーになったから、アコードを売るのは難しい。そこで1ヵ月の販売計画もわずか300台だ。

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