日本酒の種類って分かる? 吟醸と大吟醸の違いは? 京都の日本酒プロがわかりやすく解説

日本酒の種類ってたくさんあって、違いもわからないし、どれを選んでいいのか初心者にはなかなかハードルが高いですよね。そこでこの記事では歴史ある造り酒屋・増田德兵衞商店の14代目当主・増田德兵衞さんに、日本酒の種類についてわかりやすく解説してもらいました。

日本酒の種類にはどんなものがある?

「日本酒」は、ビールとワインと同じ「醸造酒」です。さらに酒税法の分類によると、お米を原料に用い、もろみをこす工程を経て造られる「清酒」に該当します。

「清酒」は「特定名称酒」と、「普通酒」または「一般酒」と呼ばれるものに分けられています。「特定名称酒」とは、原料や精米歩合など、定められた要件を満たしており、「普通酒」は要件に該当しないお酒のこと。

日本酒 種類

最初に「特定名称酒」についてわかりやすく一覧にしましたので、知りたいお酒の種類を探してみてください。

吟醸酒

「お米の精米は60%以下、白米と米こうじ、水や醸造アルコールを原料」として造られたお酒です。「固有の香味と色沢(しきたく)が良好であること」が条件づけられています。

お酒の原料となるお米は、削るほど雑味が減り、澄み切ったキレ味のあるお酒になります。つまり「吟醸酒」とは、吟味され、選ばれたお米を40%も削っているわけです。さらに、低温でじっくり発酵させる「吟醸造り」によって、スッキリとした飲み口を持ちながら、華やかでフルーティーな香りのお酒が生まれます。

さらにお米の中心部だけを使用(精米50%以下)したお酒は、「大吟醸酒」と呼ばれ、味のキレに磨きがかけられています。材料を吟味し、手間をかけた分のお値段は上がりますから、高級な贈り物として選ばれる場面が多いのも、「大吟醸酒」の特徴です。

純米酒

「純米酒」は、「白米、米こうじ、水」だけを原料として造ったお酒です。アルコールは添加されず、お米の発酵力だけで造られています。ここから、お米の味わいが豊かで、ふくよかな香りを愉しめる特徴が生まれるわけですね。

このグループにはさらに、精米や香味などの条件により細かく定められ、中には「純米酒」と「吟醸酒」それぞれの特徴を併せ持ち、両方にまたがる場合があります。それが「純米吟醸酒」「純米大吟醸酒」です。磨き上げたお米だけで造られたスペシャルなお酒、というわけですね。

その他には、「特別純米酒」と呼ばれるお酒があります。純米酒の中では比較的深く精米(60%以下)することにより、お米由来の旨味がありながら、ややスッキリとした味わいで飲みやすくなるのです。また、「特別な製法」で造られた純米酒も、この分類に入ります。

このほか、ランクが3等以上の玄米を精米して使用すること、麹米の割合が15%以上であることなどの条件も満たす必要があります。ここには酒造メーカーの裁量に任される余地があることから、酒造の特徴が出やすい点も「特別純米酒」の愉しみです。どこが「特別」なのかは、表示されたラベルを見て確かめてみてくださいね。

日本酒 種類

ここまで説明してきましたが、「純米酒」の主流は、お米の味をダイレクトに味わうものです。日本の風土が育んだお米、そして水。さらに酵母菌の働きによって多種多様な味が、地域によってそれぞれ生み出されました。さらに、醸造期間を長くすれば、米の糖分が減り、辛口になってきます。手間と時間をかけて造る、日本酒造りの真骨頂が「純米酒」なのです。

本醸造酒

「本醸造酒」は、お米の精米が比較的浅く(70%以下)、「白米、米麹、醸造アルコール及び水を原料」として造ったお酒で、「香味や色沢が良好のもの」が条件です。「吟醸酒」と同様に醸造アルコールを添加しますが、添加できる量は「お米の重さに対して10%」まで、と決められています。

「醸造アルコール」とは、主に雑穀類を原料としてアルコール発酵させたのち、蒸留を繰り返すことで得られるもの。いわば「焼酎」と同じものです。雑味がなく無味無臭なので、これを添加した日本酒にはスッキリとしたキレが生まれます。また、日本酒に含まれる糖や酸などの雑味成分を抑える働きがあることからも、「本醸造酒」は香り、味わいがシンプルで、スッキリとした辛口のお酒が多くなるようです。

精米歩合が深く(60%以下)、または特別な醸造方法の場合は、「特別本醸造酒」に分類されます。

普通酒

項目の最後に、「清酒」に含まれる、もう片方の「普通酒」について触れておきましょう。

「普通酒」とは、ここまでご紹介してきた「特定名称酒」に分類されず、「日本酒」とだけ表記されています。精米が浅いお米を使用したり、その他の原料を用いたり、または、添加される醸造アルコールの量が10%を超えるものも該当。

そのため、比較的手頃な価格で手に入りやすいという特徴につながります。普段使いできる日常のお酒、という位置づけは、ワインでいう「テーブルワイン」の感覚ですね。日本酒のシェアでは7割を占めており、スーパーやコンビニ、居酒屋のメニューなどで見かける日本酒の多くは「普通酒」にあたります。

日本酒 種類

安価なのでおいしくないのか、というと、決してそうではありません。穏やかな香りと、落ち着いた旨味を持つお酒が多く、逆にいえば、個性が強すぎないため、日常の食事にはよくなじみます。パック詰めや、カップ酒といったおなじみの商品の他、酒造メーカーの自由な発想で造られる大胆な商品も見られ、現代の暮らしに沿いながら、日本酒文化の一端を担うお酒として愛されているのです。

初心者におすすめの飲みやすさランキング、ベスト3は?

日本酒を飲み始めた方が飲みやすい銘柄を、京都の老舗酒造、増田德兵衞商店の十四代目・増田德兵衞さん(以下、増田さん)にお聞きしました。ランキングにして紹介しますので、次に試してみたいお酒を選ぶ際の参考にしてください。

1:純米吟醸 浦霞禅(宮城県)

宮城県で絶大な支持を受ける老舗蔵「佐浦」の一本。「飲み口が軽やかなので、日本酒に慣れていない方にもおすすめです」と増田さん。

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2:出羽桜 純米吟醸 つや姫(山形県)

明治25年(1892)に創業した「出羽桜酒造」の一本。完全手づくりの日本酒で、吟醸ブームを牽引する存在です。「軽やかですっきりとした香りを持つ日本酒です。後味も心地いいですよ」と増田さん。

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3:真澄 純米吟醸 白妙 SHIRO  (長野県)

寛文2年(1662)に創業した老舗蔵「宮坂醸造」の一本。「“造り手自身が飲んで旨い酒”をポリシーに造られている日本酒です。透明感のある味わいで、飲みやすいですね」と増田さん。

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初心者も飲みやすい、お刺身に合う銘柄を紹介

お刺身に合わせて愉しむなら、どんな銘柄が合うのでしょうか? こちらも増田さんにお聞きしました。和食をいただく時の参考にしてみてください。

1:奥の松 あだたら吟醸(福島県)

創業300年を超える老舗蔵「奥の松酒造」の一本。「様々な料理との相性がいい、食中酒。辛口のさっぱりした味わいがお刺身と合います」と増田さん。

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2:上善如水 純米吟醸(新潟県)

安政2年(1855)より酒造りを始めた老舗蔵「白瀧酒造」の一本。「“水の如し”という名前が表す通り、あらゆる食事と調和します。豊かな水の表情をお刺身と一緒に味わってみてください」と増田さん。

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3:司牡丹・船中八策(高知県)

慶長8年(1603)より酒造りを始めた老舗蔵「司牡丹(つかさぼたん)酒造」の一本。「食中酒として完成度が高い、司牡丹を代表する人気ナンバーワン銘柄です。特に新鮮魚介の美味しさを引き出してくれます」と増田さん。

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最後に

日本酒は「特定名称酒」と「普通酒」に分類されます。「特定名称酒」は原料で主に3つに分類され、さらに精米の歩合などによって8つに分類されるのです。「吟醸酒」「純米酒」「本醸造酒」は、分類によって味がどう変わるのか、機会を見つけて飲み比べてみてください。

「普通酒」とは、比較的安価でお手頃な日本酒です。日常の食卓にピッタリのお酒として、愛好者が多い種類ですよ。それぞれの特徴を確かめながら、大人の愉しみを深めていきましょう!

監修

増田德兵衞

京都・伏見にある老舗酒蔵「増田德兵衞商店」の14代目で、会長。創業三百余年(創業1675年)の歴史を持つ蔵元で、元祖「にごり酒」は高い評価を得ている。日本酒の蔵元が集まった、一般社団法人 刻(とき)SAKE協会の代表理事でもある。

構成・執筆/京都メディアライン

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