縄文時代の大集落跡、実は1000年古かった 鹿児島・上野原遺跡 年代再測定で1万年超前と判明

2022/05/25 07:30

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表示が6300年前から7300年前に修正されたアカホヤ層の展示=霧島市の上野原縄文の森

 霧島市の上野原遺跡(国指定史跡)の9500年前とされてきた集落跡の年代が、千年古い1万500年前だったことが、近年の研究で明らかになった。年代測定法の進展を踏まえ、中央大学と県埋蔵文化財センターが遺物を改めて測定した。集落跡からはこれまでに52軒の住居跡が出土しており、国内で1万年超前の大規模集落遺跡はほとんど例がない。遺構や遺物を保存・展示する上野原縄文の森は来年度に展示を改装し、年代を修正する。
 遺跡の年代は、木炭などの放射性炭素(C14)の残存量で測る。近年、加速器質量分析装置を使うことで、精度が大幅に高まった。測定値と実際の年代のずれを補正する手法も開発され、より正確な年代が測れるようになった。このため、全国の縄文時代の遺跡で、年代の見直しが進んでいる。
 上野原縄文の森の堂込秀人園長(64)によると、2020年までに中央大と埋文センターのチームが新方法で測定し直した結果、9500年前の集落跡の遺物は1万700~1万400年前のものと分かった。
 また完全な形で出土した「双子壺(つぼ)」で知られる、7500年前のものとされた遺物群は、8800~8550年前と判明した。
 さらに、南九州の縄文人の生活に大きな影響を与えた鬼界カルデラの大噴火の年代も千年さかのぼった。噴出物でできたアカホヤ層は6300年前とされていたが7300年前と分かった。展示館の地層の説明は書き換えたものの、今のままでは「遺跡の年代と矛盾が生まれる」(堂込園長)ことになったという。
 リニューアル工事は来年度の後半を予定。約2カ月休館し、展示パネルや年表、説明文などを改めるほか、館内のレイアウトも大幅に変更する。県考古学会長も務める堂込園長は「1万年以上前から人々が定住して集落をつくっていた例は南九州以外で発見されておらず、上野原遺跡の学術的な価値は一層高まった。展示を一新し、全国に先駆けて花開いた縄文文化を発信していきたい」と話している。

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