江戸時代、修験者が修行重ねた山頂の絶壁 身乗り出して死を疑似体験 「歴史後世へ」町民が案内板 長島・行人岳

覗きが行われていたとされる絶壁=2022年12月27日、長島町の行人岳

 覗きが行われていたとされる絶壁=2022年12月27日、長島町の行人岳

覗きの修行について記した看板=長島町の行人岳

 覗きの修行について記した看板=長島町の行人岳

 鹿児島県長島町中央部の行人岳(393メートル)は江戸時代、修験場として地域の信仰を集めてきた。山頂付近では、修験者が崖に身を乗り出して下をのぞき込む「覗(のぞ)き」と呼ばれる修行を重ねていたという。舞台となった絶壁が今も残っており、町民有志は案内板を設置するなど歴史を伝える取り組みに力を入れる。
 山頂に立つ廟(びょう)内には修験道の本尊とされる蔵王権現や不動明王がまつられる。崖は山頂東側にそそり立つように二つあり、視界の下には山々がそびえ、先には八代海が迫る。
 奈良県天川村の大峯山の「西ノ覗」では現在も命綱1本で逆さづりにされる修行を体験できる。死を「疑似体験」し、生まれ変わる意味合いがあるという。郷土史に詳しい地元の山崎友喜さん(69)は「行人岳でも同じような捨て身の修行があったと一部の町民に伝えられてきた」と語る。
 町民有志による行人岳不動明王廟運営委員会のメンバーは2022年秋、町に依頼し崖周辺の草木を伐採。柵の内側から見学できるようにした。看板は12月設置し、大峯山の修行風景を収めた写真を盛り込んだ。 
 同会の阿多靖直委員長(76)は「壮大な眺めを楽しみながら修験道の聖地としての歴史も感じてもらえれば」と話している。

コメント