地方鉄道再構築 鹿児島県内は指宿枕崎線など5カ所が協議対象 住民「ショック」「廃線ありきでは」 沿線自治体は存続模索

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輸送密度が1000人を下回り、存廃を含めた協議の対象になると見込まれるJR肥薩線=湧水町川西

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 利用者減少で厳しい運営が続く地方の鉄道路線再構築に向け、国の有識者検討会が国主導で存廃を協議するよう提言した。鹿児島県内のJR線区では、指宿枕崎線など5カ所が協議対象となる見込みだ。沿線自治体は「あくまで路線存続の方策を探っていく」と強調するが、住民からは「廃線につながるのでは」と懸念する声も上がっている。
 25日にまとまった提言によると、国は利用状況が危機的かつ、複数自治体にまたがるなど広域調整が必要な線区について、事業者か自治体の要請を受けて地域協議会を設置。存続策やバス転換などを検討し、3年以内に結論を出す。
 JRについては当面、コロナ禍前の1キロ当たりの1日平均乗客数(輸送密度)が1000人未満の線区を協議対象の目安とする。県内では肥薩線(人吉-吉松)▽同(吉松-隼人)▽吉都線(吉松-都城)▽指宿枕崎線(指宿-枕崎)▽日南線(油津-志布志)が該当する。
 指宿枕崎線は鹿児島水産高校(枕崎市)に通う生徒の利用が多い。市企画調整課の堂原耕一課長は「これまでも沿線3市でJR九州などと利用促進について意見交換してきた。どういう形で路線を残していけるのか、協議していく」と話す。
 路線の存廃は地域経済にも大きな影響を与える。宮崎市などと日南線利用促進連絡協議会を立ち上げ、駅弁開発やイベントを企画してきた志布志市は「油津-志布志は観光目的の利用者が大半。目線を変えて活用策を考える必要がある」(企画政策課)との立場だ。
 肥薩線利用促進協議会の副会長を務める池上滝一湧水町長も「利用者増が望めない中、住民にとって何が一番良い方法なのか、周辺自治体や関連団体と意見を出し合いたい」と語った。
 ただ、地域協議会が廃線の引き金になるとの不安は地域内に根強い。
 湧水町ボランティアガイドでつくる「湧水(わくわく)汽車(ぽっぽ)会」の大重忠文会長(75)は「ニュースを見て『肥薩線、吉都線は終わりだ』とショックだった」。志布志町SL保存会の宮内春芳会長(83)も「協議会は廃線ありきなのではないか。駅がなくなれば、周辺の活気もなくなってしまう」と危機感をあらわにする。
 国は提言を受け、23年度にも協議を始められるように準備を進めるという。県交通政策課の諏訪哲郎参事は「国の制度設計を注視していきたい。鉄道は日常生活に欠かせない社会基盤であり、あくまで利用促進を図るというスタンスは変わらない」としている。

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 「JR日本最南端の駅」の標柱が立つ指宿枕崎線の西大山駅=指宿市

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