人口6500人の半数が高齢者、6人に1人は認知症の町 将来も安心して暮らしたい…教育に活路求める

子どもたちとお手玉遊びをする認知症カフェのメンバー=錦江町田代麓の大原小学校

 子どもたちとお手玉遊びをする認知症カフェのメンバー=錦江町田代麓の大原小学校

 認知症の人が暮らしやすいまちづくりを進める鹿児島県錦江町は、将来の地域の担い手である子どもたちの理解を深める教育に力を入れている。人口約6600人の半数が高齢者で、うち6人に1人が認知症とされる同町。子どもたちが当事者と交流し、接し方を学ぶことで、年を取れば誰もが認知症になる可能性があることを感じてもらい、優しく接する大切さを伝える。
 「あんたがたどこさ。肥後さ。肥後どこさ」-。8日昼、山あいにある大原小学校に明るい笑い声が響いていた。認知症カフェの高齢者と児童が輪になり、リズム良くお手玉を隣の人に渡していく。手と手が触れ合い会話も弾んだ。
 全児童13人が、カフェの6人と15分間、かるたやけん玉などで交流した。3年大浦地駈君は「楽しくて、すぐに時間が過ぎた。また来てほしい」と話した。
 カフェは、町の委託を受け、地元のNPO法人「たがやす」が運営する。週1回活動し、今回は児童たちと会えるとあってメンバーもうれしそうだ。卒業生の浜川良子さん(75)は「何十年ぶりに学校に来た。孫みたいな子どもたちと一緒に遊べてうれしかった」と笑顔を浮かべた。その後の座談会では「愉快で楽しいことが長生きの秘訣(ひけつ)」「もっと遊びたい」などの意見が出た。
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 町によると、町内の認知症の人は2022年4月時点で547人を数え、高齢者の6人に1人の割合。要介護認定を受けていない当事者を含めると、700人以上と推計される。
 南隅地区の高齢化は県内でも著しく、20年国勢調査確定値で錦江町は高齢化率46.6%。隣の南大隅町の49.3%に次ぎ2番目に高い。今後も高まる見通しで対策を迫られていた。
 こうした現状を踏まえ錦江町は21年度、認知症になっても安心して暮らせるまちづくりを目指し、普及・啓発に取り組み始めた。小学校の協力も得て、22年度からは町内6校のうち、5校と連携。児童は、若年性認知症の丹野智文さん(48)=仙台市=と交流したり、地元グループ「南の星座」による寸劇を見たりして、当事者に対し「焦らせず、怒らず、優しく接する」大切さを学んだ。
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 県内でも認知症サポーター養成講座などの取り組みは広がっており、各校も独自の学習を進めている。
 町内でいち早く認知症学習を始めた大根占小は、児童と当事者がスーパーや銀行など5店舗を回り、当事者目線で改善を提言する授業に取り組んだ。池田小は福祉をテーマに1年を通して障害や支援策を学んでいる。
 保健行政に詳しい有村智明副町長(63)は「子どもたちは認知症への偏見がなく、すぐに当事者と打ち解けている。当事者も交流を楽しみにしており、生活が改善し、明るくなった人もいる。学校での認知症カフェ開催を増やしていきたいが、それには学校の協力が必要」と強調した。

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