「上撰」ってどんな日本酒?日本酒の分類法の歴史とともにご紹介

「上撰」ってどんな日本酒?日本酒の分類法の歴史とともにご紹介

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「上撰」と記載された日本酒のラベルを見たことがあると思います。「特撰」「佳撰」とともに日本酒の等級を示したものですが、「大吟醸」や「吟醸」「純米」など「特定名称酒」と呼ばれる分類とはどう違うのでしょう? 「上撰」とは一体どんな日本酒を指すのか、日本酒の分類法の歴史とともに紹介していきましょう。

日本酒の「上撰」は蔵元独自の基準で決まる

日本酒の「上撰」は蔵元独自の基準で決まる

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日本酒の「級別制度」が廃止されるまで

「特撰」「上撰」「佳撰」という区分は、かつて日本酒の酒税を決める際に使われた級別制度の名残と言えます。
1992年に酒税法が改正されるまで、専門家による審査のもと、アルコール度数や酒質によって「特級」「一級」「二級」という等級で日本酒を区分していました。
この区分によって酒税が変わるのですが、酒造りの方法が多様化し、区分基準と日本酒の質のよしあしが必ずしも合致しなくなってきたことから、等級制度は廃止となりました。

級別制度に代わって「上撰」など新たな区分が登場

級別制度の廃止にともない、「大吟醸」や「吟醸」「純米酒」「本醸造」といった特定名称による新しい基準が登場しますが、これらは精米歩合や製法による区分であり、単純に品質をランクづけしたものではありません。
特定名称酒が浸透した現在では、消費者はこの区分をもとに、好みに応じた日本酒を選択できます。しかし、級別制度が廃止された当初、それまで等級を目安に日本酒を買っていた消費者にとっては、どのお酒を買えばよいのか、わかりづらくなってしまいました。
このため、等級の代わりに「特撰」「上撰」「佳撰」という区分が使われるようになったのです。

「特撰」「上撰」「佳撰」は蔵元が独自にランクづけ

「特撰」「上撰」「佳撰」という区分は、かつての級別制度のように明確な基準はなく、ラベルへの記載義務もありません。消費者が買い求めるときに選択しやすいよう、蔵元がそれぞれ独自に決めているようです。
とはいえ、京都・伏見の老舗・月桂冠では、「特級」「一級」「二級」の基準をそのまま「特撰」「上撰」「佳撰」に当てはめているように、 基本的には等級制度に準じたものと言えるでしょう。

「上撰」の日本酒は長年愛される日常酒

「上撰」の日本酒は長年愛される日常酒

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「上撰」は今も愛飲家に支持される日本酒

日本酒に「上撰」など蔵元独自の区分をつけるようになった経緯は前述のとおりです。級別制度の廃止から四半世紀が過ぎ、「吟醸」など特定名称酒が浸透した現在でも、「上撰」といった肩書が使われ続けているのは、それら日本酒を支持している愛飲家たちの存在が大きな理由でしょう。
実際、今でも「上撰」を名乗る日本酒は、老舗の蔵元の、それも蔵を代表する昔ながらの銘柄が多く、長年の愛飲者に恥じない高品質のお酒も少なくありません。

「上撰」は普段使いできる手軽さも魅力

また「上撰」という呼称は、「吟醸」など特定名称酒には分類されない「普通酒」に使われることも多く、比較的リーズナブルな価格で入手できるのも、愛飲家にとっては嬉しいもの。
「上撰」を目印に、普段使いのおいしい日本酒を探してみてはいかがでしょう。

「上撰」の日本酒にはお値打ち商品も多数

「上撰」の日本酒にはお値打ち商品も多数

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「上撰」と銘打って販売されている日本酒のなかから、オススメの銘柄をいくつか紹介しましょう。

【上撰 蓬莱(ほうらい)】

「蓬莱」は、岐阜県の老舗蔵、渡辺酒造店が約150年にわたって造り続けてきた銘柄。その定番である「蓬莱 上撰」は、2018年に「日本燗酒コンテスト」の「お値打ち燗酒 ぬる燗部門」で最高金賞に輝くとともに、2017年の「インターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)」のオーディナリー部門で金賞とグレートバリュー賞をダブル受賞するなど、国内外で高い評価を獲得しています。
岐阜の日本酒【蓬莱(ほうらい)】伝統の「寒造り」で醸す飛騨の酒

【月桂冠(げっけいかん) 上撰】

「月桂冠」は日本有数の酒処、京都・伏見を代表する老舗蔵の社名であり、代表銘柄でもあります。「月桂冠 上撰」は、そのスタンダードとなるレギュラークラスの日本酒として、長きにわたり親しまれていて、甘・酸・辛・苦・渋の「五味」のバランスを追求した深みのある味わいが、今も多く愛好家から支持されています。
2018年の「インターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)」において、もっとも品質・コストパフォーマンスが優れたお酒として「グレードバリュー・アワード」を受賞しています。
製造元:月桂冠株式会社
公式サイトはこちら

【大雪渓(だいせっけい) 上撰】

「大雪渓」は、明治以来の歴史を持つ長野の蔵元、大雪渓酒造が、戦後になって新たに命名した銘柄です。昭和28年(1953年)には「全国新酒鑑評会」で最優秀賞に輝き、当時の皇室献上酒にも選ばれた伝統ある日本酒です。定番酒と位置づけられる「大雪渓 上撰」は、一升瓶で約2,000円という価格ながら、2015年の「インターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)」で金賞に輝くなど、数々の受賞歴を誇るお値打ちな1本です。
製造元:大雪渓酒造株式会社
公式サイトはこちら
「上撰」は普通酒に使われることが一般的ですが、蔵元によっては特定名称酒でありながら「上撰」としている銘柄もあります。さまざまな区分を理解することが、自分にとって最適なお酒を見つけるヒントとなるでしょう。
※商品価格は記事執筆時点のものとなります。ご購入の際には価格が異なる場合がありますのでご注意ください。

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