「幻の特攻基地」から出撃した特攻隊の物語 散華した201人 家族への手紙、遺書 手書きの桜の挿絵添え 万世祈念館

発刊した「ものがたり」と小屋敷茂さん=南さつま市加世田高橋

 発刊した「ものがたり」と小屋敷茂さん=南さつま市加世田高橋

小屋敷茂さんが描いた挿絵の原画=南さつま市加世田高橋

 小屋敷茂さんが描いた挿絵の原画=南さつま市加世田高橋

 鹿児島県南さつま市の万世特攻慰霊碑奉賛会は戦時中、旧陸軍万世飛行場から出撃した特攻隊の物語「万世特攻平和祈念館ものがたり-よろずよに」を発刊した。隊員の生きざまや逸話を若者が分かりやすいように手書きの挿絵を添えて伝え、「平和の貴さを感じて」と願う。
 万世飛行場は、終戦まで4カ月しか使用されず、「幻の特攻基地」と飛ばれた。「ものがたり」は1945年4~7月、散華した201人を中心とした物語。隊員が家族に宛てた遺書や書簡、関連の書籍を同館の小屋敷茂さん(74)が調べてまとめた。A4判183ページ。第一部で出撃と散華の日を時系列で紹介し、第二部は判明している限りの物語で構成した。
 短く散った命を散りゆく桜花に重ね、散華した隊員の物語には必ず桜の挿絵を挿入した。出撃前に父母にあいさつするため故郷の方角に体を直立して最敬礼する隊員、勇ましく滑空する特攻機の挿絵からは、生への未練を断ち切ろうとする強い覚悟がうかがえる。
 息子が飛び立った時、見送る地上の人影が目につくよう機体に向かい傘を差す母の姿もある。最期の別れに兵舎を訪ねた母に、息子は「死地へ赴く決意に迷いが生じてはいけない」と面会を拒否。営門前で泣き崩れる母の挿絵は涙を誘う。
 「イラストがあればイメージできると思って色鉛筆を走らせたが、悲しい場面を想像し涙なしに描けなかった」と小屋敷さん。「一人一人物語がある。戦争が遠くなった世代に幸せな時代を生きるありがたさをかみしめてもらえれば」と話した。出撃が始まった4月6日から同館で販売する。税込み2000円。

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