2年前移住の女性(28)が町議選トップ当選 町政初の女性議員誕生 ゆかりもない土地で立候補のワケは? 鹿児島県大崎町

image
imageimageimage
image
image

23日に行われた大崎町議選では、町で初めてとなる女性議員が誕生しました。トップ当選した藤田香澄さんです。
縁もゆかりもない土地に2年前に移住してきた20代の若者は、なぜ立候補したのか?「若い世代や女性の声など多様な意見を反映させたい」との思いからでした。
趣味のフラダンスを踊るのは、藤田香澄さん、28歳です。
(藤田香澄さん)「手を伸ばすと疲れが手先から飛んでいく。開放されてリラックスできる時間です」
この前日まで、慌ただしい毎日を送っていました。
定数12に対し、15人が争った大崎町議選。選挙初挑戦で、最多の957票を獲得し、次点に300票以上の大差でトップ当選しました。
(藤田香澄さん)「私なりによそ者の視点で、今までにない視点で風を吹かしていきたい」
2年前、神奈川県の鎌倉から鹿児島県の大崎町に移住。ごみのリサイクル率日本一の大崎町で、循環型社会の実現に取り組むまちづくり会社への就職がきっかけでした。
父親の仕事で、12歳まで気候変動による海面上昇やごみ問題が深刻な南太平洋のツバルやフィジーで暮らした藤田さん。高校生の時、ツバルで現地調査したほか、東京大学大学院では地方に出向き、まちづくりの課題にも向き合いました。
(大崎町出身の同僚 遠矢将さん)「アグレッシブな人。たぶん僕より地元の友達が多い。僕が人を紹介されるくらい」
ごみリサイクル率で評価が高い大崎町ですが、人口減少が進む町のこれからに、危機感を抱くようになったといいます。
(藤田香澄さん)「人と人とのつながりがあっての循環型社会。若い世代と高齢の人、若い人同士がまだまだ(関係が)希薄という感覚があった。住民との対話を通じてまちを良くしてみたいと思い、立候補した」
(後援会長のあいさつ)「大崎町議会議員候補、藤田香澄、かすみんが(演説を)行います」
(藤田香澄さん)「女性や若者の声を聞かずして、大崎町が持続的に発展していくことはありえないと感じた。まずは子どもや女性の声をしっかりと反映させていく場作りをしていきたい」
「政策本位で選んでほしい」との思いから「個人演説会」も開きました。
(大崎町民)「すごく期待している。女性は1人でも2人でも増やした方がいい。男目線と女目線は全然違うから」
(大崎町民)「町の活性化のために頑張ってくれるのではないか。若い力を期待している」
こだわったのは、若者でも積極的に立候補できるよう「お金をかけない」選挙戦です。選挙カーの上に看板は取り付けず、側面にシールを貼るだけ。スピーカーは知り合いの志布志市議から借りました。
(スピーカー貸してくれた志布志市議)「(女性議員の)ライングループを作った」
(藤田香澄さん)「看板立てたかとか、後援会はどうしたかとか」「すごい心強い」
藤田さんの一番の相談相手は、移住前から交際を続ける宮地祐義さん(27)です。大崎町で一緒に暮らす中で、町政に若い世代や女性の声など、より多様な意見を反映したいとの思いを共有してきました。
(宮地祐義さん)「基本、僕が振り回されている立場でございます」
選挙では思い通りにはいかないこともありました。「時代に合わない」として名前を連呼するのは避ける予定でしたが、人通りの少ない大崎町では必要だったといいます。
(藤田香澄さん)「人が歩いていないから、連呼することによって人が出てくる。特に名前が知られていなかったので。身に染みて感じた」
選挙戦では、自宅のある牧之内集落の人たちが全面的に支援。43世帯中、半数以上の世帯主が高齢者です。
(後援会 新宮誠さん・61歳)「田んぼ作っているが、(藤田さんが)田植えや稲刈りを経験して、若い女性にしては何でも積極的にどんどん飛び込んでくる」「この子すごいなと」
「大崎町はいま変わろうとしている。その最初の一歩を私が切り開いていきたい」
(藤田香澄さん)「毎日集落の人たちが朝晩で出迎え、送り出してくれて、非常に楽しくできた。やり切った感じはある」
そして迎えた投開票日。
(藤田さんの母 典子さん・64歳)「香澄はまだ28歳の娘。彼女の2倍も3倍も人生経験を積んだ方々に、違う意見を提案するのはすごく勇気がいること。女性のみなさん、香澄が困っていたらぜひ助けてあげてください。力になってあげてください」
藤田さんの当選は、同世代が政治や議会を身近に感じるきっかけになりました。
(フラダンス仲間)「議員はすごい遠いイメージだったが、すごく身近に感じて、こういう町にしたいとかを議員に伝えればいいと気づかされました」
(大崎町出身の同僚 遠矢将さん)「若い人たちの声が聞かれる機会がない場所だった。それが変わり始めた兆しを作ってくれたと感動した」
今回の投票率は61.72%で前回(61.35%)とほぼ同じ。選挙期間中、若者に出会う機会は少なく、課題も残りました。
(藤田香澄さん)「なかなか若い世代の声を聞けなかった。地道だが、小さな座談会や勉強会で、日々の暮らしの中で気になっていることや、子どものことで不安に思っていることを共有する場面を作っていくことからなのかなと思っている」
「女性や若者をまちづくりに巻き込んでいきたい」という藤田さんの挑戦は始まったばかりです。

コメント