徳川家存続「一命にかけ」と嘆願 西郷隆盛を、歴史を動かした篤姫の書状 新たに収蔵 黎明館、来年2月に初公開

天璋院篤姫(尚古集成館所蔵)

 天璋院篤姫(尚古集成館所蔵)

天璋院篤姫が徳川家存続を嘆願する書状。中央には「一命にかけ」と記されている=鹿児島市の黎明館

 天璋院篤姫が徳川家存続を嘆願する書状。中央には「一命にかけ」と記されている=鹿児島市の黎明館

「隊長へ」「天璋院」と記されている天璋院篤姫の書状=鹿児島市の黎明館

 「隊長へ」「天璋院」と記されている天璋院篤姫の書状=鹿児島市の黎明館

 黎明館(鹿児島市)は、1868(慶応4)年の江戸城総攻撃の直前、天璋院篤姫が西郷隆盛に宛てた書状を新たに収蔵した。徳川家存続を「一命にかけ」と嘆願し、江戸無血開城に導いた要因の一つとされる著名な史料。同館は「篤姫の生きざまを物語る、極めて重要な書状」とし、来年2月2日開幕の開館40周年記念展覧会「黎明館の至宝」で初公開する。
 書状は縦17.5センチ、横303センチ。3月15日に予定されていた江戸城総攻撃に先立ち、同11日に出されている。「隊長へ」との宛先と、「天璋院」の署名が記されており、篤姫付の老女・幾島が西郷に面会し、渡したとの記録がある。
 書状には徳川家存続は薩摩藩の取り扱いでなければ実現できないとし、「私がこの一命にかけ、ぜひぜひお頼みする」としたためている。また、自身が徳川家に嫁いだことは「御父上(島津斉彬)の深い御思慮」とし、西郷をはじめ斉彬を慕う薩摩藩関係者の心情にも訴えている。
 一方、徳川慶喜に対して「どのような天罰を命じられてもやむを得ない」とし、元々は水戸藩出身で、一橋家の慶喜に責任を負わせ、朝廷側の処分の落とし所も示唆している。崎山健文学芸専門員(54)は「徳川家を残すため、柔らかな表現ながらも強く訴えている。高度な戦略性があり、細部にまで行き届いた文章で、字も美しい」と解説する。
 書状の存在は以前から知られており、黎明館でも写本が展示されたことはあったが、原本は全国でも一般公開されたことはなかった。所有していた、薩摩藩出身の実業家の子孫から「鹿児島にあるべき史料」と県が打診を受け、9月に275万円で購入した。
 志學館大学の原口泉教授(76)は「西郷の心を動かし、歴史をも動かした決定的な書状。篤姫の最高傑作とも言える」と語った。

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