「スマホ買うなら12月26日まで!」とショップが声高に叫ぶワケ 27日スタートの“新しい割引規制”とは?房野麻子の「モバイル新時代」

 今月に入って、家電量販店の携帯電話売り場で「法令改正まであと○日」「12月26日までがチャンス!」などのポスターをよく見かけるようになった。


ケータイショップなどで目にするようになった「スマホを買うなら12月26日まで」という看板

 これは、総務省が11月に発表した「日々の生活をより豊かにするためのモバイル市場競争促進プラン」や、競争ルールの検証に関するワーキンググループが公表した「競争ルールの検証に関する報告書2023」を受けて、スマートフォンの割引上限規制が12月27日から改正されるからだ。

新しい規制の中身とは?

 これまで通信プランとセットで購入する際、端末の割引額は一律2万2000円が上限とされていたが、それを原則4万4000円まで引き上げる。ただし、端末価格が4万4000円から8万8000円までの場合は価格の50%、4万4000円以下の場合は2万2000円が割引の上限になる。

 割引額が上がったのだから、それだけ端末をお得に購入できるようになるかといえば、そう単純ではない。セット割とは別に、回線契約なしでもスマートフォンの単体購入で適用される割引、いわゆる「白ロム割」が、27日からは規制対象になるからだ。つまり、回線契約とセットで販売する端末は、すべての割引を含めて上限が4万4000円となる。


割引上限規制が27日から改正され、画面右下のように「白ロム割」も規制される。

 「1円スマホ」など、これまで安価に端末を購入できたのは、端末の単体販売でも割り引ける白ロム割があったから。一方で、大幅な割引を狙った「転売ヤー」が急増するなど、問題も抱えていた。今回の法令改正では、この白ロム割も割引上限規制の範囲に含め、4万4000円以上の端末割引をできないようにした形だ。割引率にも上限があるため、結果的に「1円端末」はほぼ不可能になる。そこで、家電量販店はお得にスマホを買うなら「12月26までに!」と叫んでいるわけだ。

 ただ、多くのユーザーはスマホを分割払いで購入しており、端末そのものの価格よりも毎月払う携帯電話料金で高い/安いを判断している人が多いように思う。端末を割賦で支払い、24カ月後などに端末を返却することで実質負担金を抑える端末購入補助プログラムを利用して端末を購入している人がほとんどだろう。

 この購入補助プログラムだが、最近は割賦の支払い額を前半は安く、後半は高くして実質負担額をさらに抑える「もっとお得な」購入補助プログラムが適用されている端末がある。支払い額が高くなる前に忘れずに端末をキャリアに返却してしまえば、ユーザーが払う金額は非常に安く済む。

 しかし、この方法も27日以降は規制される可能性が高い。各社が提供している端末購入補助プログラムは回線契約がない人でも利用できる。つまり白ロム割と同じ扱いだ。改正後は白ロム割も制限されるので、よりお得な購入補助プログラムは提供されなくなる可能性が高い。

 その意味でも、「端末をお得に購入するなら12月26日まで」は確かなようだ。ただ、これまでさまざまな規制が行われながらも、販売店は法やガイドラインの穴を見つけて割引する方法を編み出してきた。今回もおそらくしばらくの間、派手な割引はなくなりそうだが、そのうちどこかで新たな割引方法が見つけられそうな気が筆者はしている。

国は中古スマホの流通促進 でもその中古はどこから来るの?

 総務省の「日々の生活をより豊かにするためのモバイル市場競争促進プラン」では、この割引上限規制のほかに、不適正な営業を行っていると判断された販売代理店に対する「MNOによる代理店の指導強化」「通信・端末分離規制の基準値の引き上げ」も年内に省令を改正するとしている。

総務省の「日々の生活をより豊かにするためのモバイル市場競争促進プラン」概要

 このうち、通信・端末分離規制の基準値の引き上げというのは、規制対象となる独立系MVNOのシェアを、0.7%から4%に引き上げることだ。従来はIIJmioを展開するインターネットイニシアティブ(IIJ)とmineoを展開するオプテージが、MNOと同じ通信と端末の分離規制、つまり割引上限の規制や継続利用割引規制などの対象事業者となっていた。しかし、法改正で規制対象はシェアが4%以上の事業者となったため、IIJとオプテージは規制対象から外れることになった。

 IIJやオプテージはサービス内容に定評のあるMVNOで、端末ラインアップも充実している。規制対象から外れたことで、今後、大胆な端末割引を行う可能性もある。お得にスマホを買いたい人はIIJmioやmineoに注目するといいかもしれない。

 なお、競争促進プランで物議を醸したのが、端末流通市場の活性化のために取り組む「中古端末の安心・安全な流通の促進」だ。「国が中古端末を推奨するのか?」「OSアップデートされない中古端末を使えというのか」といった違和感や疑問を持った人も多かったようだ。

 端末割引の上限を4万4000円まで引き上げることで、端末メーカーやキャリアに多少配慮した形になっているが、前述の通り、端末が買いやすくなるとは必ずしもいえない。

 12月27日以降は、それまでの反動で新品端末の買い控えが起こる可能性もある。新品端末が買われなければ中古市場に流れる端末も減っていく。端末市場の活性化を促進するなら、新品端末の流通促進に取り組むことも重要だ。今回の割引上限規制の改正によって、新品端末の価格や流通がどう変わっていくのか見守りたい。

 一方、スマホの機能進化が落ち着き、端末寿命が長くなった現在、中古端末を選ぶ人が増加しているのは確かだ。そのため、ユーザーが安心して中古スマホを使える環境を整備することは理にかなっている。

 現在でも、外観からは分からないバッテリー性能を明示している中古端末事業者は多いが、今後はOSアップデート対象から外れた端末を分かるようにする、今後対応が予定される非常時の事業者間ローミングに対応している端末かどうかを分かるようにする、なども含めて中古端末事業者は安全安心に関するさまざまな取り組みが必要になるだろう。

 22日の競争ルールの検証に関するWGでは、中古端末事業者からなる団体、リユース・モバイル・ジャパンが、割賦の支払いが滞った端末に対してキャリアが端末を利用できなくする「ネットワーク利用制限」についての問題点を指摘していた。これは大きな問題だ。こちらの議論も注目していきたい。

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