鹿児島県内15市町村が「消滅可能性」、30年間で若年女性が半減 「自立持続可能性」は1自治体 人口戦略会議が公表

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 人口戦略会議の報告書によると、鹿児島県内の全43市町村のうち、2050年までの30年間で若年女性の人口が50%以上減ると推計された「消滅可能性自治体」はさつま町など15市町村だった。市町村数に占める消滅可能性の割合は34.9%。
 宇検村は県内で唯一、100年後も若年女性が多く残る「自立持続可能性自治体」となった。県内に人口流入が多いものの出生率が低い「ブラックホール型自治体」はなく、いずれにも該当しない「その他」は鹿児島市など27市町村だった。
 消滅可能性のうち、さつま町は10年前の前回分析と比べ若年女性人口の減少率が悪化。14市町村は改善した。
 報告書は消滅可能性の15市町村とも「人口流出が激しく社会減対策が極めて必要」とし、枕崎、垂水、さつまの3市町は「出生率向上も課題」だと指摘した。
 今回、消滅可能性から脱却したのは、宇検、与論、大崎など15市町村。奄美群島7市町村、種子島2町など離島が目立った。
 消滅可能性自治体は全国的に減少傾向にあるものの、主な要因は外国人住民の増加で「少子化基調は変わっていない」と報告書は指摘。県総合政策課は「結果について、まだ分析できていない。人口戦略会議にも確認したい」としている。

鹿児島県内15市町村「消滅可能性」前回より半減 湧水町などで顕著

写真・図版

桜島に隣接する垂水市。カンパチやブリの養殖が盛んで、沖合には数多くの漁船が浮かぶ=2024年1月28日、鹿児島県垂水市海潟、加治隼人撮影

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宇検村にある奄美大島最高峰の湯湾岳(奥)。海沿いに集落が広がる=2021年7月15日、鹿児島県宇検村、朝日新聞社機から、堀英治撮影

 若い世代の女性の人口動態や出生率に着目し、全市区町村の「持続可能性」を分析した人口戦略会議のリポートが24日、公表された。2050年までの30年間で20~39歳の女性が半数以上減る見込みの「消滅可能性自治体」には、鹿児島県内でも15市町村が該当した。

 リポートは、国立社会保障・人口問題研究所将来推計人口を基に試算。消滅可能性自治体は前回(14年)、県内に30市町村あるとされたが半減した。いちき串木野、南さつま、奄美、伊佐の4市や大崎町のほか、主に離島の市町村が消滅可能性自治体から外れた。

 若年女性の人口減少率が県内最大だったのは、湧水町の64.5%。南大隅町の63.8%、錦江町の63.1%が次いで多かった。両町はそれぞれ高齢化率が県内1位と2位で、過疎化の進行が著しい。

 全19市のうち6市でも、消滅可能性が指摘された。なかでも垂水市の若年女性の人口減少率は62.2%で、市としては最大となった。総人口も1万3819人から半減し、6629人になるとされた。

 垂水市によると、市内には産婦人科がない。市は鹿児島市内の病院と連携し、妊婦健診や産後の診療が可能なサテライトクリニックを今年5月に開設する予定だが、分娩(ぶんべん)は市外でするしかないという。

 市の担当者は「子育てしやすい環境づくりや移住定住対策には引き続き取り組む」としつつ、「日本全体が人口減少する時代。減るスピードをいかに緩やかにできるかを考えていきたい」と話した。

 一方、今回のリポートでは、自治体間の人口移動をないものと仮定した将来人口も「封鎖人口」として推計。この手法を用いることで、周辺からの人口流入で成り立つ自治体の問題点も浮かびあがらせた。県内では鹿児島市が該当し、出生率の低さによる人口の減り方が顕著だった。

 また、封鎖人口の観点からみても若年女性の人口減少率が20%未満にとどまる地域は「自立持続可能性自治体」に分類され、県内では宇検村のみが当てはまった。

 村は小中学校で都市部からの「山村留学生」の受け入れに力を入れており、移住してきた保護者が、子供の卒業後も住み続ける例が複数あり、「地域おこし協力隊も含め、移住者の定着率が高い傾向がある」。

 前回は消滅可能性自治体だっただけに、村の担当者は「ありがたい結果で、引き続き交流事業などを進めていきたい」と話す。(加治隼人)

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