昔はクルマに乗り始めたときは「暖機運転」後に出かけていましたが、今はどのクルマも推奨されていません。なぜなのでしょうか。
「クルマの暖機運転」 今は不要になった?
かつてクルマを始動する際は「暖機運転」をおこないましたが、今のクルマでは「暖機運転は不要」と取扱説明書に記載されるなど、推奨されていません。
では、なぜ今のクルマでは暖機運転が不要なのでしょうか。
昔は当たり前な「暖気運転」 今は不要?
クルマをはじめ、さまざまな機械における「暖機運転」とは、始動してから一定時間は負荷をかけないで運転することを指します。
クルマにおいてはかつて、出発する少し前にエンジンを始動しておき、十分に暖まった状態で出かけるのが一般的でした。
暖機運転をおこなっていた理由として、クルマの燃料噴射装置として「キャブレター」というものが用いられており、冷間時では燃料の噴射量が安定せず、始動してからある程度時間を置いてアイドリングを安定させるためです。
自動車整備士のA氏は暖機運転について以下のように話します。
「エンジンなどをある程度の温度まで温めておくことで、エンジンオイルなどの潤滑油も温まって循環しやすくなるため、パーツが円滑に機能するようになります。
昔は暖機運転したほうがクルマに優しいとされていたので、おこなっている人がほとんどだったと認識しています」
一方で、今のクルマについて前出の整備士は「いまのクルマでは、暖機運転をしなくてもとくに問題はなく、説明書にも記載していることはほとんどありません」と話します。
今のクルマは燃料噴射装置に電子制御式のインジェクションが用いられており、エンジンコンピュータによって制御されているため、暖機運転をせずとも安定したアイドリングが可能となりました。
また、エンジンオイル自体も潤滑性能などが向上している傾向にあるほか、そのほかのクルマのパーツが電動化されるなど、パーツが温まるまで待たなくても十分な性能を発揮するようになった点も理由のひとつとして挙げられます。
加えて、近年では環境問題や騒音の観点から都道府県条例などの決まりでアイドリングそのものを避けるように呼びかけられていることも、暖機運転が推奨されない理由のひとつとして考えられます。
トヨタは公式サイトのQ&Aコーナーで、暖機運転が必要かどうかという質問に対し、「通常、暖機運転は必要ありません」と回答しています。
ハイブリッド車に対しても、「ガソリンエンジンが冷えているときは、ガソリンエンジンの始動/停止を自動的におこないますので、暖機運転は必要ありません」と回答しています。
どんなに寒くても「暖機運転不要」? すぐに「アクセルベタ踏み」はOK?
クルマ自体の性能アップや環境・騒音問題などの理由から、今のクルマでは「暖機運転」が不要とされています。
では、どのような状況であっても暖機運転が不要なのでしょうか。
極寒の環境では多少暖気したほうがクルマに優しいという意見も
トヨタは公式サイトのQ&A上で暖機運転が必要かどうかという質問に対し、「通常、暖機運転は必要ありません」と回答していますが、以下のような但し書きがされています。
「ただし、極端な低温時や、しばらくおクルマをご使用されなかった場合は、数十秒間の暖機運転をおこない、ゆっくり発進することをおすすめいたします」
また、前出の整備士は暖機運転の例外的なケースについて以下のように話します。
「冬などの寒い時期に限っては、エンジンルーム内の温度が非常に低温になっていることもあり、パーツ類やオイルが過剰に冷却されていることが予想されます。そうした状況では、できる範囲で暖機運転をしたほうが望ましいでしょう」
氷点下を大きく下回る時など気温がかなり低い状況では、各オイルや冷却水なども含めてエンジンも同様に冷えた状態となります。
そのような状況ではいくら高性能化が図られた現代のクルマであっても、ある程度は温めてあげたほうが本来の性能が発揮できるほか、動作部が凍結していると破損をまねく恐れもあるため、短時間でも暖気したほうが良さそうです。
さらに、前出の整備士はこう続けます。
「走行は暖機走行を意識したほうが故障も避けられ、クルマにとって優しいといえます。暖機走行は、エンジンをかけ、しばらくは急発進、急停車、急ハンドルなど負荷のかからない運転をすることです。
高速道路のインターが自宅や旅行先から近くにあり、クルマが温まり切っていないのに合流をするためにアクセルをベタ踏みするといったことはぜひとも避けていただきたいです」
暖気走行は人間でたとえるならば、運動前に軽いジョギングや体操をおこなって身体を温めてからスポーツをするようなイメージです。
クルマも人間と同様に、起きてすぐに「全力ダッシュ」をしてしまうと故障の原因となるようです。
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このように、暖機運転は通常は不要ですが、冬季など気温が低下している状況では短時間の暖機運転をしてあげたほうがよく、また気温の高低に関わらず動き出してすぐに大きな負荷をかける走行をしないことが、愛車を長持ちさせる秘訣のひとつなのではないかと考えられます。
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