「日本一長い国道」が陸ではなく海の上を通っているという不思議

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国道58号は、鹿児島市から那覇市まで続く Photo:PIXTA

道をたどれば、歴史と文化が見えてくる。地理・地図研究家の浅井建爾氏の文庫新刊『日本の道・道路がわかる雑学』からの一部抜粋で、知っているようで知らない、日本各地の道にまつわる意外な事実、トリビアを紹介していく。

海の上を走る「海上国道」が日本には結構存在する

 車の通行できない国道は各地にある。たとえば青森県の津軽半島最北端にある国道339号は、一部が階段になっている「階段国道」だ。当然、車では通れないが、人は歩いて通ることができる。ところが、人さえ歩いて通ることができない国道が各地にあるのだ。崖が行く手を阻んでいるとか、川に橋が架かっていないから通れない、などという理由からではない。さて、どんな国道だろうか。

 答えは、海の上の国道なのである。人呼んで「海上国道」という。この海上国道が、わが国にはずいぶんあるのだ。では、なぜ海の上が国道になりえるのか。疑問を持つ人は多いはずである。

 道路法第2条では、道路とは、「一般交通の用に供する道で(略)トンネル、橋、渡船施設、道路用エレベーター等、道路と一体となってその効用を全うする施設又は工作物及び道路の附属物で当該道路に附属して設けられているものを含んだもの」とある。要するに、たとえそこが海の上で、車の通行が不可能であっても、1本の交通系統として重要であると認められれば、国道として指定されるのだ。 

その意味でフェリーボートの航路も、その地域の重要な幹線路であれば国道になりえる。ただ、陸上を走る道路のように標識があるわけではないので、一般の人にはどこが国道なのかはわからない。

 本州と北海道との間の津軽海峡上には、国道279号、280号、338号の3本の国道が走っているし、東京湾を横断する横須賀市と富津市を結ぶ航路も、国道16号の一部区間なのである。

 九州南端の鹿児島市と沖縄の那覇市の間にも、国道58号が走っているのだ。総延長は879.6kmもあり、日本一長いと思われている国道4号(東京都中央区―青森市・総延長838.6km)より長い。この国道58号が日本一長い国道なのである。ただし、陸上を走っているのは種子島や奄美大島、沖縄本島などの実延長270.1kmだけで、609.5kmは海の上なのである。

「日本一長い国道」が陸ではなく海の上を通っているという不思議

日本一短い国道は全長わずか187mしかない

 では、最も短い国道はどこにあるのか。日本一短い国道は神戸港と2号を結ぶ174号だ。全長わずか187m。起点と終点には、「日本で一番短い国道です」と記された標識も設置されている。鉄道と比較すると、列車1両の長さが20mだから10両編成で200m。つまり、主要駅のプラットホームより短いのだ。次いで短いのは、岩国空港と岩国市街を結ぶ189号で、全長372m。3位は東京芝と東京港の間の130号で全長482m。なんと、短さベスト10のすべてが、旧一級国道と港湾・空港をつなぐ「港国道」なのである。

国道の最長・最短ランキング

 港や空港は日本の陸上交通を担ううえで最重視されてきた。明治時代、道路がいち早く整備されたのも、東京や大阪と開港場とを結ぶ路線だった。その路線がたとえ短くても、物資輸送など、日本の経済活動にとっては重要な道路なのである。そのため、長さは短くても幅は広く、174号では上下で11車線もある。

 ちなみに県道では、JR呉線安登駅と国道185号の間の広島県道204号安登停車場線は全長わずか10.5mしかない。それに対して幅員は18.7mと、いわば横長の県道だ。どう見ても駅前広場にしか見えない。

 国道141号と北陸新幹線上田駅をつなぐ長野県道162号上田停車場線は総延長が126mだが、上位の県道77号との重用延長を除くと、たったの7mになる。

日本一短い国道、国道174号
日本一短い国道、国道174号 Photo:PIXTA

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