「固定資産税が高い」と思ったことはありませんか?…多くの人が「税金で損」をしている「地方行政のヤバすぎる実態」

不動産を所有していれば、経年変化による修正・補修工事などの維持管理費が必要になる。とくにマイホームとして中古住宅を購入する場合には、築年数や建物の状態を正確に把握してメンテナンス費用がいつ、どのくらいの予算で必要かを知っておく必要がある。

所得にたいする返済の割合、つまり返済負担率が適切であっても支払いに困窮することがある理由の一つに、このようなランニングコストを念頭に入れず借り入れしたことが原因となる場合も多い。

把握しておかなければならないコストには、メンテナンス費用以外にも「固定資産税」があることも忘れてはいけない。

固定資産税の仕組みと実情

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固定資産税は毎年1月1日時点の不動産所有者にたいし賦課される税金だ。請求額に不満があっても支払いを免れることはできない。固定資産税は当該不動産の所在地を管轄している地方行政が、課税台帳に登録された評価額にたいして標準税率1.7%、都市計画税は0.3%を乗じる形で土地・建物それぞれに課税される。

建物の築年数などにより軽減措置もあるが、基本として評価額が高ければそれだけ固定資産税も上がる。

一般的に固定資産評価額は、実際に売買されている実勢価格の7割程度が目安とされているが、実態はその限りではない。あきらかに実勢価格よりも高い評価額がまかり通っているケースが存在しているのだ。

納税は国民の義務だから負担するのも当然ではあるが、それは正しく評価されていればの話だ。前述したように、実勢価格と比較してあまりにも高額である場合は話が別だ。固定資産税評価は3年に一度の割合で評価替えが行われており、そのタイミングで固定資産税台帳に記載された評価に不満がある場合、その旨を申し出ることができる。

市井の不満を受け入れる素晴らしい制度のように思われるかもしれないが、実際にはほとんど利用されていない。

不満を申し出ることができること自体知らない方もおられるだろうが、根本的な問題はそこではない。「申立てるだけ無駄」との印象があまりにも根強く、実際に申出ても認容される可能性が極めて低いのだ。

それだけではない。建物については、最初に行われる新築時の評価がそれ以降にも影響を与え続けるのだが、重要である最初の評価を経験も知識もない素人同然の担当者が、マニュアル頼りに行っているケースがあることも固定資産税評価の問題点としてあげられるのである。

不服申立の認容率はわずか数パーセント

実際に不満を申し立てても認容されるのはわずか数件だ。東京都が公開している固定資産税評価の不服申し出件数を見てみよう。


図_都庁総合ホームページ東京都主税局公開情報より

令和3年度は土地・建物合計で139件、令和4年度に至っては23件である。

ちなみに東京都都市整備局が公開している2021年土地関係資料集によれば、土地所有者数は個人で2,124,008人、法人133,929の合計2,257,937となっている。たとえば令和3年に不服を申し立てたのは所有者全体のたった0.000066%である。

固定資産税は住民税と同じ市町村基幹税の一つで、平均すれば市町村税の約4割を安定的に徴収できる重要な財源だ。人口が流出しても市区町村が最低限必要な財源を確保できるのは、固定資産税の功績によるところが大きい。

税金を少しでも安くしたい所有者にたいし、少しでも多く徴収したいのが市区町村の本音である。そのため税収を下げる固定資産税評価の不服申立にたいしては、全精力をあげて阻止したい(評価ミスがあった場合、それを認めたくないという心理もあるのだろう)。

だが徴税には公平性の原理があり、広く民意を反映しそれを実現しなければならないという建前もある。そこで前述した固定資産税評価の不服申し立て制度が存在しているのだが……。

さらに「認容率」に注目すると…

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東京都の固定資産評価は、解説するまでもなく国内最高水準である。それでは皆、納税通知書を見て納得しているのだろうか?

少なくても筆者の知人は口をそろえて「高すぎる」と嘆いている。

適正に評価されているのなら、納税はやむを得ない。だが、評価自体に問題がある場合はその限りではない。

そこで認容率に注目して欲しい。

139件の申立にたいしわずか4.3%しか認容されていない。だが、東京都は認容率が高いのだ。すべての市区町村でこのような情報が公開されている訳ではないが、公開されているものを調査しても0もしくは2~3件がせいぜいなのだ。具体的な根拠もなく申し立てる方がいないと仮定すれば、なぜこれほど低いのだろうか…?

高すぎる固定資産税の請求額に不満を持つ人がいるが、不満を持っていても支払わないといけない。評価額に納得できない人のために不服を申し立てる制度があるのだが、実際に申し出る人はほんのわずかだ。また実際に申し出たとしても認容された実績はわずかたったの4%。なぜこんなにも不服を申し出る件数が少ないのか、認容されないのか。そもそも固定資産税の請求額にこんなにも多くの人が不満を持つのか。そこには地方行政が抱える問題がある。

後編記事『その評価額、高く見積もられているかも…?固定資産税をまともに「評価できない」国の「深すぎる闇」』では、固定資産税を評価する地方行政の実態と問題点を暴いていく。


奥林 洋樹
不動産エージェント、宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー

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