鹿児島湾生かし観光活性化を 本港区エリア核に船で薩摩・大隅両半島結ぶ新ルート 新体育館整備が契機、鹿児島市と鹿屋市の住民ら提案へ

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ヒメアマエビの仕分けを見学する鹿屋ツアーの参加者=鹿屋市の鹿屋港

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観光客の輸送のため今春就航した小型高速船「なんきゅう8号」=鹿児島市のマリンポートかごしま

 鹿児島市や鹿屋市の住民が鹿児島湾を生かした活性化策を模索している。活動は、鹿児島港本港区に整備地が決まった県の新総合体育館構想がきっかけ。海沿いの再開発が注目を集める中、本港区エリアを核に薩摩、大隅両半島を結ぶ観光ルートの開拓を急ぐ。新型コロナウイルス後を見据え、新たな視点の街づくりを行政に提案していく。
 4月2日午前、鹿児島市のマリンポートかごしま。定員53人の小型高速船「なんきゅう8号」に、観光関係者や県議ら約40人が乗船し、鹿屋港に向けて出航した。後部の屋外座席では豪快な水しぶきと爽やかな海風を感じる。市街地や桜島の雄大な眺望を満喫し、45分後に到着。鹿屋港では、取れたてのカンパチやヒメアマエビなど湾の恵みを楽しんだ。
 フリー編集者、吉國明彦さん(61)=鹿児島市常盤1丁目=は「県民は鹿児島湾への関心が低い。身近に海を体験すると魅力が分かる。観光に活用すべきだ」と話した。
■渋滞回避
 活動は、体育館の整備地がドルフィンポート跡地でまとまった今年1月に始まった。発起人は鹿児島湾の遊覧船「クイーンズしろやま」を運航する城山ストアー(鹿児島市)の池畠泰光会長(72)ら。参加者はシドニーなど海外を例に「中心市街地との回遊性も大切だが、真の街づくりには海を活用する視点が欠かせない」と口をそろえる。
 複数の県議や鹿児島市議も加わり、船で沖から本港区を視察するなど検討を重ねている。今回の鹿屋ツアーもその一環だ。
 にぎわい創出の視線の先にあるのは、マリンポートに着く大型客船の観光客。桜観光(鹿屋市)によると、乗客の外出先は城山展望台など近場に限られ、リピーターは下船すらしない。寄港時の周辺の渋滞が一因とされる。
 小型高速船を使えば本港区まで十数分。渋滞を回避できる上、海から県都の街並みを間近に眺める鹿児島ならではの観光を提供できる。鹿屋にも定期フェリーではダイヤや渋滞の関係で2時間は必要だが高速船を使えば半分以下となり、かのやばら園や吾平山上陵といった人気スポット巡りも可能になる。池畠会長は「海を使えば観光ルートの幅が広がる」と手応えを語る。
■湾奥クルーズ
 民間主導の活動を後押しするように県は3月、本港区北ふ頭に浮桟橋を整備する計画を打ち出した。マリンポート(2019年整備)、桜島港(今年4月同)に続く計画となり、2年後には鹿児島湾を回遊する環境が整う。
 一方、本港区の核となる新総合体育館については、「県内外からの来訪者でにぎわい、感動を与える施設」とする指針はあるものの、海との関わりなど将来像を描くのはこれからだ。
 山川-根占フェリーを運航する「なんきゅうドック」(鹿児島市)は、コロナ後を見据えて今春導入した「なんきゅう8号」と、別の高速船「10号」(定員64人)の2隻でバス3~4台の観光客を運ぶ態勢を整えた。遊覧船を使った鹿児島湾奥クルーズなど本港区を訪れた人に多様な選択肢を提案できる。
 新型コロナ禍で寄港がない大型客船も、今後運航が本格化する見通しだ。発起人の一人で同社の今村弘彦会長(83)は「体育館整備は海を活用した街づくりのチャンス。観光客が市街地をはじめ、各地に出掛けることで県全体が活性化する」と指摘する。

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