日本酒の美味しい飲み方は? 基本のマナーや温度別のおいしい飲み方など【専門家監修】

「酔っ払いそう」「何を選んでいいかわからない」と敬遠されることもありがちな日本酒。この記事では「日本酒の美味しい飲み方」について、増田德兵衞商店の十四代目・増田德兵衞さんにお聞きしました。種類も多く、飲み方も実は色々な日本酒の楽しみ方を、マナーとともにチェック!

気心の知れた友人などとの会食で「何にする?」と問われるのが、最初の一杯。なぜか、約束事のように「先ずはビール」と、つい答えてしまいます。そうでない方もいらっしゃるでしょうが、「先ずは日本酒」とお答えになる方は、あまり見かけません。

それは、日本酒が私たちにとって“気軽に飲むお酒“ではなくなっているということなのでしょうか?

一方で、日本酒造組合中央会の発表によると、2021年度の日本酒輸出実績は金額(日本酒輸出総額 401.78億円)、数量ともに過去最高を記録したとされています。このことは、日本食が国際的に認められ普及したことで、日本酒を嗜む外国人が増加しつつあることを示しています。

ますます、外国人と接する機会が多くなっている昨今、日本人でありながら、日本文化について恥ずかしい思いをすることのないようにしておきたいものです。これからは、ワインの蘊蓄を語るように、日本酒の基礎知識も身につけておくのも良いのではないでしょうか?

そこで、日本酒のいろはについて、京都の老舗酒造、増田德兵衞商店の十四代目・増田德兵衞さんにお聞きしました。本記事では「日本酒の美味しい飲み方」について取り上げます。

日本酒

そもそも「日本酒」とは?

「日本酒」とは清酒の別称で、その名の通り日本在来のお酒のことです。外国起源の酒に対して使われています。そのため、庶民が外国のお酒を口にすることは稀であった明治以前は、「日本酒」という呼称は使われずに単に「酒」と呼ばれていました。ビールやウイスキー、ワインなどの外来酒の国産化が始まった明治以降に「日本酒」と呼ぶようになったのです。

「日本酒」とは、日本伝来の醸造法により、米と米麹(こめこうじ)とを主原料としたアルコール含有飲料になります。

日本酒

酒税法が定める、「日本酒」とは?

日本酒(清酒)は、酒税法では以下のように要件が定められています。

・アルコール分が二十二度未満のもの
・米、米麹及び水を原料として発酵させて、こしたもの
・米、米こうじ、水及び清酒かすその他政令で定める物品を原料として発酵させて、こしたもの(その原料中当該政令で定める物品の重量の合計が米<麹米を含む>の重量の50/100を超えないもののみ)
・清酒に清酒粕(かす)を加えて、こしたもの

日本酒を嗜む基本的なマナーとは?

気心の知れた仲間や家族と飲むときには、日本酒を飲むときのマナーは気にしなくていいかも知れません。楽しく飲むのが一番です。

ただし、ビジネスでの酒席で日本酒が出てきた際には、覚えておきたい基本的なマナーがあります。それぞれ紹介しましょう。

お酌の基本的なマナー

お酌とは、相手とのコミュニケーションを深めるもの。最初の一杯は、目下のものから目上のもの、もしくは、もてなす側からお客様にお酌をしましょう。お酌を受ける側は、相手から勧められてから、杯やグラスを持って受けます。

2杯目以降は、相手の杯が1/3ほどになったら、勧めてみましょう。ただし、手酌を好む人もいますので、いきなりお酌をするのはNG。「いかがですか?」と一声かけてから、注ぐのがいいですね。

なお、目上の方もしくはお客様が「手酌でやろう」と言うまでは、手酌は避けた方がベターです。

お酌をするときのマナー

お銚子の中央を右手で持ち、必ず左手を添えます。このとき、徳利の注ぎ口が杯にふれないように注意しましょう。音を立てないように、杯の8分目まで注ぎます。

お酌を受けるときのマナー

お酌を受けるときは必ず、杯を手に持ちます。ワイングラスはテーブルに置いたまま注いでもらいますが、日本酒は置き酌をしないので、気をつける必要があるポイントです。

杯は右手の親指、人差し指、中指で持ち、さらに底に左手を添えて持つと丁寧です。

日本酒

日本酒を飲むに当たって絶対に避けたいこと

ビジネスの酒席はもちろん、仲のいい友人たちとの集まりでも、酔って醜態を晒すのは避けたいですね。「飲み過ぎた!」と感じた時には、水やお茶、ジュースなどで水分を多く取りましょう。フルーツやスイーツを食べて、糖分を補給するのもいいですね。外気に当たるのも酔い覚ましになります。

「酔ってきた…」と感じたときの対処法として、頭の片隅に置いておいてください。

日本酒の美味しい飲み方

初心者でも楽しめる、日本酒の味わい方・楽しみ方を十四代目・増田德兵衞さんにお聞きしました。今日から日本酒を楽しむための参考にしてください。

1:それぞれの温度を楽しむ

日本酒は温度(5〜55度)を変えて楽しむことができるのが、魅力の一つです。それぞれの温度には、名前もついていますので、温度ごとに紹介します。

5℃ 雪冷え(ゆきびえ)
10℃ 花冷え(はなびえ)
15℃ 涼冷え(すずひえ)
30℃ 日向燗(ひなたかん)
35℃ 人肌燗(ひとはだかん)
40℃ ぬる燗
45℃ 上燗
50℃ あつ燗
55〜60℃ 飛びきり燗

よく「冷酒」「冷や(常温)」「ぬる燗」「熱燗(あつかん)」と言いますが、それぞれの温度は決められているのでしょうか? 増田さんにお聞きしました。

「冷酒」

「冷酒は、雪冷え(5℃)から涼冷え(15℃)までの冷やした日本酒のことを言います。夏に飲むと暑気払いになりますし、冷やすと日本酒の味わいがシャープになります。冷酒を楽しみたいなら以下の日本酒がおすすめです」

おすすめの銘柄
山形:出羽桜(でわざくら)純米大吟醸 雪女神 四割八分

増田さんの一言コメント「さらりとした飲み口です。後味が心地よくキレがいいので、冷酒に向いています」

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「冷や(常温)」

「日本酒の『冷や』とは常温のこと。20〜25℃程度の温度になります。口に含むとやや冷たい感じのする温度ですね。

長期熟成したものや純米酒などは、冷やでいただくと風味や旨味がより伝わってくるでしょう」

おすすめの銘柄
長野:真澄(ますみ)純米吟醸 辛口生一本

増田さんの一言コメント「ワカサギなど苦味のある魚をつまみに飲むと、相性抜群です。辛口で透明感のある味わいがあります」

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「ぬる燗」

「40℃前後に温めた日本酒を『ぬる燗』と言います。日本酒は温めるとまろやかな香りが立ち上ります。ですから、ぬる燗で楽しむなら香り高い日本酒がおすすめですね」

おすすめの銘柄
滋賀:七本槍(しちほんやり)純米大吟醸 渡船50 火入 

増田さんの一言コメント「一口飲んだ時の意外性に驚かされます。後味に、しみじみとした旨さが口に広がります」

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「熱燗」

「熱燗は、上燗(45℃)から飛びきり燗(55〜60℃)までの熱くした日本酒を指します。寒い冬の日には、体を温めるのにちょうどいいですね。ちびちび飲むのが似合います。熱くすると、風味や旨味が膨らみます」

おすすめの銘柄
京都:月桂冠 上撰

増田さんの一言コメント「熱燗の定番です。滑らかな味わいに杯が進むでしょう」

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2:アレンジをして楽しむ

日本酒といえば、ストレートで飲むことが一般的ですが、アレンジをして嗜む飲み方もできるそうです。アレンジ方法を増田さんにお聞きしました。

「焼酎などでは一般的かも知れませんが、日本酒もロックや水割り、お湯割り、ソーダ割りにして楽しむこともできます。

水割りやお湯割りにする場合は、日本酒8:水2の割合がいいでしょう。日本酒初心者の方は、水やお湯の割合を多くすると飲みやすいですよ。

日本酒をソーダで割る場合は、日本酒6:ソーダ4を目安とすると爽やかな味わいになります」

おすすめの銘柄
京都:月の桂 純米 中汲み にごり酒
増田さんの一言コメント「元祖スパークリングにごり酒に米の旨みを入れてリニューアルしたので、フルーティーな香りが口に広がります。色々なアレンジメントをして楽しんでいただきたいです」

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最後に

日本酒は種類も多く、飲み方も多様なため、「何を選べばいいのかわからない」と思われたり、「酔いが回るのが早そう」といった先入観から、今まで日本酒を嗜んだことがないという方も多いのではないでしょうか? 本記事を参考に、日本酒に親しんでいただけたら幸いです。

監修

増田德兵衞

京都・伏見にある老舗酒蔵「増田德兵衞商店」の14代目で、会長。創業三百余年(創業1675年)の歴史を持つ蔵元で、元祖「にごり酒」は高い評価を得ている。日本酒の蔵元が集まった、一般社団法人 刻(とき)SAKE協会の代表理事でもある。

構成・執筆/京都メディアライン

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