鹿児島県の新体育館問題はなぜ複雑になったのか? 市スタジアム構想急浮上、渋滞・景観への懸念…論点整理してみた

県の新総合体育館を整備することが決まったドルフィンポート跡地=鹿児島市本港新町

 県の新総合体育館を整備することが決まったドルフィンポート跡地=鹿児島市本港新町

鹿児島市と県のドルフィンポート跡地整備計画の違いを図で比較する

 鹿児島市と県のドルフィンポート跡地整備計画の違いを図で比較する

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 鹿児島県が新総合体育館の整備地に、鹿児島港本港区のドルフィンポート(DP)跡地=鹿児島市本港新町=を選んでから約8カ月がたった。県民の賛否が割れ、県議会で議論が繰り広げられてきた。ここに来て、計画の変更を迫るような市のサッカー等スタジアム構想が急浮上し、問題は一層複雑になった。体育館計画の論点と、スタジアム構想の影響を整理する。
 新体育館を求める意見の多くは、現在の県体育館に対する不満の裏返しと言える。「大規模なスポーツ大会を開催するには狭い」「築60年以上がたち、老朽化している」。13年前に建て替え議論が本格化したものの、整備地が二転三転し計画が進まないことへのいら立ちも垣間見える。
 整備地をDP跡地とする基本構想は、検討委員会で機能や規模といった観点から検討を重ね、県が3月末に策定した。過去に反発を招いた「場所ありき」の議論にならないよう、腐心した跡がうかがえる。
 DP跡地は桜島を望む鹿児島の一等地だ。近くに離島航路や桜島フェリーの船着き場があり、県全域からアクセスが良好。新体育館の目玉、県内最大の約8000席を想定するメインアリーナは大規模なコンサートも見込む。利用者の天文館地区への回遊が経済効果を生むと期待する向きもある。
 一方、眺望を損ね、渋滞を生む。津波が心配。DP跡地を含む本港区の街づくりの方向性が見えない-といった反対意見は根強い。県が公設公営の場合205億〜245億円と見込む巨額の事業費や、8900万円の赤字と推計する年間収支を踏まえ、採算性の観点から懸念を示す人もいる。
 県議会は9月定例会で、DP跡地への建設に反対する陳情を不採択とした。県方針を容認した格好で、計画は加速するかに見えた。だが、市のスタジアム構想の詳細が明らかになり、体育館計画の変更を求める問題として注目を集めた。
 スタジアムを現在の3候補地の中からDP跡地に整備する場合、体育館の向きを90度回転させる必要がある。不可避となる港湾計画の大幅な見直しには10年程度かかるとされ、体育館完成が遅れる可能性がある。DP跡地に二つの大きな施設が並ぶとなると景観が悪化し、反対運動が起きるとみる関係者もいる。
 29日に開会する県議会定例会と、県が年内にも設ける本港区の街づくりに関する検討委員会で、体育館計画とスタジアム構想についてどのような議論が交わされるのか。多くの県民は注視している。

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