全国で開催される北海道物産展…売上高で圧倒的トップ、鹿児島「山形屋」の工夫

北海道などが主催し、全国の百貨店で開催されている「北海道の物産と観光展」で、鹿児島市の老舗・ 山形屋やまかたや が過去30回以上にわたって売り上げナンバー1となっている。ここ10年で開催された年は毎回10億円前後で推移しており、他の百貨店を圧倒する。鹿児島で人気を集めるのは、遠く離れた北海道へのあこがれやバイヤーの工夫があるようだ。(渡辺直樹)

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数の子の松前漬などが人気を集める物産展(4日)

今月4日の開幕日。午前10時の開店前から約250人が店舗前に並んだ。メイン会場となる1号館6階の催場には、道産の食材を使った加工品やスイーツ、カニやイクラをふんだんに使った弁当などを販売する業者がブースを開設。開店後、すぐに客の列ができた。

今年は24日までの会期中、初出店の13社を含む107社が出店する。毎年来ているという鹿児島市の女性(72)は「数の子の松前漬がおいしいので、いつも楽しみにしている」と語った。

出店側も力が入る。ジンギスカン用のラム肉などを販売する業者の担当者は「他の百貨店も回っているが、山形屋は特に熱気があり、気合が入る」と笑みを見せた。

山形屋では1964年から毎年開かれており、今年で58回目。「北海道物産展」の名前で浸透している。売上高は80年代前半は2億円台だったが、近年はほぼ10億円を超え、18年は11億円と最高を記録した。

そごう、高島屋、大丸といった大手百貨店も含めた約30会場で開催される中、2000年以降では、新型コロナウイルスの影響で開催を取りやめた20年を除き、毎回トップだ。

主催団体の一つで、北海道貿易物産振興会の大槻康人事務局長は「山形屋での売上額は2位の百貨店の2倍ほど。群を抜いている」と明かす。他の百貨店の多くが会期を約2週間としているが、山形屋は約3週間。ただ、売上額が多い理由は、会期の長さだけではないようだ。

開催を前にした10月9日。他の公務もあって鹿児島入りした北海道の鈴木直道知事が山形屋を訪ね、道の産業経済の振興に功績があったとして同社の岩元修士社長に感謝状を手渡した。

鈴木知事は「北海道の食や観光の素晴らしさを発信してくれている山形屋さんには早く来たかった」と熱弁を振るい、全国での売り上げ計約75億円のうち、10億円超を山形屋が占めることを紹介。盛況の理由について「北と南で約1500キロ離れ、気候や風土も違うので、お互いにあこがれがあるからではないか」と語った。

岩元社長は「北海道の業者と一緒になって商品づくりに取り組んでいることが大きい」と力説する。例年、開催を前にバイヤーが約1か月間、道内各地を回り、業者と意見交換しながら新商品の開発などを進める。人気のイクラのしょうゆ漬けは、鹿児島の人が好む甘いしょうゆを使うなど、工夫を凝らす。

コロナ禍で20、21年はバイヤーが北海道に出張できなかったが、今年は11人が8月末から2週間出向き、業者を回った。同社の山口政博・食品統括部長は「3年ぶりに北海道で業者とじかに会って商談ができた。人と人のつながりがあるからこそ、いい物産展ができる」と力を込める。

今回の売上額の目標は9億2500万円。会場に定員を設けるなどの新型コロナ感染対策を講じるため、ピーク時よりやや低めに見積もっている。

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