「シラス」混じりの土の堤防、崩れにくく改良 鹿児島の川で工事進む

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ドレーン工法で補強された堤防=2023年5月31日、鹿児島県肝付町

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 鹿児島特有のシラス(火山噴出物)混じりの土砂で造られた弱い堤防を守れ。そんな補強工事が大隅半島を流れる1級河川・肝属川で進んでいる。

火砕流や火山灰に由来するシラスは、一度水を含むと抜けにくく、堤防が壊れる要因の一つ。排水性を良くする工法で、堤防を崩れにくくしていく。

 九州南部が梅雨入りした5月末。本格的な雨期を前に、肝付町の高良橋付近の肝属川では数台の重機が急ピッチで堤防道路の整地作業をしていた。

 通常の堤防のように見えるが、「あの下に石材が埋まっています」と国土交通省大隅河川国道事務所の伊東理博・流域治水課長。現場では、昨年秋から「ドレーン工法」による強化を行ってきた。

 ドレーン工法は堤防の排水性をよくするため一部に石材を入れる工事の名称。川に面した側とは反対側の堤防下の土を削り、石材を埋め込む。これで堤防にしみこんだ水が抜けやすくなり、堤防が壊れにくくなるという。

姶良カルデラができた巨大噴火の影響で、鹿児島県本土にはシラス台地が広がる。なかでも大隅半島の肝属川流域は7割がシラスといわれる。鹿屋市を流れて志布志湾に注ぐ流路延長34キロの肝属川では、昔から多くの堤防がシラスを使って造られてきた。

 事務所の説明によると、一般的な土でできた堤防は水が抜けやすく削られにくい。これに対し、シラス混じりの土砂で造った堤防は排水性が悪いうえ、流水に弱く、豪雨時には崩れて滑り落ちるという難点があった。

 このため、肝属川流域では2010年度からドレーン工法を採用している。堤防を強くするのに「必要最小限で、最大限の効果を出すための工法」(伊東課長)だという。

 肝属川では今年度も引き続き、肝付町下伊倉地区で堤防を強化する予定。流域全体で対策が終わったのは5割ほどだといい、伊東課長は「残りの半分も地道に進めていきたい」と話す。

 同じくシラス堤防が多い川内川流域(鹿児島県など)でも少なくとも約30カ所は強化が必要だと分析しており、ドレーン工法も使って対策を進めている。(仙崎信一)

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