どうなる吹上砂丘荘…「結論ありき」「存続努力を」市の閉館方針に住民反発、労組からは再就職支援求める声 日置

吹上砂丘荘の閉館方針に、多くの反対意見が出た住民説明会=1日、日置市の吹上中央公民館

 吹上砂丘荘の閉館方針に、多くの反対意見が出た住民説明会=1日、日置市の吹上中央公民館

2025年3月末の閉館方針が示された国民宿舎「吹上砂丘荘」=日置市吹上町今田

 2025年3月末の閉館方針が示された国民宿舎「吹上砂丘荘」=日置市吹上町今田image

 鹿児島県日置市が、管理・運営する国民宿舎「吹上砂丘荘」(同市吹上町今田)を2025年3月末(営業は同年2月末まで)で閉館する方針を示してから約3週間。吹上地域の住民からは「結論ありきだ」「唐突すぎる。議論する時間がほしい」など反発の声が聞かれる。21日に始まる市議会定例会には、市の砂丘荘閉館に関する条例案が提案される予定だ。住民らは閉館反対や関連条例の採決延期を求める請願や陳情を市議会に提出。議論の行方が注目される。
 吹上中央公民館で1日にあった住民説明会には約200人が参加。市商工観光課は閉館の理由として(1)従業員の確保難(2)施設の老朽化(3)厳しい経営状況-の3点を挙げた。同じく市営の健康交流館「ゆーぷる吹上」(同市吹上町中原)については存続を明言。食堂の民間移行や宿泊設備の増床で機能強化を図り、運営は指定管理者制度の導入を検討するとした。
 ただ配布資料はなく、スライドを使った8分程度の口頭説明のみ。住民らは一方的な閉館通告や資料がないことなどに猛反発。「新型コロナウイルス禍を赤字の理由にするのはおかしい」「経営をプロに任せて存続の努力を」などと、約3時間にわたり永山由高市長(40)らに意見や質問をぶつけた。
 住民が憤るのは、20年1月にもゆーぷるの食堂とプールの廃止方針が示され、住民の反対で撤回された経緯があるからだ。23年4月からは両施設の管理を一元化し経営改善を図ったが、従業員の離職などで計画通りの運営ができず効果は得られなかった。
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 市は16日にあった吹上地域自治会長連絡協議会の会合で、21年12月の市議会で永山市長が「3年の間にゆーぷる・砂丘荘の今後の道筋をつくりたい」と答弁したことなどを説明。砂丘荘は民間からの事業提案を引き続き募集しているとし、改めて理解を求めた。
 自治会長らからも閉館に反対する声が上がる一方、ゆーぷるが砂丘荘の宿泊、宴会機能を補完することを条件に容認する意見も出た。自連協の櫻井健一会長(72)は、ゆーぷるの機能充実を前提に「砂丘荘の活用法を市民からも募り、いい案があれば市が支援してほしい」と会をまとめ、市の方針に一定の理解を示した。
 一方、砂丘荘の寺脇正徳支配人(63)は「従業員は会計年度任用職員。市の方針に意見できる立場ではない」と言葉少な。ただ23年8月には労働環境の改善などを訴え、十数人で日置市会計年度任用職員労働組合を結成。執行委員長も務める寺脇さんは「従業員は閉館が前提の苦しい業務を1年続けなければならない。市には責任を持って全員の再就職を支援するよう要求している」と語った。
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 市によると、市の公共施設の面積が全国平均の約2倍あることも、砂丘荘閉館の一因になっている。21年3月に策定した「公共施設活用計画および個別施設計画」では、16年に定めた総合管理計画に基づき、379施設の保有面積を26年までに10%削減する目標を掲げている。砂丘荘は大規模改修は行わず修繕で対応する方針が示されており、23年度の予算では温泉高架タンク更新費約1000万円が計上されたものの、執行されずに数十万円の修繕で済ませた。
 永山市長は「施設の在り方は、今後しっかり向き合っていく重要な課題。今後も丁寧な説明に努め、市民の理解を求めていきたい」と語った。

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