なぜ九州のサバは生で食べてもアニサキスに当たらないのか?

関東ではサバを生で食べる機会が少ない。なぜならばアニサキスのリスクが非常に高く、生サバを楽しめるのは釣り人の特権だ。しかし、九州に目を向けるとサバを生で食べる習慣がある。そこでひとつの疑問が生じた、九州の生サバはなぜアニキサスに当たらないのか!?

●文:ルアマガプラス編集部

アニサキスの原因魚種ナンバー1は《サバ》

厚生労働省の発表している「食中毒発生事例(速報)」によると、アニサキスが原因物質となっている食中毒事例で、原因魚となっているのはサバ。それもほとんどのケースで生サバやシメサバが原因となっている(推定含む)。それだけアニサキスのリスクが高いサバだが、なぜ九州では生サバを食べる習慣があるのか。

そもそもアニサキスとは

アニサキスは寄生虫(線虫)の一種であり、その幼虫(アニサキス幼虫)は、白色の少し太い糸のように見える。アニサキス幼虫は、サバ、アジ、サンマ、カツオ、イワシ、サケ、イカなどの魚介類に寄生しする。寄生している魚介類が死亡し、時間が経過すると内臓から筋肉に移動することもある。

アニサキス幼虫は、長さ2~3cm、幅は0.5~1mm [写真タップで拡大]

アニサキスの種類の違い

実はアニサキスというのは総称で、ざっくり分けると「アニサキス・シンプレックス」と「アニサキス・ピグレフィー」がいます。もっと細かく選別されているので気になる方は調べてみると面白いです。

ここで注目したいのが「アニサキス・シンプレックス」は宿主が死ぬと内臓を離れ身まで移動することが多いのに対し、「アニサキス・ピグレフィー」は身へ移動せず寄生している内臓にとどまることが多い点だ。

ブラックライトで照らすとアニサキスがクッキリ。 [写真タップで拡大]

日本海側と太平洋側でアニサキスのリスクが大きく変わる!?

東京都健康安全研究センターが築地市場に集まる全国のサバを調査したところ、太平洋側に水揚げされたサバの8割以上が「アニサキス・シンプレックス」に寄生されており、日本海側の8割以上が「アニサキス・ピグレフィー」に寄生されていることが判明した。

アニサキス・シンプレックス」が内臓から身に潜る移行率が約11%に対して、「アニサキス・ピグレフィー」の移行率は約0.1%と100倍以上の違いがある。

そのため九州で水揚げされたサバに寄生している「アニサキス・ピグレフィー」は、宿主であるサバが死んでしまったあとも内臓にとどまる可能性が高いので九州で生サバを食べる習慣があるのだろう。

家庭での調理は注意

九州での生サバを食べる習慣について、アニサキスの種類が違うということがわかったが、家庭で生サバを扱うときは細心の注意が必要だ。比較的アニサキスリスクが低いとはいえ、冷凍や加熱調理したほうが安心だ。

家庭の常温で生サバを扱うと、アニサキスだけでなくヒスタミン中毒など気をつける点が多々ある。魚食文化を守るためリスク管理は怠らず美味しいサバを食べましょう。

※アニサキスは熱に弱く、熱処理を行えば死滅させられます。加熱時間・温度は【70℃以上での加熱、もしくは、60℃なら1分以上の加熱】。冷凍の場合、冷凍温度・時間は【-20℃で24時間以上、中心部まで冷凍すること】。家庭用冷凍庫は-18℃であることが多いので、48時間以上冷凍しましょう。 

引用:木下昌之 監修「死なないアニサキスは冷凍で死滅できる!【食中毒の適切な冷凍予防】」春夏秋凍

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