同じ県内の離島なのに、なぜ協力できない? 歴史的にも交わっているのに… 奄美群島と離島 2振興法の間にある〝壁〟とは

鹿児島県内離島の見本市「&island」にゲストとして参加した奄美の事業者(右から2人目)=2月17日、鹿児島市呉服町のマルヤガーデンズ

 鹿児島県内離島の見本市「&island」にゲストとして参加した奄美の事業者(右から2人目)=2月17日、鹿児島市呉服町のマルヤガーデンズ

 鹿児島県内の同じ離島でありながら、奄美群島と他の島々はイベントや振興事業を一緒に展開しづらい状況にある。奄美群島は奄美群島振興開発特別措置法(奄振法)、その他の島々は離島振興法(離振法)と、国から補助金などの支援を受けられる法律が異なるためだ。現場からは、法律の壁が島同士の交流を阻んでいるとの声も上がる。
 2月中旬、鹿児島市の商業施設であった県内離島の見本市「&island(アンド・アイランド)」には離島ファンらが集まり、活気に満ちあふれていた。ただ、公式に出店していたのは、奄美群島を除く種子島や上甑島、硫黄島など7島の9事業者にとどまった。
 参加できる島が限られたのは、離振法に基づき国と県が半分ずつ負担する離島活性化交付金を開催費用に充てたためだ。県離島振興課の陸川諭課長は「奄美には奄振法がある。離振法に基づく事業に奄美を組み込むと、予算の使い方がおかしいと指摘されかねない」と説明する。
 だが、県の委託事業だった見本市は、関係者の工夫で二つの法律による区分けを乗り越えた。「離島振興に奄美の知恵を生かす」という名目で、群島から奄美大島と喜界島の事業者がゲストとして参加。奄美の事業者によるトークステージもあった。
 委託を受けて主催した企業「東シナ海の小さな島ブランド」(薩摩川内市里)の山下賢太社長(37)は、奄美勢の参加を認めた県の姿勢を評価する。
 ただ、甑島を拠点に離島振興に取り組む山下さんは、奄振法と離振法の“壁”が残ったままでは島々の交流が活発にならないという問題意識も持つ。「海に線は引かれていない。今後も離島の当事者として声を上げ、島々を継ぎ目なくつないでいきたい」と意気込んだ。
 奄美群島新ビジョン懇話会座長で志學館大学人間関係学部の原口泉教授は「奄美と県内のほかの離島は歴史的に交わっており、現代でも交流を促進する必要がある」と指摘。その上で「県は全離島の将来像を一体的に考えた上で、それぞれの法律に基づき事業を展開すべきだ」と訴える。
■奄振法と離振法
 どちらも地理的特性などにより本土と格差がある離島の振興を目的として、戦後に定められた時限立法。奄振法は特別措置法で、離振法に比べて事業に対する補助率が高い。延長は5年ごと。対象は奄美大島、加計呂麻島、請島、与路島、喜界島、徳之島、沖永良部島、与論島。離振法は奄美、沖縄、東京の小笠原諸島を除く全国の離島が対象で、10年ごとの延長。県内は獅子島、桂島、甑島列島、新島、種子島、馬毛島、屋久島、口永良部島、南西諸島(三島村、十島村)が対象。一つの都道府県に二つの振興法が適用されるのは、鹿児島と東京のみ。

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