「九州の観光列車」が凄い!おすすめ列車とモデルコースを紹介

観光列車内で談笑しながら旅行や食事を楽しんでいる人たちを見かけて、「私もこのままこの電車に乗って旅に出たい」と思ったことはありませんか?
観光列車に興味を持った人にぜひおすすめしたいのが「九州」です。豊かな食と自然があり、旅行先としても人気の九州は、観光列車の宝庫でもあります。
この記事では観光列車や秘境路線が好きで旅行のたびに「観光列車ありき」で日程を組み、あちこちの観光列車に乗っている私が、九州の観光列車の魅力とモデルコースについて紹介します。

九州は観光列車の宝庫で大人も子どもも楽しめる!

 ななつ星ななつ星

「観光列車」というと「電車好きの子どもや親子連れが乗るもの」というイメージがあるかもしれません。しかし、レストラン列車やバーカウンター付きの列車、高級さを売りにした観光列車など、「大人旅」にぴったりの観光列車も数多く運行しています。

九州の観光列車一覧

九州には20近くもの観光列車が走っており、それぞれに個性があるところが九州の観光列車の魅力です。九州で運行されている観光列車は以下のとおりです。
●「ふたつ星4047」 
運行区間:武雄温泉(佐賀)-長崎
特徴:有明海コース・大村湾コースどちらも海沿いの景色を楽しめる
●「ななつ星」
運行区間:九州全域
特徴:日本初の高級クルーズトレイン
●「指宿のたまて箱」
運行区間:鹿児島中央-指宿
特徴:白と黒のツートンカラーの斬新なデザイン
●「海幸山幸」
運行区間:宮崎-南郷
特徴:海岸沿いを走る木のぬくもりあふれるデザイン
●「或る列車」
運行区間:博多-由布院
特徴:「幻」といわれた豪華列車をモチーフにした高級レストラン列車
●「ゆふいんの森」
運行区間:博多-由布院・別府
特徴:優しいメタリックグリーンの車体が印象的
●「36ぷらす3」
運行区間:九州全域
特徴:走行距離1160キロ、九州を環状に巡る
●「A列車で行こう」
運行区間:熊本-三角
特徴:シックな黒とゴールドの車体で、車内にはバースタンドがある
●「あそぼーい!」
運行区間:熊本-阿蘇-大分-別府
特徴:子どもに配慮されたデザインで親子一緒に阿蘇の絶景を楽しめる
●「かんぱち・いちろく」
運行区間:博多-由布院・別府
特徴:「ゆふ高原線の風土を感じる列車」がコンセプト
※2024年春運行開始予定
●「SL人吉」
運行区間:鳥栖-熊本(旧:熊本~人吉)
特徴:日本最長老の蒸気機関車(SL)
※2024年3月運行終了
●「かわせみ やませみ」
運行区間:熊本-阿蘇・宮地
特徴:球磨川(くまがわ)の翡翠色をイメージした外観阿蘇の山々と渓流を楽しめる
●「おれんじ食堂」
運行区間:新八代・八代(熊本県)-川内(鹿児島県)
特徴:九州西海岸をのんびり走る沿線の食材を使ったレストラン列車
●「潮風号」
運行区間:関門海峡めかり駅-九州鉄道記念館駅
特徴:わずか4駅の門司港レトロ地区と和布刈地区を結ぶトロッコ列車
●「ゆうすげ号」
運行区間:高森-立野
特徴:阿蘇の山々を眺めながら走る開放感たっぷりのトロッコ列車
●「しまてつカフェトレイン」
運行区間:諫早-島原
特徴:ご当地グルメやスイーツを楽しむ海沿いを走るカフェトレイン
●「ことこと列車」
運行区間:直方-行橋
特徴:フレンチが楽しめるレストラン列車
●THE RAIL KITCHEN CHIKUGO
運行区間:福岡-大牟田または福岡-花畑-福岡
特徴:「オシャレなカジュアルレストラン」のようなレストラン列車

九州に観光列車が多い理由

九州にこれだけの観光列車が運行しているは、国鉄時代の大赤字を経て民営化した、九州旅客鉄道株式会社(JR九州)の経営方針が関係しています。
JR九州では2014年に「鉄道は一つの観光素材」とした経営方針を打ち出し、以下の3つをテーマに鉄道を活用した観光開発に着手しました。
・魅力ある列車の開発
・新たなサービスへの挑戦
・地域との一体化
JR九州の列車を観光資源にする動きは私鉄にも広がり、現在まで運行本数を増やしています。「人気の観光地が多い」「地元食材に恵まれている」という九州の特徴を生かしたJR九州の方針は、大成功といえるでしょう。
実際に観光列車に乗っていると、駅ごとに地元の食材や商品を販売するだけでなく、笑顔で出迎えやお見送りしてくれる地域住民の方の協力の大きさが伝わります。まさに、「地域との一体化」によって観光列車が発展してきたのを実感しました。

九州の観光列車のおすすめポイント3つ

或る列車・キハ47或る列車・キハ47

次に、九州の観光列車ならではの魅力について列車と併せて紹介します。

九州の観光列車のおすすめポイント(1)見どころが多い

一つ一つの県が広く、観光地の多い九州では、車窓から見える風景を楽しむだけでなく、観光地間の移動手段としても観光列車を活用できます。美しい自然が多く、「観光地に着くまでの単なる移動時間」を「旅行イベント」や「特別な体験」に変えられるのが、九州の観光列車の魅力です。
普段、目にすることのないSLに乗車できる「SL人吉」や海に落ちる夕日を眺めながら食事ができる「おれんじ食堂」などは、観光地より思い出に残るかもしれません。

九州の観光列車のおすすめポイント(2)食も楽しめる

海と山に囲まれた九州は食材に事欠かず、停車駅での直売や車内販売などで、沿線のおいしい食品を列車内で味わえるのも魅力です。
食材に恵まれた九州では、列車内でスイーツや食事を楽しめる「レストラントレイン」も多く運行しています。「しまてつカフェトレイン」のようなスイーツから、「或る列車」のような高級コース料理が味わえるもの、「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」のような列車内に窯があるものまでバラエティ豊かです。

九州の観光列車のおすすめポイント(3)車両がバラエティ豊か

JR九州の観光列車は「D&S(デザイン&ストーリー)列車」とも呼ばれています。デザインにも力を入れている九州の観光列車には、SLから高級クルーズトレインまでバラエティ豊かな車両が多く、子ども連れの親子から年配の人まで、見ても乗っても楽しめます。
JR九州の観光列車の特徴は、木材をふんだんに使用した「かわせみ やませみ」や「海幸山幸」、伝説をモチーフとした「指宿のたまて箱」など、地元の特産や特徴を生かしたデザインです。
その一方で、鉄道ファンには有名なデザイナー水戸岡鋭治氏の手がけた「ななつ星」や「或る列車」のように、見るだけで憧れるような高級感のある列車も運行しています。
運行路線がたくさんあり、多彩な車両を一度に楽しめるのも九州の観光列車の魅力です。

九州観光列車の旅をした私の体験談

ここでは、実際に私が子どもと行った「九州観光列車の旅」で乗った列車の体験談を、周辺の観光スポットを交えて紹介します。

九州観光列車レポート(1)SL人吉

(※コースは乗車当時の2017年のものです)

SL人吉の外観SL人吉の外観

まずは熊本空港から熊本駅まで移動し、熊本~人吉で「SL人吉(ひとよし)」に乗車しました。普段目にすることのないSLに、電車好きの子どもだけでなく乗車予定の全員が興奮し、写真を撮る人でにぎわいました。

SL人吉の内装SL人吉の内装

車内は木目調の壁に白い天井という落ち着いたデザインで、シックな展望席からはもくもくと流れていく蒸気と線路、穏やかな川辺の自然を楽しめます。
球磨川沿いを走っていると、大きな汽笛とともに蒸気が勢いよく噴き上がり、窓の外が一面蒸気に覆われる場面も。大きな音と貴重な体験に、大人も子どもも盛り上がる、「乗ってワクワクする」観光列車です。
残念ながらSL人吉は老朽化により2024年3月で運行を終了予定となってしまいました。

九州観光列車レポート(2)A列車で行こう

「A列車で行こう」外観「A列車で行こう」外観

「A列車で行こう」も、熊本出発の観光列車です。ジャズの名曲から名を取った特急「A列車で行こう」は「Amakusa(天草)」と「Adult(大人)」という、2つの「A」がテーマになっています。

「A列車で行こう」内装「A列車で行こう」内装

ステンドグラスがアクセントに使われ、天使のロゴが随所にあしらわれた車内は、南蛮文化が根付いた天草のイメージから、ヨーロピアン風の装飾が施されています。
「A列車で行こう」にはバースタンドが併設されており、「お酒を片手に有明海を眺めながらのんびり」といった大人旅にもぴったりなオシャレな観光列車です。終点の三角(みすみ)駅からは天草諸島へのフェリーが出ており、世界文化遺産「﨑津集落」などの観光も楽しめます。
列車名:A列車で行こう
運行区間:熊本~三角
運行日:土日祝
料金:2,540円(※指定席特急料金は乗車日により変動)

九州観光列車レポート(3)海幸山幸

「海幸山幸」外観「海幸山幸」外観

宮崎から南郷までを日南海岸沿いに走る、海を堪能できる観光列車が「海幸山幸(うみさちやまさち)」です。海幸山幸のコンセプトは「木のおもちゃ箱」。沿線の特産である飫肥杉(おびすぎ)が車内だけでなく、外観にもたっぷりと使われている珍しい列車です。
日南海岸沿いを走る海幸山幸では、車内に飾られた木のおもちゃや切り絵を見たり、延々と続く青い海を眺めていたりすると、穏やかな時間が流れていきます。

鵜戸神社の参道鵜戸神社の参道

日南の青い海と断崖に続く朱塗りの参道のコントラストが美しい、洞窟の中に本尊がある珍しい神社「鵜戸(うど)神宮」や、パワースポット「青島」などの観光が沿線周辺で楽しめます。
列車名:海幸山幸
運行区間:宮崎~南郷
料金:2,940円(※指定席特急料金は乗車日により変動)
運行本数は多いものの、九州は広く運行日や時間を考慮すると乗りたい列車を乗り尽くすのは難易度が高いです。九州は高速バスも発達しているので、列車と組み合わせるとプランの自由度が上がります。

九州の観光列車を乗り尽くす!1泊2日モデルコース

JR九州 特急「ゆふいんの森」JR九州 特急「ゆふいんの森」

ここからは、「九州の観光列車に乗ってみたい」と思った人に向けて、1泊2日で観光列車をたっぷり乗り尽くすモデルコースを2つ紹介します。

モデルコース(1)福岡・大分コース【木曜or土曜出発】

<コース概要>
1日目:天神発(10時台)ー「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」乗車アーリーランチー天神着(12時台)~天神散策・博多移動~「ゆふいんの森5号」博多発(14:38)ー由布院着(16:50)→湯布院泊
2日目:由布院発(12:27)―「いちろく」乗車―博多着(15:47)
1つ目のコースは福岡・天神を出発して大分・湯布院に宿泊、翌日に福岡・博多に戻るコースです。
天神から「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」に乗車し、天神に戻ってきた後は九州一の繁華街天神で軽くショッピングをして博多に移動、「ゆふいんの森5号」に乗車し湯布院に宿泊します。2日目のお昼まで湯布院で温泉と観光をゆっくり楽しみ、「いちろく」でのんびり博多に戻ります。
列車名:THE RAIL KITCHEN CHIKUGO
運行区間:福岡~大牟田または福岡~花畑~福岡
運行日:木~日曜、祝日
料金:大人11,800円(税込み)・子ども6,000円(税込み)
列車名:ゆふいんの森
運行区間:博多~由布院・別府
運行日:全日
料金:博多~由布院間5,690円(※指定席特急料金は乗車日により変動)
列車名:いちろく
運行区間:由布院・別府―博多
運行日:火・金・日
料金:未公表(※2024年4月運行開始予定)

モデルコース(2)鹿児島・熊本コース【土曜出発】

<コース概要>
1日目:鹿児島中央発(9:56)―「指宿のたまて箱1号」乗車―指宿着(10:47)~指宿観光~指宿発(12:57)―「指宿のたまて箱4号」乗車―鹿児島中央着(13:48)―川内発(15:35)―「おれんじ食堂2便」サンセット【夏ダイヤ】乗車―新八代着(19:40)―熊本着→熊本泊
2日目:熊本(10:21)―「A列車で行こう1号」乗車―三角着(11:11)~周辺観光~三角発(13:59発)―「A列車で行こう4号」乗車―熊本着(14:42)
2つ目のコースは鹿児島を出発して熊本に宿泊、翌日に熊本周辺を周遊するコースです。1日目の「おれんじ食堂」はサンセット便のため、天気がよければ海に落ちる美しい夕日の車窓が楽しめます。
1日目の移動が多い分、2日目はのんびり列車旅を楽しむプランです。
列車名:指宿のたまて箱
運行区間:鹿児島中央―指宿
運行日:全日
料金:2,800円(※指定席特急料金は乗車日により変動)
列車名:おれんじ食堂
運行区間:川内(せんだい)―出水(いずみ)―新八代(しんやつしろ)
運行日:不定期(基本月・木が運休日)
料金:博多―由布院間5,690円(※指定席特急料金は乗車日により変動)
列車名:A列車で行こう
運行区間:熊本―三角
運行日:土日祝
料金:2,540円(※指定席特急料金は乗車日により変動)

日常に観光列車がある暮らしがかなうおすすめエリア“3選”

博多ポートタワー博多ポートタワー

九州旅行でさまざまな観光列車に乗っていて感じたことは、観光資源の多さもさることながら、食の豊かさと景色の美しさです。数日の旅行ではとうてい満喫しきれず、帰るのがもったいないとも感じました。
実際、九州は福岡を中心に移住先としても人気のエリアです。最後に、観光列車を使って観光地に気軽に遊びに行けて、おいしい食材を日常生活で手に入れられる暮らしがかなう、九州のおすすめエリアを3つ紹介します。

おすすめエリア(1)福岡県福岡市博多区

九州で断トツに人気が高いのが「福岡市」です。中でも福岡市の中心駅である博多は「九州圏版 2022年LIFULL HOME‘S 住みたい街ランキング」でも「借りて住みたい」街1位になっています。

参照:九州圏版 2022年LIFULL HOME‘S 住みたい街ランキング

福岡市は博多や天神を中心に商業施設・オフィス・観光地・公共施設が集まる「コンパクトシティ」であり、交通網も発達しているので職住近接がしやすい人気のエリアです。首都圏と比較して利便性の高さに対して家賃が低い点も魅力です。

福岡市の中心地である博多駅は鉄道網の中心でもあり、博多駅と近くの天神駅から発着する観光列車だけでも、「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」「或る列車」「ゆふいんの森」など複数あります。博多周辺は「観光列車ライフ」にもぴったりのエリアです。

おすすめエリア(2)熊本県熊本市

福岡市が北九州の中心なら、九州中央部の主要都市が熊本市です。熊本市の中心駅である熊本駅には新幹線、JR鹿児島本線・豊肥本線・三角線が乗り入れ、駅前には熊本市電も通っています。
電車だけでなく高速バス網も発達しており、九州の中央部にある熊本駅からは福岡方面にも鹿児島方面にもアクセスしやすい点が魅力です。

交通利便性の高さにもかかわらず、自然が多い点も熊本市の住みやすいところでしょう。熊本駅前近くには白川が流れ、海も近く阿蘇にもアクセスしやすい熊本市は、休日が楽しくなりそうなエリアです。観光列車も多く、「A列車で行こう」や「あそぼーい!」「かわせみやませみ」が運行しています。

おすすめエリア(3)大分県由布市

観光地「湯布院」のイメージが強い由布市ですが、由布市にあるのは湯布院だけではありません。
由布市は温泉が集まる「湯布院町」、起伏があり自然豊かな「庄内町」、大分県の都市部に隣接し住宅や商業施設が集まる「挾間町(はさままち)」の3つからなります。それぞれ特色があり、県内へのアクセスが便利な由布市は、バランスがよく住みやすい街です。
東洋経済の「住みよさランキング2022 九州・沖縄ブロック」でも6位となっており、人口当たりの病院数や老人施設定員数、犯罪・事故件数などの面から「安心度」が高く評価されています。

参照:東洋経済「住みよさランキング2022 九州沖縄&中国・四国編」

沿線の観光列車も多く、「ゆふいんの森」「かんぱち・いちろく」などが運行しており、自然豊かなエリアで観光列車を眺めながらゆったりと暮らせます。

旅景色を日常の風景にする九州観光列車沿線に住もう

ことこと列車ことこと列車

九州の魅力的な観光列車は紹介しきれないほど多く、一度の旅行ではとうてい乗り切れません。また、観光列車が通るエリアは美しい風景や観光が楽しめるエリアでもあります。
食・自然・観光・交通網のすべてが充実している九州を、「訪れる街」ではなく「住む街」にすれば、観光列車とともにいつでも九州の魅力を味わえます。
九州で「いつでも観光列車がある暮らし」を手に入れてみてはどうでしょうか。

ひらかわまつり電車旅好きの事務員×宅建士Webライター

日中は建設系企業での事務員として働き、夜間休日を使って不動産・ビジネス・副業・資格・IT・金融などを中心に、300記事執筆している2年目兼業Webライター。宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士・2級ファイナンシャル・プランニング技能士など各種資格保有。旅行と乗り物が好きで、以前数年かけて47都道府県をすべて制覇した旅の途中で観光列車や夜行列車に一時ハマる。独身の身軽さを活かして老後にあちこちの路線を制覇しながら旅や移住をして、いつか「ななつ星」のようなクルーズトレインに乗るのを夢見ながら日々を過ごす。不動産会社の事務員経験もあるため、インターネットで間取り図や物件を見るのが好き。 

コメント