芋焼酎が「減産」の憂き目で晩酌ピンチ? 鹿児島のサツマイモを襲う伝染病の正体

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芋焼酎の主原料「コガネセンガン」/(C)日刊ゲンダイ拡大する

 晩酌で人気の芋焼酎がピンチだ。
 霧島酒造(宮崎)は、2月中の出荷をもって、「黒霧島」など芋焼酎の一部商品の販売を休止する。昨年は霧島酒造のほかにも、「さつま白波」で知られる薩摩酒造(鹿児島)といった酒造会社で、8~10%の値上げを行っている。
 芋焼酎の値上げや販売停止は、昨今の原油高騰による燃料費、輸送費などの上昇だけが理由ではないという。芋焼酎の主原料であるサツマイモの生産量日本一を誇る鹿児島県は近年、サツマイモを襲う病気に悩まされている。
「4年ほど前から確認されている『サツマイモ基腐病』が流行。この3年で収穫量は3割ほど減少しています」(地元農協関係者)
 基腐病はサツマイモの茎葉や塊根の腐敗などを引き起こす伝染病で、芋焼酎の主力品種「コガネセンガン」は特に耐性が弱いという。基腐病は2021年産で74.5%と高い発生率を記録した。
「発生率は、1株でも葉の黄化などが見られた『ほ場』(農作業場)の面積を発生面積としており、74%という数字はそれだけのほ場で発生したものではありません。基腐病は水で胞子が拡散される性質のため、2021年産に関しては8月の長雨により発生が広がりました」(鹿児島県農政部農産園芸課担当者)

 ただ、この状況を手をこまねいて見ているわけではないという。被害拡大防止のため、鹿児島県や農家では、ほ場に基腐病菌を「持ち込まない(健全苗の確保)」「増やさない(排水対策、異常株の抜き取り等)」「残さない(収穫残渣の持ち出し等)」の3つの対策のほか、さまざまな手を打っているという。そのおかげか、22年産は35%まで発生率を抑えられている。
 芋焼酎以外の加工品への影響はどうなのか。
「基腐病の影響で、お菓子などの原料が不足して困っているという話は今のところありません」(前出の担当者)
 今では抵抗性のある新品種の開発も進んでいるが、当面、基腐病の影響は予断を許さないところだ。芋焼酎が遠い存在にならないよう、何とか食い止めてもらいたい。

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