「1日2リットルの水」の、頻尿・尿漏れに対する影響は?高齢者の場合を考える

頻尿・尿漏れの原因はさまざまですが、生活習慣が大きくかかわっていることも知られています。その頻尿は、水分のとり方が原因なのかもしれません。生活習慣を少しあらためるだけで、尿トラブルが劇的に改善することもあるといいます。鍼メディカルうちだ院長の内田輝和先生に教えていただきましょう。image

水分のとりすぎが頻尿の原因になっていることも

頻尿のおもなタイプとして、緊張や不安によるストレスが原因の神経性頻尿や、意思とは無関係に膀胱が急に収縮する過活動膀胱がありますが、これらにあてはまらない頻尿で、しかも意外なことが原因になっているタイプがあります。
それは何かというと、水分のとりすぎ。水分を大量にとれば、尿もたくさん作られるので、それだけトイレの回数が増えます。そうした人たちのなかには、「自分はそんなに水分をとっていない」と思い込んでいる人もいます。そのため、頻尿の原因に気づかないことがあるのです。では1日にどのくらい水分をとったら、とりすぎないのでしょうか。
私たちが1日に必要とする水分の量は2500ml程度。その大半は食事に含まれる水分や食事と一緒にとる水分なので、お茶などで補給する量はそれほどはいりません。
多量の汗をかく夏場は例外ですが、それ以外の季節では、コップ1杯(180㎖)程度の水やお茶を1日2〜3回、とるだけでだいたい足りるものです。
2500㎖の水分摂取に対して、尿として出ていく量は1000〜1500㎖。1回に300㎖排尿して、それを1日3〜5回出すというのが、健康な状態です。
ところが、これ以上水分をとると、その分だけ尿にして出さなければならないので、排尿回数が増えてしまうのです。
こまめな水分摂取を心がけるのはよいことですが、夏でもないのに、1日に2ℓのペットボトルを1本空にするような飲み方は明らかにとりすぎです。これは「多飲による頻尿」といわれ、高齢者に多いといわれています。
高齢者に多飲による頻尿が多いのは、理由があります。若いときは水分が足りなくなると、脳から「水分をとりなさい」という命令が送られ、のどが渇くので、そのときに水分を補給するのが普通です。
しかし高齢になると、この働きが衰えるので、つい水分摂取を怠ってしまうのです。そこで夏場は熱中症を予防するため、のどが渇くか渇いていないかにかかわらず、こまめに水分摂取することをすすめられるのですが、それ以外の季節でも、同じような感覚で水分をとっていると、トイレの回数が増えてしまうのです。
このような人は、水分摂取量を減らしただけで、頻尿が改善することが珍しくありません。

「水分はそんなにとってない」と思い込んでいることも。

記録するだけで頻尿や尿もれが改善する「排尿日誌」

自分が水分をとりすぎているかどうかを、客観的にわかる方法があります。それは「排尿日誌」をつけることです。
やり方は簡単で、目盛りのついた検尿専用の容器をトイレに置いておき、排尿のたびに何㎖尿が出たかを記録するのです。
排尿日誌をつけると、水分のとりすぎがすぐわかります。適切な水分摂取をしている人の1日の尿量は1000〜1500㎖ですから、2000㎖以上も尿が出ている人は、明らかに水分のとりすぎです。
排尿日誌は、泌尿器科で行われている治療法のひとつで、多飲による頻尿はもちろんのこと、過活動膀胱による頻尿や尿漏れ(切迫性尿失禁)にも効果があると言われています。
なぜ日誌をつけるだけで、症状が改善するのでしょうか。
過活動膀胱の人は、膀胱に尿がそれほどたまっていなくても、尿意を感じてトイレに駆け込みます。こういう人が、排尿日誌をつけると、1回の尿量がわかります。すると例えば、たった100㎖しかたまっていなかったのに、トイレに行っていたことがわかります。また、何時おきに排尿しているかもわかります。
こうした記録をつけていると、「まだトイレに行くのは早い」とか「もう少し尿をためてられるはず」というのが無意識のうちにわかってくるのでしょう。その結果、トイレに行く回数が減っていくというのです。
水分のとりすぎかどうかを調べるには、排尿日誌を2〜3日つければ十分わかるといいます。記録するのは、朝起きてから翌朝目覚めるまでで、夜間にトイレに行った場合はその量も記録します。
少々めんどうなのは、トイレに置いておく目盛りの入った容器が必要なこと。朝起きたときなど、排尿量が多いときは400㎖くらい出ることもあるので、そのくらいの容量がないといけません。大きめの計量カップでよいのですが、調理用具を使うのは抵抗がある人もいるでしょう。
そんな人は、空のペットボトルの頭の部分を切り落として、油性のペンでおおまかな目盛りをつけ、排尿日誌専用の容器を自作する方法もあります。
排尿日誌をつけると、頻尿や尿もれの改善だけでなく、もうひとついいことがあります。それは自分の尿を観察できること。尿の色や沈殿物の有無などがよくわかるのです。そのため、尿路の異常の早期発見にもつながります。

※この記事は『尿もれ・頻尿は自分で治せる!』内田耀和著(主婦の友社刊)の内容をWEB掲載のため再編集しています。
※2023年3月5日に配信した記事を再編集しています。

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