軍用地主に「金持ち」「裏切り者」 いがみ合う沖縄県民 それでも国は金をつぎ込む 「負担軽減」の言葉はかすむ

上空を米軍輸送機オスプレイが日常的に飛び交う市街地=6月29日、沖縄県宜野湾市

 上空を米軍輸送機オスプレイが日常的に飛び交う市街地=6月29日、沖縄県宜野湾市

 鹿児島で自衛隊の新基地建設や部隊増強が続いている。海洋進出を強める中国を念頭に米軍との一体化も進む。基地があることは地方の暮らしにどんな影響を及ぼすか。鹿児島との関わりが深まる沖縄と山口県岩国市周辺の現場を訪ねた。(連載「基地と暮らして 安保激変@沖縄、岩国」②より)
 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)から南西へ約5キロ。「通り道」として米軍機が飛び交う浦添市の小川義二さん(69)=鹿児島県瀬戸内町出身=は「基地にはみんな怒ってる。ただ、問題が長期化し、複雑になりすぎている」と話す。
 沖縄の米軍基地の約4割は民有地を強制的に接収して造られた。戦後、日本政府が地主に借地料を支払っている。小川さんは約20年前、知人を介して普天間の軍用地主になった。手にするのは年間数十万円ほど。宜野湾市によると普天間の地主は約4200人。金持ちとの偏見があるが、高収入者はごく少数だ。
 基地反対の集会に参加していた小川さんは、反対派から「裏切り者」と言われたこともある。「売って基地がなくなるなら、すぐにも売りたいが…」とこぼす。
 地主らの集まりでは「利権」のような話を聞くし、「生活の足しに」とほそぼそと運用する人もいる。「ウチナーンチュ(県民)同士をいがみ合わせて。国は無視してお金をつぎ込んで。負担をたらい回しにしても、問題の根が深くなるだけだ」
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 普天間飛行場の名護市辺野古移設のほか、浦添市でも那覇軍港の移設が4月に合意された。それぞれ完成に12~15年以上はかかるとされ、膨大な予算が見込まれる。基地負担の軽減が名目だが、国がかつてない防衛力強化を目指す中、その言葉はかすむ。
 「国際情勢が動けば、沖縄はすぐに連動する」。普天間飛行場で物資関連の仕事に就く男性(58)は言う。公務員並みの給与があり、湾岸戦争などでは「特需」もあった。それでも、返還された区域が商業施設などで発展しているのを見て「基地はなくなった方が街のため」と言い切る。
 普天間は「殴り込み部隊」とも言われる海兵隊の拠点。粗暴な振る舞いをする一部の米兵も目立つという。「国の安全のために、街の静かな生活が犠牲になっているのが現実さ」とため息をつく。
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 鹿児島県奄美市出身の金城美香さん(62)は約20年前、宜野湾市に引っ越した。子どもが通う運動施設の近場を優先した物件は、普天間飛行場の目の前。「米軍機の低空飛行も音も、想像を超えていた」
 2010年に、祖父母がいる徳之島への移設案が浮上した際は「古里が変わる」と不安が募った。結局頓挫したが、普天間は固定化状態に。あまりの騒音に再び転居したものの、そこも嘉手納基地(嘉手納町など)が広がっていた。息子が通っていた小学校には重さ約8キロの米軍ヘリコプターの窓が落ちた。
 鹿児島から来る友人が米軍に驚くたび、「慣らされている自分」に気付く。基地問題は複雑すぎて話しにくい。でも、不条理は知ってほしいと願う。「ずっと置き去りって本当に異常ですよ」

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