悲惨すぎる孤独な老人」にならないためにすべき一つのこと

独身男性は寿命が短い?

「孤独」「さみしさ」といったものは、心の問題として扱われがちですが、からだ自体の健康、ひいては寿命と大きく関係しています。

独身男性というとどのようなイメージを持たれるでしょうか。一般的には、孤独でさみしそうな印象を持たれることが多いようです。そんな独身男性と寿命の関係を示す衝撃的なデータがあります。

独身研究家の荒川和久氏によると、未婚男性の死亡年齢の中央値(平均値ではない)は67.2歳とのこと。配偶者がいる男性の死亡年齢の中央値は平均寿命平均と同じ84歳くらいなので、独身の男性は14年以上も早く亡くなってしまうことになります。

ただし、独身者の寿命が短くなる傾向は男性だけに顕著な現象で、女性はその限りではないようです。これは、女性が家族以外にも社会的なつながりをつくるのがうまいことが関係しているのかもしれません。

孤独は万病の元でしょうか

男女関係なく、孤独が心だけでなく身体的に不利な状況をもたらすことを証明する、別のデータがあります。

アメリカ・ブリガムヤング大学のジュリアン・ホルトランスタッド教授(心理学)は2010年、148の研究、30万人以上のデータを対象とした分析を行いました。
それによれば、社会的なつながりを持つ人は、社会的なつながり持たない人に比べて、早期死亡リスクが50%低下すると報告しています。

他のリスクと比較すると、いかに孤独が健康を害すると明確になります。上記の研究によると、孤独は1日のタバコ15本の喫煙に匹敵し、アルコール依存症と同じ早期死亡リスクがあるとされています。また、運動をしないことよりも早期死亡リスクが高く、肥満よりも2倍高いとされていました。

加えて、認知症リスクも報告されています。
オランダの3年間の追跡調査によれば、一人暮らしのグループは、そうでないグループと比べて、認知症発症率が1.66倍。未婚または早々に離婚したグループも認知症の発症率が1.74倍も高くなっていました。
不安感や孤独感自体が脳にも影響して、それを解消するための相談相手がいなければ、ストレスをため込むことにもなります。周囲からの支えがないと、脳にとっても非常に不利な環境と言えるでしょう。
なお、2005年のオーストラリアの研究では、友達が多い人ほど長生きするとされています。

本当に孤独はだめでしょうか

孤独が長生きや健康に悪いとしても、実際に独居で生きているお年寄りは少なくありません。私も外来でそうしたお年寄りをたくさん診ています。
超高齢化と医療技術の進化が相まって、家族に先に亡くなられたあとも一人で長く生きていくというケースが増えているように感じます。
誰もが一人で暮らさなければいけない状況に陥る可能性があり、他人事ではないのです。

しかし、私はそれを悪いことだと思っていません。「孤独な状態」と「孤独感」は別だと考えているのです。
人と接する時間が多くても孤独を感じている人もいますし、逆に独り暮らしで配偶者を失っても、孤独を感じないで生き生きとしている人もいます。
独居はいけない、一人住まいはさみしい、ということはないのです。孤独と感じる心の問題なのです。

とはいえ、どうやら日本人は孤独を感じやすい民族のようです。
というのも、日本人の8割は疎外感や不安を感じやすい遺伝子を持っていると言われています。
それは、アフリカから人類の祖先が長い旅をして日本にたどり着き、海を見たとき怖いから海のむこうには出ていかず、定住したのが日本人となったため、のようです。そのようにして、不安感を持ちやすい遺伝子を持ったのが日本人の祖先だとも言われています。

いま、日本の都会では他人とのつながりが稀薄になっていると言います。そこには、人と関わるのが苦手な日本人の特性が影響しているのかもしれません。
ただし、人との付き合いがうまくできないと、どうしても孤独に突き当たってしまいます。

孤独とどうつきあえばいいのでしょう

一人でいることが苦痛でもなんでもなく、楽しく過ごせるのであれば、孤独はむしろプラスに働きます。しかし、前述したように孤独を感じやすいのは日本人の特性ですから、それが健康や長生きに影響してきます。だからこそ、孤独というものとうまく付き合う方法を考える必要があります。

まず、自分の孤独感の原因を見つけてみてはどうでしょうか。孤独感を客観的に見るのです。その原因がわかれば解決策を見つけることができます。解決できるものだと認識できれば、ぐっと心は軽くなるはずです。

米シカゴ大学のルイス・ホークリー博士によれば、孤独は自然な感情であるから、受け入れ、自然に過ぎ去るものと考えることが大切だとしています。
具体的な行動として、人に会う、共感できる団体のボランティア活動、ガーデニング、ポジティブな日記を書くことなどを博士は勧めています。またSNSなどからは一時遠ざかるのもいいとしています。時にはもちろん心療内科などを受診することは大切でしょう。
友人、周囲の知り合いなどが助けてくれることもあります。他人からの支援を素直に受け入れることも重要でしょう。

これは私自身の経験から来る話ですが、医師も孤独なものです。
医師は患者さんといろいろ話をするので、孤独など感じる時間はないだろうと思うかもしれませんが、医師の友人たちを見ても、仕事ばかりやっていてオフのときは一人のことが多く、皆、孤独なのです。
それでも孤独をストレスに感じていなさそうな人が多いのは、医師という仕事にプレッシャーがあるため、孤独がある種の息抜きになっているのかもしれません。

いずれにしても、そうした孤独に慣れた身からアドバイスさせてもらうとすれば、孤独から脱出するには、何か自分から関わらないといけないことが多いように思えます。

しかし、それもなかなか難しいなら、いままでやっていなかったことをやってみてはどうでしょう。

・入ったことのないレストランへ行く
・読んだことのない作家の本を読む
・あまり交流のない友人にメールする

ほんの少し行動を変えることで、見えてくるものが違ってきます。そうすれば、孤独が消えるものだとわかってくるものです。
内側に向かう意識を外に向ける、それだけで違ってくるのです。

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