奄美大島(鹿児島県)
奄美大島の北にある崎原ビーチ。視界が開けた景観に、気分も晴れやかに。
沖縄本島と鹿児島のほぼ中間に位置する奄美大島。周囲約461キロメートル、面積は約712平方キロメートル。沖縄本島、佐渡島に次ぐ国内で3番目に大きな島です。
島の南北は、約90キロメートル。ただし島はその8割を山間部が占めているため、島を車で一周しようとすると、約6時間半もかかるとか。想像以上に大きな島です。
中心地は、ビルやちょっとした繁華街もある中部の名瀬。南端の瀬戸内町まで下ると、複雑に入り組んだリアス海岸が広がり、風景ががらりと変わります。
そして中南部は奄美群島最高峰の湯湾岳(海抜694メートル)を中心に外国のジャングルのような、国内最大級の亜熱帯照葉樹林が広がっています。
もともとはユーラシア大陸の東端の一部だった奄美群島。地殻変動により大陸から徐々に切り離され、島に取り残された動植物たちは独自の進化の道をたどりました。
そのため、奄美大島を含む奄美群島は日本の国土のわずか約0.3%ながら、そこに日本全体の約16%もの生物種が暮らしています。アマミノクロウサギやアマミトゲネズミなど固有種も生息し、その多くが絶滅の危機に瀕した希少種でもあります。
そんな動植物の多様性と貴重な固有種の多さなどから、2021年に「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」が世界自然遺産に登録されました。
今回はそんな奄美大島の海・森・川、それぞれの豊かな自然についてご紹介していきましょう。
春から夏の海底に描かれるミステリーサークル
4~7月の奄美大島の砂地の海底にはミステリーサークルが現れるのをご存じですか?
春から夏、海底にミステリーサークルを描く犯人はアマミホシゾラフグ。
それは奄美大島の沖合、水深10~30メートルの砂地の海底に、小潮~大潮にかけて作られ、大潮前の中潮のときが最もきれいなサークルが見られる砂の造形物。直径は約2メートル、溝とウネが連続する同心円の中央に、放射状に波模様が描かれていて、ちょっとしたサンドアートのようにも見えます。
これは30年ほど前に発見されたのですが、「誰が? どうして?」と、謎に包まれたままでした。それが2011年、ついに判明したのです。
その正体は、体長10センチほどのアマミホシゾラフグのオスがせっせと築いた産卵床。
オスは産卵床が完成したら、少し離れたところでメスを待ちます。めでたくカップルとなり、サークルの中心でメスが産卵すると、オスは卵を守ることに専念します。管理されなくなった産卵床は、すぐに崩れてしまうそうです。
産卵床は砂地にあるため、砂を巻き上げないよう中性浮力が取れる中級以上のダイバーならば、実際に潜って観察することもできます。ちょっとトボけた顔のアマミホシゾラフグと美しい幾何学模様の産卵床は、春から夏にかけての海のハイライトです。
龍郷町から船で約10分。このポイントのみならず、他にも観察場所が見つかっているとか。お世話になったのは、ダイブサービス ブルーゲイト。
ちなみに、アマミホシゾラフグは米国のニューヨーク州立大の国際生物種探査研究所が選ぶ、2015年の「新種トップ10」に選ばれたそうです。
この島固有のアマミノクロウサギと夜の森で遭遇
奄美大島といえば、アマミノクロウサギ。せっかくだから、見てみたい。
とはいえ、夜行性のアマミノクロウサギを目撃するには、当然ながら夜の森に行かなくてはなりません。夜となると、猛毒のハブや虫などが出るかもしれず……。やはり、その土地を知り尽くしたエコツアーガイドに案内してもらうのが一番です。
エコツアーガイドの車で、アマミノクロウサギの目撃談多数の三太郎線へ。
奄美大島エコツアーガイド連絡協議会の公式サイトにフィールド別のガイドのリストが掲載されているので、ご参考に。
ナイトツアーはいくつかの市道で開催されていて、そのうちの「三太郎線」を体験しました。三太郎線では混雑しないよう、ルートの東西の入り口から30分おきに車1台ずつという制限があり、通行には事前の予約が必要です。
ツアーは、ガイドの車で時速10キロのゆっくりとしたスピードを保ちながら、夜の森を進みます。いくつかのポイントでは車外に出て、ガイドが木の枝や川のたまりに隠れている生物を見つけてくれることも。道中は動植物の生態にまつわるお話も聞けて、さらに興味が湧いてきます。
そんなくつろいだ雰囲気の中、ふとヘッドライトに照らし出された黒い物体が! なんとアマミノクロウサギです。
車外に出て、アマミノクロウサギとの距離を2メートル以上キープしながら、「写真を……」とカメラを手にした瞬間、隙をついて草むらに飛び込んでしまいました。残念!
そんな遭遇が何回か繰り返されました。希少種のアマミノクロウサギに思いのほかあっさりと出会えたことに驚きです。
国内第2位のマングローブの原生林をカヌーで行く
奄美大島は川も冒険の舞台です。島の中部を流れる住用川の河口付近には、西表島に次いで国内2番目の規模を誇るマングローブの原生林が広がっています。
住用川周辺のマングローブ林は、メヒルギとオヒルギで構成されています。
道の駅に併設された「黒潮の森 マングローブパーク」では、カヌーツアーを開催しています。カヌーは目線が水面に近いのとモーターなどの騒音がないことがメリット。パドルがたてる水音を聞きながら、住用川の支流を進み、マングローブの原生林を目指します。
流れもなく、水深も浅いので、初心者でも安心。パドルの扱いも少し練習すれば、慣れるはず。
日本産のマングローブ7種のうち、ここにはメヒルギとオヒルギが繁茂しているそう。カヌーならマングローブにグッと近寄ることができ、タコの足のような気根や地面に刺さっている種もすぐそばで見られます。
今回は大自然にフォーカスしてみましたが、島唄や伝統食など文化や慣習も面白そう。そのあたりも探ってみたいところです。
マリブビーチ
●アクセス 空路は東京(羽田、成田)や大阪からの直行便のほか、沖縄から1時間、または鹿児島から50分など
●おすすめステイ先 奄美山羊島ホテル
https://yagijima.com/
古関千恵子(こせき ちえこ)
リゾートやダイビング、エコなど海にまつわる出来事にフォーカスしたビーチライター。“仕事でビーチへ、締め切り明けもビーチへ”をループすること30年あまり。
●オフィシャルサイト https://www.chieko-koseki.com/
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