瓶ビールと缶ビールで「味が違う」と感じる理由は?

人類とビールの付き合いは長く、すでに5000年以上に及ぶといわれていますが、ビールのことを私たちが理解しはじめたのは、醸造などのお酒に関する科学が発展した、ようやくこの120年ほどのことにすぎません。

「とりあえずビール」を至福の一杯に変えるためのトリビアが満載のロングセラー『カラー版 ビールの科学』から、「ビール雑学」クイズをご紹介しましょう。

瓶ビールと缶ビールは味が違う?

Q8 瓶ビールと缶ビールで美味しさが違う?

A8 「瓶ビールと缶ビールでは味が違う!」と思っている人もいるようです。しかし、じつは中身はまったく同じなのです。どうして「味が違う」と感じることがあるのでしょうか?

瓶ビールはふつう、グラスに注いで飲みますが、缶ビールはグラスに注いで飲む場合と缶のままじかに飲む場合があります。缶のまま飲むと、グラスに注ぐ場合に比べて炭酸ガスがほとんど抜けないため、舌にピリピリ感を感じやすくなります。

じつは、瓶ビールや缶ビールも、グラスに正しく注いで飲めば、ビアホールの生ビールと変わらない美味しさを実現できます。

【写真】グラスに注げばビアホールと変わらない美味しさ

グラスに正しく注いで飲めばビアホールの生ビールと変わらない美味しさを実現できる photo by gettyimaged

また、ビールの泡には原料のホップ由来の苦味成分が濃縮されているため、缶のまま飲むと泡ができないことでホップの苦味成分が泡として分離されず、苦味を強く感じることがあるかもしれません。

さらに、缶に唇や舌が触れると金属味を感じることがあり、こうした微妙な差違を、瓶ビールと缶ビールの味の違いとして認識してしまう可能性が考えられます。

それぞれグラスに注いで、飲み比べしてみてください。

ビール瓶の容量はなぜ「キリの悪い」数字?

Q9 ビール瓶の容量の「キリの悪い数字」は、どうやって決められたの?

A9 ビール大瓶の容量は、各社とも633mLに統一されています。いかにも「キリの悪い数字」ですが、どうしてこの値になったのでしょうか?

ことの次第は、昭和15年(1940年)まで遡(さかのぼ)ります。この年、新しい酒税法が制定されたことで、徴税のための容器としてのビール瓶の入味容量を正確にし、統一する必要が生じました。

当時の大日本麦酒の10工場と麒麟麦酒4工場の容量を調査したところ、3.57合(643.992mL)から3.51合(633.168mL)まで、メーカーはもちろん、工場によってもバラついていることが判明しました。

そこで、最も小さい瓶に合わせれば、それより多めの瓶も使用できるということで、昭和19年(1944年)に大瓶の容量は3.51合と決められたのです。

その後、昭和26年(1951年)のメートル法の施行により、633mLに換算されたのが現在の大瓶の容量となっています。小瓶も同様の経緯で、334mLと決められました。

なお、500mLの中瓶は昭和32年(1957年)に登場しました。

【写真】ビール工場

ビールの容量にも、長い歴史が込められている!? photo by gettyimages

「冷やしすぎのビール」は美味しくない?

Q10 「冷やしすぎのビール」は美味しくない?

A10 夏の暑い盛りやお風呂上がりに飲む冷たいビールは、このうえない幸福感をもたらしてくれます。

しかし、冷やしすぎはかえってよくありません。どうしてでしょうか?

まるで氷水のような冷やしすぎのビールでは、冷たさだけが過度に感じられ、本来の味や香りといった美味しさを楽しめなくなるからです。泡立ちも悪くなってしまいます。

さらに、過度に冷やしたり凍らせたりすると、ビールの成分が澱(おり)となって沈殿することもあるので注意してください。

美味しく飲むための温度は、一般的には6〜8℃くらいが目安ですが、夏はやや低め、冬はやや高めにするのが適温とされています。

Q11 冷やさないほうが美味しいビールってあるの?

A11 日本で通常飲まれているピルスナータイプのビールは、適度に冷えたほうが爽快感があって美味しく飲めます。

しかし、ビールの種類によっては、あまり冷えていないほうが美味しいものもあります。

その代表例が、英国で飲まれるエールです。好みにもよりますが、グラスに注がれたぬるめの液をちびちび飲んだほうが、香りも十分に感じられ、味わいも深まります。

【写真】「バス・ペールエール」のボトル型配達トラック

英国の代表的なエールの銘柄、バス・ブリュワリーの「バス・ペールエール」のボトル型配達トラック photo by gettyimages

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