あれば助かる「路上の公衆トイレ」が姿消す 住民は不便がるが…維持点検に年数万円、市は「理解を」

7月に撤去が決まった伊敷中バス停横公衆トイレ=9月25日、鹿児島市草牟田町

 7月に撤去が決まった伊敷中バス停横公衆トイレ=9月25日、鹿児島市草牟田町

 散歩や通学中、いざという時に鹿児島市民の駆け込み場所となっていた市管理の「路上公衆トイレ」が無くなった。最後に残っていた草牟田町の伊敷中学校前バス停横にあったトイレは9月下旬、撤去された。市は「経費削減と周辺の環境の変化のため」としているが、地域住民からは「不便になった」「高齢者は困る」との声が上がっている。
 路上トイレは市内に計3カ所あったが、2020年には上之園町、21年には新上橋付近の2カ所が撤去されている。
 伊敷中前バス停横トイレは、市が地域の要望を受け1991年に設置した。公園や駐車場などの敷地内でなく、歩道上にぽつりとある形で和式と小便器が一つずつ備えられていた。国道3号線沿いに立地し、市環境保全課によると、撤去直前にも1日当たり約30人が利用していた。点検費や維持費など、年間の経費は数万円だった。
 市は撤去理由として周辺の環境変化も挙げる。路上トイレから半径約350メートル圏内に、市は97年と99年にトイレ付きの公園を2カ所整備した。同課の福重義隆課長は「近くにトイレができたので、費用対効果を考慮した上で撤去を決めた。住民には理解してもらいたい」と説明する。
 草牟田1丁目の主婦、斉藤和子さん(80)は甲突川沿いを毎日散歩し、今回撤去されたトイレを時々使っていた。「立地がよかっただけに、なくなるのは不便。これから、自分のような高齢者にも困る人が出てくるのでは」と話した。

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