中国船が侵入繰り返す尖閣周辺 警備態勢強化へ大型巡視船配備「鹿児島は海守る要衝」「増備の可能性高い」 青森拠点に無人機MQ9B運用「情報は自衛隊とも共有」

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「いつも心には鹿児島への思いがある」と語る白石昌己さん=海上保安庁

ヘリコプター搭載型巡視船「しゅんこう」

ヘリコプター搭載型巡視船「しゅんこう」

大型巡視船「れいめい」(手前)と「しゅんこう」(小型無人機で撮影)

大型巡視船「れいめい」(手前)と「しゅんこう」(小型無人機で撮影)

■白石昌己・海上保安監(いちき串木野市出身)に聞く
中国船が領海侵入を繰り返すなど緊張が続く沖縄県・尖閣諸島周辺の警備態勢強化に向け、海上保安庁は鹿児島海上保安部(鹿児島市)への大型巡視船配備を進めている。いちき串木野市出身で、現場運用を統括する「海上保安監」を務める白石昌己氏(58)に、巡視船の拠点化が進む鹿児島の特性、海保を取り巻く現状と課題を聞いた。
-鹿児島には2019、20年度に6000トン級のヘリコプター搭載型巡視船が計3隻配備され、大型船は7隻体制となった。
「鹿児島の港は南西諸島をはじめ東シナ海、南シナ海と全方位に出やすく、鹿児島湾も穏やかで魅力的だ。民間から借り上げている鹿児島港谷山2区は広さも十分。現在、2本目の桟橋に加え、24年9月の完成を目指し燃料タンクやヘリ格納庫など陸上施設の整備も進めている。鹿児島は海を守る要衝となっており、施設面からも今後、大型船がさらに増える可能性は高い」
-尖閣諸島周辺の現状は。
「領海外側にある接続水域ではほぼ毎日、中国海警局の船が活動している。21年の確認日数は332日だった。領海内でも中国船が日本漁船に近づこうとする事案を多数確認。海保はアナウンスや電光掲示板で警告し退去を要求するなど、法にのっとって事態がエスカレートしないよう冷静に毅然(きぜん)と対応している」
-海洋監視や災害対応のため海保は19日から米ジェネラル・アトミクス社製の大型無人航空機シーガーディアン(MQ9B)1機の運用を始める。
「青森県の海上自衛隊八戸航空基地を拠点とする。機体はリースで、運用も海上保安官の指揮の下、外部委託する。無人機は長時間飛行でき、細かい情報収集が可能だ。得た情報は自衛隊とも共有する。組織は異なるが、日本と国民をどう守るかという目的は共通する。両者の垣根は今後一層低くなるのではないか」
-北海道・知床沖の観光船沈没事故では捜索救助の初動遅れが指摘された。知床を含む北海道の東・北部や奄美大島周辺はヘリが1時間以内に到着できない。ヘリ増強の考えは。
「増やす検討はしている。一方、鹿児島と知床は状況が異なる。鹿児島航空基地には高度な救助技術を持った機動救難士が、奄美海保には潜水士がいる。マリンレジャーの時期にはヘリ搭載巡視船に救難士や潜水士を乗せ、奄美近くに配備するといった運用の工夫もしている。いずれにしても1分1秒でも早く救助できるよう、足りない部分の努力は続けないといけない」
-海保が向き合う課題は。
「人材の確保と育成が最も大きい。特に女性が働きやすい職場環境づくりが急務だ。海保には女性だから就けないという職種はない。テレワークや男性の育休取得など、働き方改革も含め力を入れていきたい」
■しらいし・まさみ 1964年いちき串木野市生まれ。83年海上保安庁(海上保安大学校入学)。第10管区海上保安本部次長、第9管区海上保安本部長、海上保安庁警備救難部長を経て2022年6月から現職。

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