意外? 鹿児島の人は魚を食べない…生鮮魚介支出額は全国で下から3番目 サバとイワシは例外ですが

炭火で焼かれるキビナゴ。さっぱりして旨い

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屋久島を訪れたら食べたい首折れサバの刺し身。サッパリとして弾力のある歯ごたえが絶品だ

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 南北600キロと長く太平洋、東シナ海に面した鹿児島県は、多種多様な魚が水揚げされる。だが実は「鹿児島の人は魚を食べない」というのが、県内水産関係者の間では定説となっている。その根拠とされるのが総務省による毎年の家計調査。2月に発表された2022年の結果にも表れている。
 全国の県庁所在地と政令市を対象に、家計における支出を項目ごとに調べる。鹿児島市の生鮮魚介への支出額は、1世帯(2人以上)当たり年間3万1882円で、順位は下から3番目の50位だった。魚種などの項目別でも、調査対象の全16項目のうち、8項目は40位以下。中でもサンマは最下位、イカ、タコは下から2、3番目と低い。
 一方、突出して支出額が高い魚種もある。全国1位のサバ類と、8位とトップ10入りしたイワシ類だ。一体なぜなのか。鹿児島大学水産学部の大富潤教授(59)に尋ねると、「どちらも県民にとって、なじみ深い魚だ」と教えてくれた。
 まずはサバ。「首折れサバ」が有名な屋久島のほか枕崎や坊津など、県内ではゴマサバが古くから多く捕れてきた。マサバに比べて脂が少なく安価だが、年間を通して味が落ちない。弾力のある食感で県民に好まれてきたという。
 続いてイワシ。実はここには鹿児島を代表する魚が含まれる。キビナゴだ。店で購入し、家で手開きをして食べた経験のある県民は多いのではないか。
 ここまで説明して大富教授は声を落とした。「以前調査をしたが、消費者は魚を買うときにあまり産地を気にしていないようだ」。鹿児島市内のスーパーで魚売り場をのぞいてみると、国産とノルウェー産が隣り合って並んでいた。産地を確認せず、無意識に輸入物を手に取る人も多そうだ。
 県の漁船統計によると、県内で操業する漁船数は21年末時点で8186隻(4万3152トン)。近年は右肩下がりで、10年前の1万669隻(5万5847トン)から2割以上減っている。高齢化や魚価の低迷で水産漁業者は厳しい環境にさらされているのが実情だ。
 「輸入物も結構おいしいが」と前置きしつつ「ぜひ、県内の漁師さんたちを元気にするためにも、県産のゴマサバを食べてほしい」。自身も大の魚好きである大富教授は、そう結んだ。

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